7月以降は打率4割の「代打・鳥谷」
阪神の鳥谷敬選手が8月31日、球団から引退勧告を受けたことを明かした。生え抜きのスター選手に対し、CS出場の可能性がまだ残されているこの時期に戦力外を通達するという異例の対応に、批判の声もあがっている。
その鳥谷の今季成績は、56試合に出場して打率.208。得点圏打率に至っては「.030」しかない。ただし、現在の主な起用となっている代打に限れば、打率.268と通常時よりも高く、イメージよりも打っている印象さえある。特に7月以降は、15打数6安打で代打率.400と好成績を残している。
限られた打席数の中でチャンスをモノにしなければならない代打稼業。チームの勝敗にも大きくかかわるだけに重要な存在だが、そんな代打起用にもっとも応えている選手は誰なのだろうか。
ユーティリティープレーヤーたちが意外な活躍
検証したのは両リーグの代打起用10打数以上の選手たち(※数字は9月2日終了時点)。そのなかから打率の高かった上位5人を挙げた。まずはパ・リーグの選手から。
▼ パ代打率上位5人(10打数以上)
1.川島慶三(ソフトバンク)
代打打率.455(11打数5安打)
1.福田秀平(ソフトバンク)
代打打率.455(11打数5安打)
3.杉谷拳士(日本ハム)
代打打率.391(23打数9安打)
4.小島脩平(オリックス)
代打打率.364(22打数8安打)
5.下水流昂(楽天)
代打打率.357(14打数5安打)
上位5人は、すべて打率.350以上とハイレベル。なかでも群を抜いていたのが、ソフトバンクの2選手。左キラーの川島慶三に加え、福田秀平は長打力がアップし、自己最多の8本塁打を放つなど、長打を連発。6月21日の対巨人戦では6回に代打で出場し、元同僚の森福允彦から逆転満塁本塁打を放ったのは今季の福田の象徴する一打と言えるのではないだろうか。
その他の選手では、杉谷拳士にも注目したい。こちらもまた福田や川島のようなユーティリティープレーヤーだが、代打に限れば.391とハイアベレージを記録。ただし8月に入ってからは5打数無安打と成績が下降しただけに、9月に入ってからの成績は要注目だ。
セの代打打率1位は阪神の中谷将大
続いては、セ・リーグの上位を見てみたい。
▼ セ代打率上位5人(10打数以上)
1.中谷将大(阪神)
代打打率.417(12-5)
2.陽岱鋼(巨人)
代打打率.391(23-9)
3.雄平(ヤクルト)
代打打率.353(17-6)
4.佐野恵太(DeNA)
代打打率.333(27-9)
5.磯村嘉孝(広島)
代打打率.318(22-7)
パ・リーグよりも代打を送る機会が多いためか、ここに名前のない選手たちの数を見ても代打起用される打者が分散した感がある。代打打率のトップは鳥谷の同僚である中谷将大。2年前の2017年にシーズン20本塁打を放ってレギュラー定着を予感させたが、その後は不振で今季もシーズン打率は.194と低調。その一方で代打ではまさかの4割超えだった。
先述した鳥谷の引退勧告報道が出た8月31日には、鳥谷の代わりに代打で出場し、決勝本塁打を放ったのは記憶に新しい。
レギュラー定着にあと一歩のところまで迫った期待の若手や、百戦錬磨のベテランが活躍するなど、それぞれの立ち位置も興味深い代打稼業。ランキングに入った選手たちが、シーズン終盤のキーマンとなるのか、注目したい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)