2年の春から早くも甲子園で“躍動”
新型コロナウィルスの影響で中止となった選抜高校野球。まさに“幻の大会”となってしまったが、チーム、選手にとってはこれからもシーズンは続いていく。ここでは、そんな幻の大会で見たかったドラフト有力選手を紹介していきたい。今回は、昨年の甲子園でも好投を見せた将来性豊かな本格派右腕だ。
▼ 小林樹斗(智弁和歌山)
【投 打】右投げ右打ち
<2019年秋季大会成績>
7試合(22回1/3)被安打20 奪三振27 四死球4 自責点7
防御率2.82 / 奪三振率10.88 / 与四死球率1.61
甲子園での実績という意味では、先日取り上げた中森俊介(明石商)に次ぐ存在と言えるのがこの小林だ。2年春に背番号18で出場した甲子園では、リリーフとして2試合に登板。準々決勝の明石商戦では負け投手となったが、3回からロングリリーフし、6回を投げて1失点という見事なピッチングを見せている。ちなみに、この試合での最速は中森の146キロを上回る147キロだった。
その後も成長を続けた小林は、昨年夏の和歌山大会で背番号1を獲得。甲子園では二桁の11番だったものの、初戦の米子東戦で選抜を上回る148キロをマーク。死闘となった3回戦の星稜戦では先発も任され、4回途中まで投げて1失点と試合を作って見せた。
ここまでは順調だった小林の高校生活だが、昨年秋は大きな壁にぶつかった。
県大会から調子が上がらず、近畿大会初戦、初芝立命館戦では先発マウンドに上がったが、3回を投げて3失点で降板。続く準々決勝の智弁学園戦では3点をリードされた8回途中、ピンチの場面から登板したものの、ワイルドピッチなどもあって相手の勢いを止めることはできなかった。
秋季大会の防御率2.82という数字は、プロ注目のエースとしてはかなり物足りないものである。
長所は“右打者アウトロー”への制球力
そんな中でも、奪三振率、与四死球率が、中森、高橋宏斗(中京大中京)を上回っているあたり、やはり非凡なものがある。
小林の最大の特長は、体の近くで高い位置から縦に腕を振り下ろすことができるところ。昨年エースを務めた池田陽佑(立教大進学予定)も最速150キロを誇る好投手だったが、ボールの角度は明らかに小林の方が上だ。
そして、ただ高い位置から振り下ろすだけでなく、『体の近くで』というところがポイント。それだけ左右のぶれが少なく、コントロールの安定にも繋がっている。特に右打者のアウトローにしっかり投げ切れるのは大きな長所と言えるだろう。
一方で、課題となるのは変化球の質と精度だ。昨年夏の甲子園でも好投は見せていたが、カウントをとる変化球の時は明らかに腕の振りが緩くなっていた。
また秋の近畿大会では、決め球の時には腕をしっかりと振っていたにもかかわらず、ワンバウンドになるボールも目立っていた。このあたりが、ストレートの勢いと制球力がありながらも、近畿大会で抑えきれなかった要因と言えるだろう。
とはいえ、投手としてのスケールは中森、高橋と比べても遜色なく、体の使い方やボールの角度については小林が上回っているようにも見える。フォームに目立った欠点もないだけに、変化球のレベルが上がってくれば、一気に世代を代表する投手に浮上するかもしれない。
夏には昨年の甲子園、そして秋に味わった悔しさを晴らすようなピッチングを見せてくれることに期待したい。
記事提供:プロアマ野球研究所