実績抜群だけど…
メジャーリーグのポストシーズンは地区シリーズの真っただ中。まだ8チームに“世界一”の可能性が残っている。
ア・リーグ地区シリーズでは、アストロズとヤンキースの“2強”が順当に2連勝でリーグ優勝決定シリーズ進出に王手。ナ・リーグはドジャースとブレーブスが2勝1敗でそれぞれ王手をかけた。
今回注目したいのは、長く現役を続けながら、一度もワールドシリーズに出場したことがない2人の野手だ。1人目がブレーブスのニック・マーケーキス。2人目がヤンキースのエドウィン・エンカーナシオン。いずれもメジャーファンにはお馴染みの選手である。
衰え知らずの名外野手
マーケーキスは、2006年のメジャーデビューからレギュラーシーズン2117試合に出場し、通算2355安打を放っている左打ちの好打者。エンカーナシオンは、マーケーキスより1年早い05年にメジャーでデビュー。これまでレギュラーシーズン1916試合に出場し、通算414本塁打を誇る長距離砲だ。
タイプは異なるが、長きにわたり中心選手としてチームの顔となってきた。注目は2人の試合数。マーケーキスの2117試合出場というのは、ワールドシリーズ未経験の現役野手の中では最も多い数字である。
マーケーキスは、デビューから2014年までの9シーズンをオリオールズで過ごしたが、最初の6シーズンはチームがいずれも大きく負け越すなど低迷。12年と14年にポストシーズンに進出したが、12年はケガのためポストシーズンでの出場機会はなかった(チームは地区シリーズ敗退)。
14年は初めてポストシーズンに出場し、チームはリーグ優勝決定シリーズまで進んだが、ロイヤルズに4連敗を喫した。その後、2015年にブレーブスに移籍し、昨季地区優勝を果たしたが、地区シリーズで敗退。今季は自身2度目のリーグ優勝決定シリーズまであと1勝に迫っている。
開幕シリーズで来日した大砲
そのマーケーキスに次ぐのがエンカーナシオン(現役野手で2位の1916試合に出場)。レッズでデビューして以降、ブルージェイズ、インディアンス、マリナーズ、そして今季途中からヤンキースと、5チームを渡り歩いてきた。
2014年まではポストシーズンにすら出場がなかったが、15年からは一転、今季まで5年連続でポストシーズンに出場している。そんなエンカーナシオンが最もワールドシリーズに近づいたのはブルージェイズ時代の15年と16年。いずれもリーグ優勝決定シリーズまで進んだが、15年はロイヤルズに2勝4敗、16年はインディアンスに1勝4敗で敗れ、ワールドシリーズ出場は夢に終わった。
現在、『ワールドシリーズに最も縁がない男』という称号は、マーケーキスのものだが、今季開幕時点では、イチローがその称号を保持していた。イチローは2001年から今年3月に引退するまで、マーケーキスより500試合以上も多い2653試合に出場。結局、一度もワールドシリーズで活躍する姿を見せることなく引退した。
ちなみにイチロー以上にワールドシリーズに縁がなかった男は2人いる。2831試合に出場するも、一度もワールドシリーズを味わえなかったラファエル・パルメイロ。そして2671試合出場のケン・グリフィーJrである。
偉大な先輩たちがたどり着けなかったワールドシリーズという大舞台。マーケーキスとエンカーナシオンは、その大舞台までもう少しのところまで来ている。
文=八木遊(やぎ・ゆう)