セ6球団のうち5球団の4番が25歳以下
セ・リーグの「若き4番」たちが元気だ。
7月26日のヤクルト対巨人の初回、無死二三塁のチャンスで早速適時打を放った岡本和真(巨人)は、3回にはバックスクリーンへ11号ソロをたたき込んだ。一方の村上宗隆(ヤクルト)も初回の無死一二塁の場面でチャンスを拡大する四球を選んで2点目を呼び込むと、6点のリードを許して迎えた8回の第4打席では右中間へ意地の適時二塁打を放った。
DeN対広島では、9回無死一二塁の場面で鈴木誠也(広島)が相手クローザー・山﨑康晃の直球をとらえて土壇場で試合をふりだしに戻す同点適時打をマーク。一時は6点のリードを許していた試合をひっくり返す大逆転勝利を呼び込んだ。また、中日対阪神では、大山悠輔(阪神)が滞空時間の長い“らしい”あたりの8号2ランをマークしている。
岡本、村上、鈴木、大山、さらにDeNAの佐野恵太と、セ・リーグ6球団のうち、ビシエドを4番に起用している中日を除く5球団の4番はいずれも25歳以下と若い。しかも、全員がそろって打率3割を超えるなど好調である。下記は、彼ら5人のここまでの今季成績だ。
【セの「若き4番」2020シーズン個人成績】
▼ 鈴木誠也(広島/25歳 1994年8月18日生まれ)
30試合 打率.354(113-40)8本25打点2盗塁
▼ 佐野恵太(DeNA/25歳 1994年11月28日生まれ)
32試合 打率.355(121-43)3本18打点0盗塁
▼ 大山悠輔(阪神/25歳 1994年12月19日生まれ)
26試合 打率.321(81-26)8本18打点0盗塁
▼ 岡本和真(巨人/24歳 1996年6月30日生まれ)
30試合 打率.319(116-37)11本31打点0盗塁
▼ 村上宗隆(ヤクルト/20歳 2000年2月2日生まれ)
31試合 打率.351(114-40)4本33打点3盗塁
4番デビュー戦初打席でいきなり本塁打を放った岡本
パ・リーグでは村上と同じく2017年ドラフト1位の安田尚憲(ロッテ)が7月21日の西武戦からプロ初の4番に抜擢されて話題となっているが、もちろんセの「若き4番」たちにもはじめて4番でスタメン起用された試合がある。ここで、それぞれのプロ初4番スタメン試合の成績を振り返ってみたい。
【セの「若き4番」プロ初4番スタメン試合成績】
▼ 鈴木誠也(広島)
・2017年4月11日 巨人戦/当時22歳
・5打数3安打(1二塁打)2打点1三振1盗塁
▼ 佐野恵太(DeNA)
・2019年8月18日 広島戦/当時24歳
・3打数0安打1三振
▼ 大山悠輔(阪神)
・2017年9月1日 中日戦/当時22歳
・3打数1安打(1二塁打)1打点1四球
▼ 岡本和真(巨人)
・2018年6月2日 オリックス戦/当時21歳
・6打数2安打(1本塁打)2打点
▼ 村上宗隆(ヤクルト)
・2019年5月12日 巨人戦/当時19歳
・3打数0安打3三振1四球
5人のうち、ただひとり「4番デビュー戦」で本塁打を放ったのが岡本。相手先発・山岡泰輔(オリックス)の直球を完璧にとらえ、京セラドームの左翼3階席に放り込む特大本塁打だった。しかも、本塁打をマークしたのは第1打席。4番という重責を担いながら打席では24歳とは思えない落ち着きを感じさせる岡本だが、その泰然自若ぶりは4番としての初打席から発揮されていた。
また、いきなり3安打の猛打賞としたのが鈴木。この試合では盗塁も決めており、走攻守すべてにおいてハイレベルな鈴木のプレースタイルを感じさせる結果となっている。
一方、無安打に終わったのは佐野と村上。とくに村上は3つの空振り三振といいところなく終わっている。ただ、当時の村上はまだ10代であり、荒削りで当然。それがほんの1年後には、打率、出塁率、得点圏打率のいずれもリーグトップクラスの勝負強い4番に大変身。その成長スピードからすれば、今後どんな大打者になるのか、ヤクルトファンならずとも楽しみだ。
また、現在はビシエドが4番を務める中日も、そう遠くない将来、石川昂弥がその座に就くことが予想される。たまたま各球団の世代交代のタイミングが合っただけなのかもしれないが、成長を続ける若き強打者たちがそれぞれのチームの顔として活躍する状況を見られる機会がこれだけそろうことも珍しい。
今後しばらくは、セ・リーグの「若き4番」たちがファンを楽しませてくれることだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)