覚えているかい?
9月にダンスを踊ったことを
曇り空の日なんて無かったよね?
……冒頭からいきなり失礼しました。これはアース・ウィンド・アンド・ファイアーの代表曲『September』のサビの一節です。
12月に9月の思い出を歌ったこの曲、ある意味MLBの“セプテンバー”にも当てはまるのかも、と思ってしまう自分がいます。その理由を探るべく、先ずは8月末時点のチーム成績をおさらいしてみましょう。
アメリカン・リーグ東地区はレッドソックスがヤンキースを引き離しながらの2強状態が開幕から続いています。お互いにトレード・デッドラインで積極的に補強し、更にヤンキースは8月に入ってからも走塁のスペシャリストであるクインティン・ベリーを獲得。ワイルドカードでの一発勝負を睨んでの補強なのでしょう(理由は後述)。
レッドソックスは8月半ばに今季最高の貯金52を記録し、シーズン勝利記録の116勝(2001年のマリナーズ)を更新するのか!?という声も聞こえてきたのですが、下旬に入って今季初のスウィープをレイズに喫するなど勢いは沈静しつつあります。リーグ優勝候補の筆頭であることは間違いないでしょうね。
▼ ア・リーグ東地区
・Rソックス :勝率.687(92勝42敗) ―
・ヤンキース :勝率.632(84勝49敗) 7.5
・レイズ :勝率.534(71勝62敗)20.5
・ブルージェイズ:勝率.451(60勝73敗)31.5
・オリオールズ :勝率.299(40勝94敗)52.0
中地区はインディアンスが独走。開幕当初はもたついたものの夏に入りチームは上向き。リリーフのブラッド・ハンドを補強しつつ8月は大きく勝ち越しました。ただ2年前に大車輪の活躍を見せたリリーフのアンドリュー・ミラーは故障が続き(8/29から今季3度目のDL入り)、ポストシーズンに向けて不安なのは否めません。
▼ ア・リーグ中地区
・インディアンス:勝率.568(75勝57敗) ―
・ツインズ :勝率.470(62勝70敗)13.0
・Wソックス :勝率.398(53勝80敗)22.5
・タイガース :勝率.398(53勝80敗)22.5
・ロイヤルズ :勝率.299(40勝94敗)33.5
西地区は昨年の覇者アストロズにケガ人が続出。若干調子を落としていた間に、アスレチックスが一気に上位へと躍り出ました。それまで好調だったマリナーズを8月1日に捉えて一気に2位に浮上、8月18日にはアストロズに追いつき同率首位に立ち、その後もしっかり追走しています。
マリナーズは7月に入ってから貯金を作ることが出来ず、今年もポストシーズン進出は厳しいか……現地8月30日からの対アスレチックス三連戦をスウィープすれば一縷の望みが見えてくるかも……。
▼ ア・リーグ西地区
・アストロズ :勝率.617(82勝51敗) ―
・アスレチックス:勝率.597(80勝54敗) 2.5
・マリナーズ :勝率.556(74勝59敗) 8.0
・エンゼルス :勝率.481(16勝 9敗)18.0
・レンジャーズ :勝率.433( 9勝17敗)24.5
ナショナル・リーグはアメリカン・リーグよりも全体的に上位チームの勝ち星が少なく、勝ち越しているチーム同士の団子状態が続いています。
東地区は8月に入ってから2強の明暗が分かれ、ブレーブスがフィリーズを引き離し始めました。トレード期限で積極的に補強した上、新人王候補ロナルド・アクーニャがMLB史上最年少での5試合連続本塁打、うち3試合は先頭打者本塁打という大活躍。オジー・オルビーズ、ダンスビー・スワンソン、ヨハン・カマルゴ含めブレーブスは若手の成長がチームの推進力となっています。
フィリーズはワイルドカード争いでは現在6番手ということでポストシーズン進出には地区優勝が必至。ただブレーブス対フィリーズの直接対決がまだ7試合も残っているので、予断を許しません。
▼ ナ・リーグ東地区
・ブレーブス :勝率.561(74勝58敗) ―
・フィリーズ :勝率.534(71勝62敗) 3.5
・ナショナルズ:勝率.500(67勝67敗) 8.0
・メッツ :勝率.444(59勝74敗)15.5
・マーリンズ :勝率.396(53勝81敗)22.0
中地区はカブスがオールスター以降首位を守っています。それまで首位だったブリュワーズがもたつく間に、名門カージナルスが監督更迭というショック療法でチームを再生。8月は連勝街道を突き進み現在地区2位、ブリュワーズを捉えてワイルドカード争いのトップに躍り出ました。
