コラム 2021.03.02. 07:09

やはり「春の珍事」なのか…オープン戦首位打者はシーズンでどんな成績を残した?

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DeNAの楠本

「オープン戦の成績はあてにならない」?


 3月に入り、いよいよ新シーズンの開幕が近づいてきた。2日からはオープン戦も開幕。8年ぶりに日本球界復帰を果たした楽天の田中将大や、阪神のゴールデンルーキー・佐藤輝明といった、キャンプで話題を振りまいた選手たちがどんなプレーを見せてくれるのか。注目が集まっている。


 その一方で、オープン戦はあくまでも準備期間。若手にとっては生き残りをかけたアピールの場になるが、ベテランにとっては調整の場。こうした違った意味合いがある中での約1カ月、20試合足らずという限られた期間に残した成績が、そのまま143試合の長丁場に直結するとは限らないのも事実である。




 過去の40年を振り返ってみても、オープン戦でトップの打率を記録し、なおかつシーズンでも首位打者を獲得したというのは、1982年の長崎啓二(大洋)にはじまり、オリックス時代のイチローが1995年・1998年・2000年と3度達成。そして2007年の青木宣親(ヤクルト)と、この3人による5度の例しかない。


 では、直近の5年間も見てみよう。各年のオープン戦首位打者に輝いた選手と、その打率が以下の通り。なお、選手の所属は当時のもの。


<2016年>
.400 鈴木大地(ロッテ)
.400 坂田 遼(西武)

<2017年>
.375 アウディ・シリアコ(DeNA)

<2018年>
.386 内田靖人(楽天)

<2019年>
.388 楠本泰史(DeNA)

<2020年>
.378 大山悠輔(阪神)


 該当の6選手のうち、そのシーズンに規定打席に到達したのは2016年の鈴木大地(率.285)と昨季の大山悠輔(.288)の2人だけ。ともにその時点でチームの主力ではあったが、大山はこの後に自己最多の28本塁打を放つなど、オープン戦の結果を弾みに主砲としてひと皮むけた感があった。

 これに対し、2人以外の選手たちはシーズン開幕後に苦しんだ。坂田は45試合の出場で打率.245、シリアコに至っては12試合で.074という大ブレーキ。内田も58試合に出場したが打率は.198と苦しみ、楠本も39試合の出場で.208。オープン戦の輝きがまるで嘘のような落ち込みぶりで、まさに“春の珍事”といったところだった。


直後の飛躍は叶わなくても…?


 やはり、「オープン戦の結果はあてにならない」というよくある結論に落ち着きそうだが、そう決めつけてしまうのは、いささか早計かもしれない。それ以前の2011年から2015年まで、対象期間をさらに広げて見てみると、興味深いデータも見えてきた。


▼ 近年のオープン戦首位打者とその打率
※所属はすべて当時のもの

<2011年>
.442 浅村栄斗(西武)

<2012年>
.403 松山竜平(広島)

<2013年>
.393 畠山和洋(ヤクルト)

<2014年>
.435 井上晴哉(ロッテ)

<2015年>
.459 秋山翔吾(西武)


 2015年の秋山と言えば、シーズンでも打率.359というハイアベレージをマーク。首位打者には届かなかったものの、NPB新記録となるシーズン216安打を達成した。

 ほかの4人については、すぐにレギュラーに定着して活躍したかと言えばそうでもないが、オープン戦での活躍が“春の珍事”ではなかったことを後に証明することとなる。

 最も早く結果を出したのが浅村。オープン戦の活躍が認められて開幕スタメンに抜擢された2011年は、前年の30試合から137試合と出場機会を大幅に増加。打率.268、9本塁打の成績を残してレギュラーへの足掛かりを作ると、2年後の2013年には初の打率3割をマーク。今や球界を代表する強打者へと成長を遂げた。

 そんな浅村とは対照的に、松山は開幕後にさっぱり打てなくなり、48試合で打率.204と低迷。それでも、翌年は規定打席こそ届かなかったものの、自身初となる2ケタ本塁打(10本)を記録するなど、打率.282で52打点と躍進。2016年からは勝負強い打撃を武器に鈴木誠也の後の5番を任され、チームのリーグ3連覇に貢献している。

 畠山も直後のシーズンこそ打率.219と今ひとつに終わったが、翌2014年は自身初となる打率3割をマーク。2015年にはシーズン途中から不動の4番となり、自己最多の26本塁打・105打点を挙げてチームの14年ぶりVに貢献。初タイトルとなる打点王にも輝いた。

 ドラフト制以降初となる、「ルーキーイヤーにオープン戦首位打者」を達成したのが井上。球団では毎日時代の戸倉勝城以来、64年ぶりの「ルーキー開幕4番」にも抜擢されたが、1年目は打撃不振に苦しんで5月には二軍落ち。その後も毎年のように夏前に二軍落ちを繰り返したこともあって“春男”と呼ばれたこともあったが、5年目の2018年に打撃開眼。打率.292で24本塁打と覚醒し、ルーキーイヤーのオープン戦首位打者がフロックではなかったことを証明した。


 こうして振り返ってみると、たとえその年のシーズンで期待に応えることができなくても、長い目で見ていけば成功した例も多い。“未来の4番”と期待されて久しい内田や、“ポスト梶谷隆幸”の座を争う楠本も、これからその才能を開花させるかもしれない、ということだ。

 果たして、今年のオープン戦で輝きを放つのは…?まもなくはじまる、約1カ月の戦いから目が離せない。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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