レッドソックスのスターに放出の噂
2018年のア・リーグMVP男にトレード話が浮上…?
現地メディアの報道によると、レッドソックスが今季で契約最終年を迎えるムーキー・ベッツの放出を真剣に模索しているとのこと。昨季もオールスターに選ばれるなど、成績を大きく落としているわけではない。年齢的にもまだ27歳と中堅に差し掛かったこれからの選手であるが、すでに移籍先の候補としてパドレスやドジャースといった具体的な名前も挙がっている。
トレードがあまり活発ではない日本球界において、数年前のMVPクラスが放出されるというのは大きな衝撃を持って伝えられる出来事だが、メジャーではそう珍しいことではない。今回のベッツの場合はMVP受賞から1年後のオフに持ち上がったトレード話になるが、過去にはMVPを受賞したその年のオフにトレードで放出されたという例もある。
門田や落合の例も…?
まず思い出されるのが、通算696本塁打という実績を誇るアレックス・ロドリゲス。レンジャーズ時代の2003年にリーグMVPに輝いたものの、その年のオフにヤンキースへ移籍。当時まだ28歳、まさに全盛期でのトレード劇だった。
続いて、記憶に新しいのが現ヤンキースのジャンカルロ・スタントン。マーリンズ時代の2017年にはシーズン59本塁打を放つなどの活躍でナ・リーグMVPを受賞。こちらもロドリゲスと同じく28歳の時にヤンキースへと移籍している。
ほかにも、MVP受賞から1~2年後のトレードということであれば枚挙に暇がない。契約に関して非常にドライなメジャーにおいては決して珍しいことではなく、今回のベッツの一件も契約最終年ということを考えれば、自然な流れとも言える。
一方、日本では事情が大きく異なる。上でも少し触れているが、そもそもトレード自体が少なく、ましてやMVPを受賞するような選手がすぐにトレードで放出されるというのはほとんどない。最近で言えば2012年にパ・リーグMVPに輝いた吉川光夫がトレードで巨人に移籍した際に大きな話題となったが、それも受賞から4年が経ってからのもの。成績も下降気味だったため、理解できる部分もあった。
ただし、日本でもFA制度がはじまる以前は今以上にトレードが活発に行われていた。例えば、1988年にパ・リーグMVPに輝いた南海の門田博光は、チームが福岡に移転してしまうという理由こそあったものの、MVPを獲得したその年のオフにオリックスへとトレード移籍。それでも、もしチームが大阪に残っていれば、このトレードは考えられなかったかもしれない。
また、稀代の大打者・落合博満はMVPを受賞した1年後にロッテから中日へとトレードされている。ロッテ時代は1982年と1985年にMVPを受賞。まさにリーグを代表するスラッガーとして名を馳せていたが、1986年のオフは高騰し続ける年俸の問題や、慕っていた稲尾和久監督の解任問題といった複数の要素が絡み合い、世紀のトレード劇へと発展した。
こうした大物選手のトレードも、FA制度が導入された1990年代から激減。代わりにMVPを受賞するようなスター選手は、FAやポスティングシステムを利用した海外移籍が主流になりつつある。
しかし、今オフはロッテと楽天の間での活発な選手の異動が大きな話題を集めたように、特に石井一久GMの下で生まれ変わった楽天は、近年のNPB球団になかったようなあっと驚くような動きを度々見せている。日本でも世間を震撼させるような“大型トレード”が見られるようになるのか、今後の動向からも目が離せない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)