▼ ナ・リーグ中地区
・カブス :勝率.591(82勝51敗) ―
・カージナルス:勝率.556(80勝54敗) 4.5
・ブリュワーズ:勝率.552(74勝59敗) 5.0
・パイレーツ :勝率.489(16勝 9敗)13.5
・レッズ :勝率.429( 9勝17敗)21.5
西地区は、大方の予想で優勝するとみられていたドジャースが予想外の苦戦。前半に一時独走し、平野佳寿がセットアッパーとして年間通じて活躍しているダイヤモンドバックス、後半に入って勝ち星を重ねたロッキーズと三つ巴の大混戦。まだまだ残っている直接対決次第で情勢は大きく変わりそう。
ドジャースの前田健太は全体的に低調なブルペンへ異動し、29日(現地時間)には今季初セーブを記録するなど役割をしっかり果たしています。
▼ ナ・リーグ西地区
・Dバックス :勝率.549(73勝60敗) ―
・ロッキーズ :勝率.545(72勝60敗) 0.5
・ドジャース :勝率.541(72勝61敗) 1.0
・ジャイアンツ:勝率.496(67勝68敗) 7.0
・パドレス :勝率.385(52勝83敗)22.5
さて、9月1日以降、MLBはベンチ入り出来る選手、通称“アクティブ・ロースター”に登録出来る選手が通常の25人から一気に40人へと拡大します。マイナーにいる若手有望株を昇格させ、MLBでプレーするチャンスを与えるというのが通例ですが、昨今は別の使い方をしているチームも出始めました。
例えば先ほど挙げたヤンキースが獲得したクインティン・ベリー。ポストシーズンに向けて勝敗の重みが増してくる9月はロースターの拡大によってベリーの様なスペシャリストをベンチに控えさせることが出来るのです。
ちなみにポストシーズンはシリーズ毎にロースターの変更が可能。つまりヤンキースはワイルドカード一発勝負を見据え、代走のスペシャリストとしてベリーを獲得した、とも見ることが出来ます。
他にもフィリーズはメッツからベテラン外野手のホセ・バティスタを獲得し、ポストシーズン進出へ向けて更なる打線強化に動きました。フィリーズのライバルであるブレーブスも、9月以降の戦いに向け、共にベテランの内野手ルーカス・デューダと捕手レネ・リベラを獲得。他にもカージナルスは内野手マット・アダムス、アスレチックスはリリーフのフェルナンド・ロドニーを獲得し、来たる9月、そしてポストシーズンへ向けた戦力拡大を図っています。
その中でも大きな話題をさらっているのが、カブスがナショナルズから獲得した内野手ダニエル・マーフィー。ウェーバー公示からのトレードの場合、同一リーグの勝率が低いチームに優先権があり、カブスは勝率が高いために順番が回ってこない場合が殆どだったのですが、マーフィーに関しては奇跡的に順番が回ってきて、様々な条件を乗り越えて獲得することが出来ました。
2015年にはメッツ時代にリーグ優勝決定戦でカブス相手に打ちまくり(ボクは生で彼のホームランを目の当たりにしました)、またカブスにまつわる有名な「山羊の呪い」の山羊の名前が何と“マーフィー”だったという因縁があったこと、さらには同年に同性愛者を蔑視する発言があり、カブスの本拠地リグレー・フィールドの近所には同性愛者が数多く集まる街もあることも踏まえ問題視されましたが、フロントはMLB機構とも話し合いその結果をオーナー側とも確認し、全てOKということでトレードが合意に至りました。
ショートのアディソン・ラッセルが怪我でDL入りしてしまったこと、またカブス打線が8月半ばから沈黙していたこともあり、ドンピシャのタイミングでマーフィーはカブスに入団。するとマーフィー入団以降は7勝1敗、自身も打ちまくり、それに影響されたのかチームの打線も盛り返し、2位以下とのゲーム差を引き離し始めました。
7月末のトレード期限で“2度目の開幕”をスタートさせたMLB。9月は拡大したロースターを有効に使い、ポストシーズン進出、またポストシーズンを勝ち抜くための大事な1カ月となります。
さあ、9月にダンスを踊り続け、素晴らしかった=ポストシーズンを勝ち抜いた日々を12月に振り返ることが出来るのはどのチームになるのでしょうか? いよいよ大事なセプテンバーがやって来ます!
文=オカモト“MOBY”タクヤ/SCOOBIE DO(おかもと・もびー・たくや/すくーびー・どぅ)
9月にダンスを踊ったことを
曇り空の日なんて無かったよね?
