安定感には欠けたものの…
2019年から海を渡り、メジャーリーグの舞台で戦うマリナーズの菊池雄星。今季は2年目の飛躍に期待がかかったが、前年に引き続き好不調の波が激しいシーズンとなった。
2年目の成績を振り返っておくと、9試合に登板して2勝4敗、防御率は5.17。防御率は昨年の5.46からやや改善している。
そんな中で良かった点と言えば、被弾の数を大きく減らしたこと。1年目はメジャー全体でも3番目(タイ)に多い36本もの本塁打を供給したが、今季は3本だけ。9イニングあたりの被本塁打数に直すと、2.00から0.57と、“一発病”の症状は完全に治まっていた。
さらに、1イニングに許した走者数を示すWHIPも1.52から1.30に良化させており、1年目に比べれば“打たれにくい投手”になっていたことは間違いない。
防御率の数字自体は大きく変わらなかったが、FIP(Fielding Independent Pitching=守備から独立した投球内容)は、5.71から3.30に大きく数字を良化させていた。つまり、実際は防御率3点台レベルの投球はしていたということだ。
3年目こそ“飛躍”のシーズンに
最大の収穫は、三振を奪えるようになったこと。奪三振率は1年目の6.46から9.00に大きく良化した。
その要因として考えられるのは、球速を上げたことだろう。ストレートの平均球速は1年目の92.5マイル(約149キロ)から、95.0マイル(153キロ)に大幅アップ。
“伝家の宝刀”スライダーも昨季比で10キロ近く球速が上がり、“カットボール”と記録されるようになった。それまでのカーブがスライダー扱いとなり、変化球も含めて全体的に球速はメジャー仕様になった。
その成果は数字にも表れている。ストレート投球時の空振り率は、昨季の16.0%から31.0%にほぼ倍増。6球投げて、1球しかなかった空振りが2球になった。
もちろん、まだまだ課題も多い。走者を背負った時には、不安定さが目立っていた。
走者なしの場面では、被打率.198と抑え込んでいたが、走者ありだと.296。さらに、得点圏時は.324とタイムリーを浴びる場面が多かった。
被本塁打をかなり減らしていただけに、来季はピンチで粘り強さを見せることができれば、一気に防御率3点台も見えてくるのではないだろうか。
4年総額5600万ドル(約60億円)という大型契約の2年目を終えた菊池。“不良債権”扱いされた1年目から、短縮シーズンの2年目は、ほんの少しだけ明るい光が見えてきたか。
年齢も29歳とまだ伸びしろはある。3年目は進化した姿を見せてくれるだろう。
文=八木遊(やぎ・ゆう)
菊池雄星
ポジション:投手投打:左投左打
生年月日:1991年6月17日(29歳)
身長・体重:183センチ・97キロ
出身地:岩手県
<今季成績>
登板:9試合
投球回:47.0回
防御率:5.17
勝敗:2勝4敗
奪三振数:48個
奪三振率:9.00
与四死球:20個