苦しむチームを支えた大黒柱
コロナ禍で行われたプロ野球の2020年シーズン。投打に若き柱が出てきたオリックスは最下位脱出を目指したが、シーズン途中で監督が辞任に追い込まれるなど、特に序盤は歯車が噛み合わず、終わってみれば2002年~2004年以来となる「2年連続最下位」の屈辱を味わった。
そんな中、昨季もチームの中心選手として奮闘を見せたのが吉田正尚だ。プロ5年目の昨季は全120試合に出場して打率は.350。キャリアハイを大きく更新し、1年前に惜しくも届かなかった首位打者のタイトルも手中に収めている。
シーズン打率.350といえば、球団では2000年のイチロー以来で実に20年ぶりのこと。セ・パ両リーグで見ても、この.350以上という成績は史上45人目(59度目)という快挙だ。
毎年「自己最高」を更新中
ここで、吉田正尚のプロ入りからの5年間の打率を振り返ってみたい。
・1年目(2016年)= .290(231-67)
・2年目(2017年)= .311(228-71)
・3年目(2018年)= .321(514-165)
・4年目(2019年)= .322(521-168)
・5年目(2020年)= .350(408-143)
ルーキーイヤーと2年目に関しては、腰の故障などもあって規定打席には未到達。とはいえ、プロ入り後は毎年欠かさず自己最高を更新してきたことが分かる。
当然ながら、今季この「.350」を更新するのは容易なことではないが、充実期の27歳を迎えて進化を続けている吉田なら、決して不可能ではないだろう。
もしも吉田が「.350」を更新したら…?
これまでの流れ通り、今年も吉田が“昨年までの自分”に勝つとしたら…?
再び「打率.350以上」を記録すると、史上12人目の複数回達成者に。さらに、2年連続での達成に絞れば、史上4人目ということになる。
ちなみに、「打率.350以上」を3回以上記録した選手は、イチロー(4回)と張本勲(3回)の2人しかいない。
▼ 「打率.350以上」達成回数ランキング
※各シーズンの規定到達者
<1位:4回>
イチロー
(1994・1996・1998・2000)
<2位:3回>
張本 勲
(1970・1972・1976)
<3位:2回>
小鶴 誠
(1949・1950)
矢沢健一
(1976・1980)
若松 勉
(1977・1980)
新井宏昌
(1979・1987)
ブーマー・ウェルズ
(1984・1986)
ランディ・バース
(1985・1986)
落合博満
(1985・1986)
ウォーレン・クロマティ
(1986・1989)
柳田悠岐
(2015・2018)
レジェンドがズラリ…
歴代最多の「4回」を誇るイチローだが、実は2年連続での達成は一度もなく、1994年から隔年でマークしていた。ちなみに、メジャー移籍後も4回(2001・2004・2007・2009)達成している。
イチローに続くのが張本で3回。この他、9人が2回達成している。この中で小鶴・バース・落合の3人は2年連続で達成しており、両年で首位打者に輝いたのはバースと落合だけ。
逆に最も長いブランクで達成したのは新井宏昌で、1度目が1979年だったのに対し、2度目は8年後の1987年。それも、初回は南海で、2度目は近鉄で、という移籍を挟んでの達成だった。
振り返って見ると、球界のレジェンドだけが成し遂げてきたこの偉大な記録…。果たして、吉田正尚はこの中に自らの名前を刻むことができるだろうか。
文=八木遊(やぎ・ゆう)