コラム 2020.07.13. 18:00

首位に立った高津ヤクルト 指揮官が投手陣に向けた思い【夢追うツバメたち】

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ヤクルト・清水昇

第1回:「投手陣再建」の現在地


 高津ヤクルトがセ・リーグの単独首位に立った。昨季リーグ最下位に沈んだチームの再建を託された高津臣吾監督は、今季を戦う上で「ピッチャーを建て直すことが勝つことの第一条件だと思っているので、シーズンを通して修正していく必要はある」と話していた。

 指揮官が掲げた「投手陣再建」の現在地はどうか。5年ぶりのリーグ優勝を目指すヤクルトに迫る『夢追うツバメたち』の第1回目は、高津監督が投手陣に向けた思いを中心にお届けする。野村克也氏の薫陶を受けた指揮官が、再びヤクルトの黄金期を築き上げていけるか注目だ。

 ヤクルトは開幕から本拠地・神宮球場で連続14試合を戦い抜き、7勝7敗の5割で終えた。そんな中、6月28日の巨人戦(神宮)では0-12と大敗し「勝負ができていないような感じがした。グラウンド上でしっかりとした勝負というのをやってほしかった」と苦言を呈したこともある。

 7月7日からはビジター15連戦に突入。ここまで19試合を消化して、チーム防御率は4.24とリーグ4位。先発陣を見ると、小川泰弘が3勝、スアレスが2勝、高梨裕稔が1勝をマーク。開幕投手の石川雅規は粘りの投球を見せているものの、ここまで3試合に登板して未勝利。新外国人のイノーアは開幕ローテに入ったものの、2試合連続3回でマウンドを降りるなど、0勝1敗。思い通りの投球ができていない。

 また、勝ち星を挙げている3人については、すべて6回以内でマウンドを降りているのが現状だ。現在リーグトップの勝利数を誇る小川が「野手の人に助けられて勝ちがついていることも大きい。1イニングでも多く投げられるように」と話していたように、打線の援護に加え、リリーフ陣の奮闘にも助けられている部分が大きい。

 昨季、自己最少の5勝に終わった小川に対して高津監督は「去年苦しんで、彼はいま再生中だと僕は思っている。今年はいい年になると暗示をかけたりもしました」と、エースの復活へ切実な思いを口にし、40歳のベテラン・石川と共に、先発投手陣の柱として期待を寄せている。


指揮官の言葉


 高津監督は、ヤクルトでは関根潤三氏以来31シーズンぶりとなる投手出身監督。現役時代はクローザーとして90年代のスワローズ黄金期を支えた。

 日本球界歴代2位となる通算286セーブ、日米通算では313セーブを誇る伝説の守護神。「今日やられても明日マウンドに立たなければいけないのが、リリーフの仕事」と話すように、リリーフ投手陣に向けられた言葉には重みを感じる。

 今季ソフトバンクから加入した4年目21歳の長谷川宙輝に対しては「あと先考えず、しっかり腕を振って自慢の強い球を投げてくれればそれでいい。ただ、チームの勝敗を握る重要なポジションを任せるので、いろんな意味で成長していってほしい」と、最速153キロ左腕の特長を理解し、今後の成長を見守っている。

 育成選手としてプロ入りした長谷川は、6月25日の阪神戦(神宮)で9回からリリーフ登板してプロ初勝利を挙げた。高津監督は長谷川について「すごく大事な選手のひとり」と位置づけている。今後は「勝利の方程式」の一角として、期待はますます高まるはずだ。


ドラフト1位入団ふたりの頼もしい姿


 長谷川だけではない。高津監督はドラフト1位で入団したふたりの投手をリリーフとして、大事な場面で起用している。

 18年ドラフト1位、プロ2年目23歳の清水昇がそのひとりだ。ルーキーイヤーの昨季は11試合に登板して0勝3敗に終わった右腕。今季は、ここまでリリーフで6ホールド、防御率0.00と活躍。開幕戦から10試合連続で無失点を継続している。

 さらに高卒4年目21歳の寺島成輝も、貴重な左のリリーフとして躍動。清水と同様、昨年よりも力のあるストレートで相手打者を抑え込む姿は見ていて頼もしい。

 寺島は履正社高から16年ドラフト1位で入団。最速150キロ左腕として期待されながらも勝ち星を挙げられずに苦しんだが、7月7日の中日戦(ナゴヤドーム)の9回同点の場面で登板し、プロ初勝利を手にする。

 寺島は「(4年)かかってしまったけど、勝てたことは嬉しい」と素直に喜びを表現し、「チームが勝つことが最優先。必死に頑張ります」と、今後もチームのために腕を振ることを決意した。

 「チームをフレッシュにしたい。昨年までのスワローズを変えたい」と高津監督。強い信念のもと、若手投手には試合で経験を積ませ、成長を促している。監督になっても“度胸”の良さは現役時代そのものだが、そこには選手を“信頼”する気持ちがある。


3人のリリーバーへの信頼と期待


 実績のある3人のリリーバーにも、高津監督は変わらぬ信頼と期待を寄せる。寺島と同期の梅野雄吾、開幕前に抑え候補として挙げられたマクガフと石山泰稚の3人だ。

 昨季68試合に登板してチームトップの28ホールドを挙げた梅野は、ここまで11試合5ホールドを挙げ、防御率3.38をマーク。開幕戦で打ち込まれ心配されたが、高津監督はその後の試合も変わらずマウンドに送り続け、梅野は徐々に本来の投球を取り戻しつつある。

 マクガフについては現在、9試合で防御率7.88と安定感に欠けた投球が続いている。それでも昨季65試合に登板して抑えも務めた右腕は、チームにとって欠かせない存在であることに間違いない。

 石山もここまで10試合に登板し、防御率4.66と本来の投球としては物足りない。開幕前日、高津監督は「(クローザーとして)彼がおさまってくれるのがチームとしては一番いい状況と判断して、彼に9回を任せることにした」と、昨季はコンディション不良などで34試合の登板に終わった右腕の復活に期待している。

 クローザーとして「ピッチング自体はすごく丁寧。冷静さを失うこともないですし、9回に投げるピッチャーとしてはすごく大事なものを持っている」と、石山への信頼を口にした。

 首位浮上を果たした7月12日も、マウンドには守護神の石山がいた。1点のリードを保って迎えた9回、二死二塁のしびれる場面だったが、最後は巨人・石川を145キロのストレートで空振り三振に切って取り、ゲームセット。

 高津監督は勝利後のインタビューで「一つでも前へ、一つでも上へという気持ちは常に持って戦っています。一番上ということで、気分は悪くないですね」と語った。

 順位を語るにはまだ早い。それでも、開幕前に「最下位」予想が多かった下馬評を覆す戦い方ができているのは、事実だ。「まだまだ成長していかなければいけない」。高津監督がよく口にするこの言葉は、確実に選手たちに届いている。


文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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