コラム 2020.11.30. 07:09

150キロ連発で鮮烈アピール…「横浜市長杯」で躍動した来秋のドラフト候補たち

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創価大・鈴木勇斗選手 [写真提供・プロアマ野球研究所]

「来年以降」の注目株が続々登場


 11月9日から開催された、『横浜市長杯争奪関東地区大学野球選手権』。この大会は首都大学・神奈川大学・千葉県大学・関甲新学生・東京新大学の5連盟から上位2校が集う大会で、例年であれば明治神宮大会の出場権をかけて行われる。

 今年は残念ながら明治神宮大会が中止となってしまったものの、関東地区の大学における大一番はいつも通りに開催。10校が決戦の舞台・横浜スタジアムに集った。


 先日は来年のドラフト候補となる共栄大のエース・小向直樹について個別に紹介したが、他にも素晴らしい選手が多かったため、改めて目に留まった選手についてピックアップして紹介したい。

 今回は、「来年以降のドラフト候補」となる下級生の選手について取り上げる。


▼ ピックアップ・プレイヤー
鈴木勇斗(投手/創価大3年・鹿屋中央高)
古田島龍成(投手/中央学院大3年・取手松陽高)
山崎 凪(投手/中央学院大3年・千葉英和高)
山内大輔(投手/武蔵大3年・東海大菅生高)
中山誠吾(内野手/白鴎大3年・青藍泰斗高)
梶原昂希(外野手/神奈川大3年・大分雄城台高)
三野原愛望(内野手/日本体育大3年・東福岡高)

新谷 晴(投手/上武大2年・日本文理高)
菊地郁也(投手/創価大2年・創価高)
川合勇気(投手/神奈川大2年・掛川西高)
内田健太(投手/創価大2年・宇和島東高)
加藤泰靖(投手/上武大2年・志学館高)
吉田賢吾(内野手/桐蔭横浜大2年・横浜商大高)
土井克也(捕手/神奈川大2年・唐津商高)
松下豪佑(外野手/武蔵大2年・佼成学園高)
門脇 誠(内野手/創価大2年・創価高)
松浦佑星(内野手/日本体育大1年・富島高)
矢沢宏太(投・外/日本体育大2年・藤嶺藤沢高)


創価大・鈴木勇斗が鬼気迫る投球


 開幕戦でいきなり150キロをマークするなど、見事な投球を見せた小向直樹(共栄大3年)については、27日に掲載のコラムで個別にレポートしたが、同じ東京新大学リーグで小向以上に来年注目を集めそうな選手が、創価大の鈴木勇斗だ。


 初戦の国際武道大戦では、立ち上がりに変化球でストライクが取れずに苦しんだものの、中盤以降は持ち直し、被安打4の12奪三振、自責は1で完投。そして、鈴木の評価をさらに上げたのが、翌日に行われた準決勝の対上武大戦だった。

 3点差に追い上げられ、なおも一死満塁という場面でマウンドに上がると、空振り三振とショートゴロで見事にピンチを脱出。7回以降もエンジン全開で上武大打線を寄せ付けず、3回と2/3を投げてノーヒット、5者連続を含む9奪三振という圧巻の投球でチームを勝利に導いたのだ。

 特に最終回には、日本ハムから3位指名を受けた古川裕大を相手に146キロ・150キロ・152キロ・151キロとストレートで真っ向勝負を挑み、空振り三振を奪っている。まさに、相手の息の根を止めるような“鬼気迫るピッチング”だった。


 172センチと上背はないものの、下半身の充実ぶりが目立ち、ストレートはコンスタントに140キロ台後半をマークする。きれいに上から腕が振れるため、ボールの角度も申し分ない。

 ストレートはアマチュア全体を見回しても指折りのスピードと威力があるだけに、変化球のレベルが上がれば、ドラフト1位で指名される可能性は高いだろう。


中央学院大の投手陣は順調に成長


 その他の3年生投手では、昨年の大会で好投を見せた中央学院大の古田島龍成と山崎凪の2人も順調な成長ぶりを見せた。


 古田島は西武1位指名の渡部健人(桐蔭横浜大)に特大の一発を浴びたものの、次の打席では見事に空振り三振を奪って、リベンジに成功。優勝した桐蔭横浜大打線を相手に5回1/3を投げて被安打3、7奪三振の1失点という好投を見せた。