……冒頭からいきなり失礼しました。これはアース・ウィンド・アンド・ファイアーの代表曲『September』のサビの一節です。
12月に9月の思い出を歌ったこの曲、ある意味MLBの“セプテンバー”にも当てはまるのかも、と思ってしまう自分がいます。その理由を探るべく、先ずは8月末時点のチーム成績をおさらいしてみましょう。
アスレチックスの奮闘
アメリカン・リーグ東地区はレッドソックスがヤンキースを引き離しながらの2強状態が開幕から続いています。お互いにトレード・デッドラインで積極的に補強し、更にヤンキースは8月に入ってからも走塁のスペシャリストであるクインティン・ベリーを獲得。ワイルドカードでの一発勝負を睨んでの補強なのでしょう(理由は後述)。
レッドソックスは8月半ばに今季最高の貯金52を記録し、シーズン勝利記録の116勝(2001年のマリナーズ)を更新するのか!?という声も聞こえてきたのですが、下旬に入って今季初のスウィープをレイズに喫するなど勢いは沈静しつつあります。リーグ優勝候補の筆頭であることは間違いないでしょうね。
▼ ア・リーグ東地区
・Rソックス :勝率.687(92勝42敗) ―
・ヤンキース :勝率.632(84勝49敗) 7.5
・レイズ :勝率.534(71勝62敗)20.5
・ブルージェイズ:勝率.451(60勝73敗)31.5
・オリオールズ :勝率.299(40勝94敗)52.0
中地区はインディアンスが独走。開幕当初はもたついたものの夏に入りチームは上向き。リリーフのブラッド・ハンドを補強しつつ8月は大きく勝ち越しました。ただ2年前に大車輪の活躍を見せたリリーフのアンドリュー・ミラーは故障が続き(8/29から今季3度目のDL入り)、ポストシーズンに向けて不安なのは否めません。
▼ ア・リーグ中地区
・インディアンス:勝率.568(75勝57敗) ―
・ツインズ :勝率.470(62勝70敗)13.0
・Wソックス :勝率.398(53勝80敗)22.5
・タイガース :勝率.398(53勝80敗)22.5
・ロイヤルズ :勝率.299(40勝94敗)33.5
西地区は昨年の覇者アストロズにケガ人が続出。若干調子を落としていた間に、アスレチックスが一気に上位へと躍り出ました。それまで好調だったマリナーズを8月1日に捉えて一気に2位に浮上、8月18日にはアストロズに追いつき同率首位に立ち、その後もしっかり追走しています。
マリナーズは7月に入ってから貯金を作ることが出来ず、今年もポストシーズン進出は厳しいか……現地8月30日からの対アスレチックス三連戦をスウィープすれば一縷の望みが見えてくるかも……。
▼ ア・リーグ西地区
・アストロズ :勝率.617(82勝51敗) ―
・アスレチックス:勝率.597(80勝54敗) 2.5
・マリナーズ :勝率.556(74勝59敗) 8.0
・エンゼルス :勝率.481(16勝 9敗)18.0
・レンジャーズ :勝率.433( 9勝17敗)24.5
混迷のナ・リーグ
ナショナル・リーグはアメリカン・リーグよりも全体的に上位チームの勝ち星が少なく、勝ち越しているチーム同士の団子状態が続いています。
東地区は8月に入ってから2強の明暗が分かれ、ブレーブスがフィリーズを引き離し始めました。トレード期限で積極的に補強した上、新人王候補ロナルド・アクーニャがMLB史上最年少での5試合連続本塁打、うち3試合は先頭打者本塁打という大活躍。オジー・オルビーズ、ダンスビー・スワンソン、ヨハン・カマルゴ含めブレーブスは若手の成長がチームの推進力となっています。
フィリーズはワイルドカード争いでは現在6番手ということでポストシーズン進出には地区優勝が必至。ただブレーブス対フィリーズの直接対決がまだ7試合も残っているので、予断を許しません。
▼ ナ・リーグ東地区
・ブレーブス :勝率.561(74勝58敗) ―
・フィリーズ :勝率.534(71勝62敗) 3.5
・ナショナルズ:勝率.500(67勝67敗) 8.0
・メッツ :勝率.444(59勝74敗)15.5
・マーリンズ :勝率.396(53勝81敗)22.0
中地区はカブスがオールスター以降首位を守っています。それまで首位だったブリュワーズがもたつく間に、名門カージナルスが監督更迭というショック療法でチームを再生。8月は連勝街道を突き進み現在地区2位、ブリュワーズを捉えてワイルドカード争いのトップに躍り出ました。
