まさに夢の対決
打撃ケージ裏では、フリオ・フランコとシェーン・マックがボビー・バレンタイン監督と談笑していた。
アメリカの球場ではない。日本の福岡ドーム(現ヤフオクドーム)での話だ。1995年(平成7年)7月24日(月)、オールスター第1戦の前日に日本人選手選抜の“ジャパン・ドリームズ”vs.助っ人選抜の“フォーリン・ドリームズ”が戦う「阪神大震災チャリティー・ドリームゲーム」が開催されたのである。
フランコは前年の94年、シカゴ・ホワイトソックスに所属し、8月にストライキでペナント中断するまで打率.319、20本、98打点と堂々たる成績。過去に首位打者経験もある現役バリバリのメジャーリーガーが、出口の見えないストの影響もありバレンタイン監督が就任したロッテへ入団する。
同じくミネソタ・ツインズで世界一経験もあるマックは右肩手術の影響で81試合の出場ながらも、94年は打率.333、15本、61打点の好成績を挙げ、2年総額8億円の大型契約で長嶋・巨人に加入した。
試合は4番に座ったフランコの2安打2打点の活躍もあり、“フォーリン・ドリームズ”が5対3で勝利。ジャパンのイチローも本塁打を含む3安打と存在感を見せ、珍しく一塁を守る松井秀喜の姿が話題となった。2005年3月にも東京ドームで同様のチャリティードリームゲームが開催されたが、近年のNPBでは、いわばなかなか実現しない幻の企画となっている。
超強力打線が完成
もし2019年7月11日にこの日本人選手選抜の“ジャパン・ドリームズ” vs. 助っ人選抜の“フォーリン・ドリームズ”が開催されるとしたら、いったいどんな選手が選ばれるのか? ジャパン・ドリームズは、あの頃はなかった侍ジャパンのメンバーがそのまま中心となるだろう。では、夢溢れる助っ人選抜は?
『朝まで生テレビ!』で激論を交わしたいテーマだが、今回のコラムでは独断と偏見で2019年版“令和元年のフォーリン・ドリームズ”を編成してみたいと思う。
まず激戦区の一塁はロペス(DeNA)、ビシエド(中日)、バティスタ(広島)らセ・リーグ勢が候補に。35歳のロペスは、本家オールスターの選手間投票で選ばれ、バティスタは現在二軍で調整中ということで、95年と同じくオールスター初戦の前日開催が前提の日程面を加味して、昨季、打率.348で首位打者に輝いた強竜打線の4番を張るビシエドを選出したい。
二塁はもちろん、セ本塁打トップタイの25発を放っているソト(DeNA)で決まり。三塁は、今季ここまで24本塁打で、球宴のファン投票でも選出された“スシボーイ”レアード(ロッテ)に頑張ってもらおう。
難しいのは遊撃だが、NPBに来る外国人選手はショートを守れる選手の絶対数が少ない。ここは数字こそ多少見劣りするが、軽快な三塁守備が話題のメジャー時代に遊撃経験があるビヤヌエバ(巨人)でどうだろうか。
外野は21本、69打点がともにリーグ3位でOPS.999のブラッシュ(楽天)、規定打席には足りないものの打率.329のハイアベレージを残すグラシアル(ソフトバンク)は、打撃はもちろん内外野をこなす守備面でも重宝されそうだ。
そして、NPB通算270発を放っている来日9年目の“キング・ココ”バレンティン(ヤクルト)には左翼とチームキャプテンも託したい。DHはデスパイネ(ソフトバンク)で「デスパイイネ」である。右打者ばかり並ぶのが少し気になるが、とんでもない重量打線の完成だ。
毎回選出に苦労するのがキャッチャー。95年もフォーリン・ドリームズでマスクを被ったのは、米マイナーリーグ留学経験のある“デーブ”こと大久保博元(巨人)と、自費で「JOE」のネームが入ったユニフォームを新調した定詰雅彦(ロッテ)だった。
2019年は思い切って、中日のキューバ出身育成選手、23歳のアリエル・マルティネスが昨季二軍で24試合に捕手として出場しているので大抜擢。もうひとりは、広島でジョンソンの女房役を務める、今年40歳のヨッシー石原(石原慶幸)でどうだろう。無意味にマッシー村上風に書いてみたが意外といける気がする。
投手はブルペン陣のリレーで
さて、投手陣だが、意外なことに今季は前半戦終了時でセ・パともに規定投球回に到達した外国人投手はひとりもいない。ジョンソン(広島)やメルセデス(巨人)が6勝、ロメロ(中日)が5勝、ニール(西武)が先発3連勝で終えたのが目立つ程度だ。
特にセ・リーグはリリーフで活躍する優良助っ人が多い。セーブ数トップはドリス(阪神)。リーグ最多登板は43試合のハフとマクガフのヤクルトコンビ。ホールド数は上位からジョエリー・ロドリゲス(中日)、ピアース・ジョンソン(阪神)、エスコバー(DeNA)、パットン(DeNA)、フランスア(広島)といった豪華メンツがズラリ(ロドリゲスは右臀部筋損傷で調整中)。
パ・リーグでは同郷捕手マルティネスとのバッテリーも楽しみなモイネロ(ソフトバンク)がアタマひとつ抜けた存在だ。マーティン(西武)やブセニッツ(楽天)といったリリーバーとも併せ、ひとり1イニングずつ投げるブルペン・デーのような起用法が濃厚である。
そして、24年前はバレンタインが務めたフォーリン・ドリームズの監督だが、ここは同じく現ロッテ監督の井口資仁が適任ではないだろうか。思えば、あの95年夏、ニッポン列島は野茂英雄のMLBオールスター初出場で盛り上がっていた。時が経ち、いまや野茂のあとに続いた日本人メジャーリーガーたちがNPBで指導者になっている。
ホワイトソックスでワールドシリーズ優勝経験のある井口が監督を務め、同じくカージナルスで世界一の田口壮(オリックス野手総合兼打撃コーチ)やメジャー3球団を渡り歩いた吉井理人(ロッテ投手コーチ)がベンチに入れば、個性派揃いの助っ人軍団もまとまるはずだ。
セ・パ交流戦や侍ジャパンもすっかり定着し、ここでしか見れない緊張感とレア感が低下したと言われる昨今のオールスター戦。今こそ、真夏の一夜限りの夢舞台、“ジャパン・ドリームズ” vs. “フォーリン・ドリームズ”の一戦を、復活させてみてはどうだろうか?
▼ 19年版フォーリン・ドリームズのスタメン
1(右)グラシアル<率.329 19本 47点 OPS 1.005>
2(二)ソト <率.240 25本 54点 OPS.825>
3(中)ブラッシュ<率.279 21本 62点 OPS.999>
4(指)デスパイネ<率.262 20本 50点 OPS.866>
5(左)バレンティン<率.279 15本 44点 OPS.861>
6(一)ビシエド <率.298 10本 50点 OPS.833>
7(三)レアード <率.271 24本 59点 OPS.919>
8(遊)ビヤヌエバ<率.226 8本 23点 OPS.726>
9(捕)マルティネス<率.233 1本 6点 OPS.745>
P.メルセデス<6勝4敗 防御率.3.39>
※成績は前半戦終了時。マルティネスは二軍成績。ジョンソンは7月10日の中日戦、ロメロは同日の広島戦、ニールは同日のソフトバンク戦で先発したため翌11日の試合は登板回避とした。
文=中溝康隆(なかみぞ・やすたか)