コラム

10月の足踏みと4番の正念場【原巨人は黄金期を迎えたのか?】

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巨人・岡本和真
2020.10.22 18:00
東京ヤクルトスワローズ 0 終了 6 読売ジャイアンツ
神宮

第4回:黄金期を迎えるために


 胴上げ目前の原辰徳監督に、ちょっぴり憂鬱な日々が続いている。

 42.195キロのマラソンレースに例えるなら、トップを独走してまもなくゴールの待つ競技場へ足を踏み入れようかというところ。2位の姿は見えず何の不安もないが、自身のスピードがガクッと落ちてしまった格好だ。

 21日終了時点(以下同じ)における10月のチーム成績は7勝9敗2分け。ペナントレースの行方にさしたる影響はないが、「日本一奪取」という黄金期を迎えるためには気になる足踏みと言えよう。

 ペースダウンの主たる原因はスペシャリストたちの離脱と4番・岡本和真選手のタイトル争いにある。


スペシャリストたちの離脱


 10月16日と18日のDeNA戦に象徴的な場面があった。前者では8回に登板した中継ぎ左腕の大江竜聖投手が佐野恵太選手に一発を浴びて、その後の逆転負けにつながる。後者では同じく中継ぎエースの高梨雄平投手が梶谷隆幸選手に満塁本塁打を喫して5点リードのゲームを失った。

 大江、高梨共に今季は素晴らしい働きで原巨人の快進撃を支えてきたのだから非難するにはあたらない。だが、強いて痛打された要因を探すなら、夏場の疲れの蓄積と「抑えの方程式」の崩壊が挙げられる。

 何よりも痛いのは、ストッパーも務めた中川皓太投手の離脱だ。9日、左脇腹痛で出場選手登録を抹消された。この時点で2勝1敗6セーブ15ホールドの記録を残していた中川は、鉄壁の投手陣を支えて来た。

 開幕から13連勝をマークした菅野智之投手がMVPなら、影のMVPとも言うべき存在。相前後して貴重な中継ぎ役である大竹寛投手もコンディション不良で一軍から姿を消した。彼らスペシャリストの離脱が高梨や大江の負担増につながった面は否めない。

 もうひとり、「足のスペシャリスト」として他球団を震え上がらせた増田大輝選手も目下はファームで調整中。原マジックの貴重なピースが欠けたのも痛い。


4番の重圧とタイトル争い


 加えて、打撃面で気になっていたのが岡本のバットだった。打線の核となる4番を任されているが、今月だけの成績(※21日終了時点)を見ると、打率こそ「.275」とそこそこの数字を残しているが、1本塁打に打点も「6」だけ。本来の豪快なバッティングが影を潜めていた。

 この間に本塁打部門では阪神の大山悠輔選手に「26本」と先を越され、打点でも中日のD.ビシエド選手が21日のDeNA戦で3打点を稼ぎトップの座を明け渡していた。しかし、22日の試合で2安打(1本塁打)3打点を記録して再びトップに。とはいえ、両部門ともヤクルトの村上宗隆選手らが急追しており、ペナントレース以上に目の離せない展開が続いていくことになりそうだ。

 「ベイビー」の名付け親・原監督がその成長を認めて今季から「二代目若大将」と命名。岡本は期待通りの信頼される4番に成長を遂げた。坂本勇人、丸佳浩の両主砲が不振に喘いだ夏場にもホームランを量産し、首位独走の立役者としてチームを引っ張っている。

 一昨年には24歳の若さで史上初の3割30本塁打100打点を記録。今年はここへ来てバットは湿りがちでも、まだまだ初タイトルを射程圏に捕えている。それだけに一刻も早い復調が待たれるところ。今月初旬の阪神戦で左手に受けた死球の影響もあったのだろう。22日の一発は、実に今月8日のDeNA戦以来、2週間ぶりの快音だった。

 「この時期になって、タイトルのことが気にならないはずがない。最近の打席ではホームラン狙いの力みも目につく」と、ある球団のスコアラーが指摘するように、結果を欲しがる打席も目につく。

 「結果が出なくて一番悔しいのは本人。ともかく打席にリラックスして入ってくれれば」と元木大介ヘッドコーチは語る。人知れぬ重圧と戦うのが4番の宿命。タイトル獲りへ、正念場の秋だ。


 「勝利の方程式」の崩壊、「足のスペシャリストの離脱」、そして「タイトルへ、苦悩する4番」。順調すぎるほど快走を続けて来た原巨人に、初めてほころびが見えた。コロナ禍の過酷なペナントレースを勝ち抜いても、日本一を手にするためには乗り越えなければならない宿題と言えるだろう。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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