▼ ナ・リーグ中地区
・カブス :勝率.591(82勝51敗) ―
・カージナルス:勝率.556(80勝54敗) 4.5
・ブリュワーズ:勝率.552(74勝59敗) 5.0
・パイレーツ :勝率.489(16勝 9敗)13.5
・レッズ :勝率.429( 9勝17敗)21.5
西地区は、大方の予想で優勝するとみられていたドジャースが予想外の苦戦。前半に一時独走し、平野佳寿がセットアッパーとして年間通じて活躍しているダイヤモンドバックス、後半に入って勝ち星を重ねたロッキーズと三つ巴の大混戦。まだまだ残っている直接対決次第で情勢は大きく変わりそう。
ドジャースの前田健太は全体的に低調なブルペンへ異動し、29日(現地時間)には今季初セーブを記録するなど役割をしっかり果たしています。
▼ ナ・リーグ西地区
・Dバックス :勝率.549(73勝60敗) ―
・ロッキーズ :勝率.545(72勝60敗) 0.5
・ドジャース :勝率.541(72勝61敗) 1.0
・ジャイアンツ:勝率.496(67勝68敗) 7.0
・パドレス :勝率.385(52勝83敗)22.5
アクティブ・ロースターの活用法
さて、9月1日以降、MLBはベンチ入り出来る選手、通称“アクティブ・ロースター”に登録出来る選手が通常の25人から一気に40人へと拡大します。マイナーにいる若手有望株を昇格させ、MLBでプレーするチャンスを与えるというのが通例ですが、昨今は別の使い方をしているチームも出始めました。
例えば先ほど挙げたヤンキースが獲得したクインティン・ベリー。ポストシーズンに向けて勝敗の重みが増してくる9月はロースターの拡大によってベリーの様なスペシャリストをベンチに控えさせることが出来るのです。
ちなみにポストシーズンはシリーズ毎にロースターの変更が可能。つまりヤンキースはワイルドカード一発勝負を見据え、代走のスペシャリストとしてベリーを獲得した、とも見ることが出来ます。
他にもフィリーズはメッツからベテラン外野手のホセ・バティスタを獲得し、ポストシーズン進出へ向けて更なる打線強化に動きました。フィリーズのライバルであるブレーブスも、9月以降の戦いに向け、共にベテランの内野手ルーカス・デューダと捕手レネ・リベラを獲得。他にもカージナルスは内野手マット・アダムス、アスレチックスはリリーフのフェルナンド・ロドニーを獲得し、来たる9月、そしてポストシーズンへ向けた戦力拡大を図っています。
勝負の9月
その中でも大きな話題をさらっているのが、カブスがナショナルズから獲得した内野手ダニエル・マーフィー。ウェーバー公示からのトレードの場合、同一リーグの勝率が低いチームに優先権があり、カブスは勝率が高いために順番が回ってこない場合が殆どだったのですが、マーフィーに関しては奇跡的に順番が回ってきて、様々な条件を乗り越えて獲得することが出来ました。
2015年にはメッツ時代にリーグ優勝決定戦でカブス相手に打ちまくり(ボクは生で彼のホームランを目の当たりにしました)、またカブスにまつわる有名な「山羊の呪い」の山羊の名前が何と“マーフィー”だったという因縁があったこと、さらには同年に同性愛者を蔑視する発言があり、カブスの本拠地リグレー・フィールドの近所には同性愛者が数多く集まる街もあることも踏まえ問題視されましたが、フロントはMLB機構とも話し合いその結果をオーナー側とも確認し、全てOKということでトレードが合意に至りました。
ショートのアディソン・ラッセルが怪我でDL入りしてしまったこと、またカブス打線が8月半ばから沈黙していたこともあり、ドンピシャのタイミングでマーフィーはカブスに入団。するとマーフィー入団以降は7勝1敗、自身も打ちまくり、それに影響されたのかチームの打線も盛り返し、2位以下とのゲーム差を引き離し始めました。
7月末のトレード期限で“2度目の開幕”をスタートさせたMLB。9月は拡大したロースターを有効に使い、ポストシーズン進出、またポストシーズンを勝ち抜くための大事な1カ月となります。
さあ、9月にダンスを踊り続け、素晴らしかった=ポストシーズンを勝ち抜いた日々を12月に振り返ることが出来るのはどのチームになるのでしょうか? いよいよ大事なセプテンバーがやって来ます!
文=オカモト“MOBY”タクヤ/SCOOBIE DO(おかもと・もびー・たくや/すくーびー・どぅ)