 下半身と上半身が同時に回転し、少し左肩の開きも早いように見えるが、高い位置から腕が振れ、角度のある140キロ台後半のストレートは大きな魅力だ。指先の感覚が良く、ストレートだけでなく変化球もしっかりコーナーに投げ分ける制球力も備えている。試合を作る能力の高さは見事だ。


 一方、山崎も6回途中からマウンドに上がり、最後は味方のエラーでサヨナラ負けを喫したものの、3回0/3を投げて自責は0。4奪三振と良さは十分に見せつけた。

 今大会では古田島を上回る最速148キロをマーク。数字に見合う球威も感じられる。テイクバックで右肩が下がるフォームだが、躍動感は申し分なく、しっかりとボールを抑え込めるのが特長だ。

 また、打者の手元で鋭く落ちるフォークのブレーキも申し分ない。リーグ戦では先発を任されているが、マウンドに上がって最初の打者から出力全開で速いボールを投げられるのを見ると、リリーフの適性も高いように見える。古田島とともにドラフト戦線に浮上してくる可能性は高いだろう。


武蔵大・山内大輔の評価が上昇中


 武蔵大の山内大輔もまた、今大会で評価を上げた一人だ。

 昨年の大会でも初戦で横浜商科大を相手に1失点で完投勝利をマークしているが、1年経ってストレートに力強さが加わってきた。最速は145キロで、アベレージは140キロ台前半だが、ボールの出所が見づらいフォームで、数字以上に打者の手元で速く見える。

 腕を振って内角に速いボールを投げ、また同じフォームからブレーキ抜群のチェンジアップを操れるのも大きな長所だ。フォームとコントロール、変化球は高レベルなだけに、ストレートにさらに力が出てくれば、ドラフト候補に浮上することも十分に考えられる。


 野手では、白鴎大の中山誠吾、神奈川大の梶原昂希、日本体育大の三野原愛望などが候補になる。

 いずれも初戦で敗れ、中山は4打数無安打、梶原は二塁打を放ちながらも3三振、三野原も5打数1安打・1打点と今大会では強いインパクトを残すことはできなかったが、3人とも大型で貴重な強打者タイプだけに、来年以降も注目を集めることになりそうだ。


日体大・矢沢宏太の潜在能力は想像がつかない


 再来年以降のドラフト候補となると、投手では新谷晴(上武大2年)、菊地郁也(創価大2年)、川合勇気(神奈川大2年)、内田健太(創価大2年)などが目立ったが、最も強烈な印象を残したのは加藤泰靖(上武大2年)だ。

 初戦の武蔵大戦で8回からマウンドに上がると、今大会登板した全投手の中で最速となる153キロをマーク。2イニングで投じたストレート23球のうち19球が150キロを超え、平均球速は150.83キロに達した。

 鋭く落ちるフォークも素晴らしく、来年以降の関甲新学生リーグを背負って立つ存在となることは間違いないだろう。


 野手では、吉田賢吾(桐蔭横浜大2年)、土井克也(神奈川大2年)、松下豪佑(武蔵大2年)、門脇誠(創価大2年)、松浦佑星(日本体育大1年)などが目についたところ。ただ、一人を選ぶなら、矢沢宏太(日本体育大2年)になるだろう。

 投手としても140キロ台後半のスピードを誇り、大学生としては極めて珍しい“二刀流”の選手。今大会は初戦で敗れたため、登板の機会はなかったが、シートノックではライトから文字通り矢のような返球を見せたほか、打者としても適時三塁打を含む2安打・1打点と、3番打者の役割を果たしている。

 今後も投手・野手の両方でプレーしていく予定とのことだが、2年後にはどうなっているか想像がつかないほどのポテンシャルを秘めた選手である。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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