エースと主将が移籍
今季10年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた西武がピンチを迎えている。
このオフは打点王を獲得したキャプテンの浅村栄斗が楽天へ移籍したのを皮切りに、捕手の炭谷銀仁朗も巨人への移籍が決定。伝統的にFAでの流出が多いチームであるが、今年も主力がチームを離れた。
さらに、エースの菊池雄星はポスティングシステムを利用してのメジャー挑戦を表明しており、FA組の2人に加えて投手陣の柱までも流出。ファンにとっては本格的な冬の到来の前から寒く厳しいオフとなっている。
毎年のように選手が移籍することで知られる西武。過去10シーズン(2009年~2018年)で選手がFA権を行使しなかったのは2回しかなく、とくに直近3年は岸孝之、野上亮磨といった先発の柱だった投手がこぞって新天地へと旅立っている。
FA制度が導入された1993年から2017年にかけて、FAで流出した選手の数は16名を数える。これは日本ハムの14人を凌いで堂々のトップだ。通常、これだけ主力選手が抜けるとチームは弱体化するものだが、今季はリーグ優勝を成し遂げているように代わりの選手が活躍してFAで移籍した選手の穴を埋めてきた。
そこで、西武が主力選手をFAで失った翌年のチーム成績を調べてみたい。
主力の流出を感じさせない若手の充実ぶり
検証したのはFA制度が導入された1993年から2017年のうち、西武からFAで選手が移籍した12シーズン。まずは1993年から2007年までを見ていこう。(※カッコ内は選手のFA移籍先。球団名は当時の表記)
▼ 1994年オフ
工藤公康(ダイエー)
石毛宏典(ダイエー)
翌年チーム成績:67勝57敗6分 3位(前年1位)
▼ 1996年オフ
清原和博(巨人)
翌年チーム成績:76勝56敗3分 1位(前年3位)
▼ 2003年オフ
松井稼頭央(メジャー)
翌年チーム成績:74勝58敗1分 1位(前年2位)
▼ 2005年オフ
豊田 清(巨人)
翌年チーム成績:80勝54敗2分 2位(前年3位)
▼ 2007年オフ
和田一浩(中日)
翌年チーム成績:76勝64敗4分 1位(前年5位)
前年よりも順位が下がったのは工藤と石毛が抜けた1995年のみで、残りはすべて順位が上がっている。しかも、清原に松井、和田と主力打者が抜けた翌年にいずれもリーグ優勝を飾っているというのが興味深い。
ちなみに、松井が抜けた翌2004年には中島裕之がショートのレギュラーに定着し。和田が抜けた翌2008年には栗山巧が最多安打のタイトルを獲得するなど、しっかりと若手選手が台頭している。西武の育成力の高さが垣間見えるポイントだろう。
エースの退団は翌年苦戦の合図
続いて、2008年以降の成績を見ていく。
▼ 2010年オフ
土肥義弘(米独立リーグ)
細川 亨(ソフトバンク)
翌年チーム成績:68勝67敗9分 3位(前年2位)
▼ 2011年オフ
許 銘傑(オリックス)
帆足和幸(ソフトバンク)
翌年チーム成績:72勝63敗9分 2位(前年3位)
▼ 2012年オフ
中島裕之(メジャー)
翌年チーム成績:74勝66敗4分 2位(前年2位)
▼ 2013年オフ
片岡治大(巨人)
涌井秀章(ロッテ)
翌年チーム成績:63勝77敗4分 5位(前年2位)
▼ 2015年オフ
脇谷亮太(巨人)
翌年チーム成績:64勝76敗3分 4位(前年4位)
▼ 2016年オフ
岸 孝之(楽天)
翌年チーム成績:79勝61敗3分 2位(前年4位)
▼ 2017年オフ
野上亮磨(巨人)
翌年チーム成績:88勝53敗2分 1位(前年2位)
大幅に順位が下がったのは、エースの涌井と二塁のレギュラーだった片岡が抜けた2014年のみ。やはり、主力が抜けてもそれほどチーム成績に響いていないという印象だ。
ただし、エースクラスが抜けると話は変わる。工藤、涌井が退団した翌年は順位を下げているし、ポスティング移籍のため除外したが、松坂大輔がメジャーへ移籍した2007年は25年ぶりのBクラスとなる5位に低迷。当時の監督である伊東勤は成績不振の責任を取って辞任する事態にもなっている。
浅村、炭谷だけでなく、菊池まで流出することがほぼ確実な西武。これまでの傾向どおりであれば、2019年シーズンは苦しい戦いとなってしまうところであるが、果たしてどんな成績を残すだろうか。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)