聖地で存在感を放った男たち
3月19日(金)に開幕した『第93回選抜高等学校野球大会』も、いよいよ最後の一日へ…。
各地区の激戦を勝ち抜き、文字通り“選抜”されて甲子園へとやってきた32の強豪も、残るは2チームだけ。東海大相模と明豊による決勝戦を残すのみとなった。
初日の開幕戦から延長戦ではじまるなど、例年以上に熱戦が多いこの春。
早々に敗退してしまったチームの中にも、キラリと光るプレーを見せた選手は少なくなかった。
そこで、プロアマ野球研究所では、残念ながらこの春は甲子園を去ることとなったものの、このあとすぐにやってくる夏、そしてその先に向けて、大いなる可能性を示した選手たちを引き続き取り上げてみたい。
圧巻のスローイング
▼ 大津綾也(北海)
・捕手
・174センチ/70キロ
・右投右打
いきなりの延長戦となった神戸国際大付(兵庫)と北海(北海道)の開幕試合。大会前に注目投手の一人として紹介した木村大成が最後に力尽きたものの、期待通りのピッチングを見せてくれたが、その木村をリードしたキャッチャーの大津のプレーにも驚かされた。
まず、何よりも圧巻だったのがスローイングだ。昨年秋の北海道大会でも強肩ぶりは目立っていたが、一冬を越えて明らかにワンランクレベルアップした。1回から9回までのイニング間のセカンド送球のタイムを並べると以下のような数字となっている。
▼ 北海・大津のイニング間の送球タイム
1回=1.88秒
2回=1.88秒
3回=1.94秒
4回=1.86秒
5回=1.96秒
6回=1.86秒
7回=1.86秒
8回=1.81秒
9回=1.87秒
(※10回は計測できず)
セカンド送球のタイムは2.00秒を切れば強肩と言われているが、大津は9回全てでそれをクリア。3回の1.94秒、5回の1.96秒は投手の木村の投げたボールが逸れたものであり、それでも2.00秒を切っている。
特に素晴らしいのが、捕球から送球への持ち替えの素早さだ。ミットにボールが収まると同時にボールは右手に移り、そこから素早い動きで速いボールを投げることができている。球筋が安定しており、コントロールも抜群だ。
この試合では3個の盗塁を許したが、いずれも投手が完全にモーションを盗まれたもの。10回の守備ではバント処理でも素早いフットワークと送球で一塁走者を二塁で封殺している。
安定したキャッチング、ブロッキングも素晴らしく、守備に関しては高校トップレベル。打撃では目立たなかっただけに、夏までには打つ方でも進化した姿を見せてもらいたい。
21世紀枠出場校に強肩外野手が出現
▼ 前田銀治(三島南)
・外野手
・181センチ/89キロ
・右投右打
21世紀枠での出場ながら、驚きのプレーを見せてくれたのが三島南の前田だ。181センチ・89キロというプロフィールからも分かるように見事な体つきだが、それが全て野球のプレーに生きているのが大きな特長である。
シートノックではセンターからサード、ホームへ低い軌道の見事な返球を連発。ダイナミックに動いて投げる姿も圧巻で、この強肩ぶりは大会でも1、2を争うレベルと言えるだろう。
守備以外のプレーも素晴らしかった。最初の2打席は凡退したものの、2点を追う6回裏には高めに浮いたスライダーをとらえてライトオーバーのスリーベースヒット。8回裏には低めのストレートをきれいに引っ張ってレフト前へ運んだ。
少しグリップの位置が低く、ヘッドが中に入るのは気になるとはいえ、良い意味で振り出しがコンパクトで鋭く、インパクトの強さも申し分ない。ライト方向への打球が伸びるのも、ヘッドがよく走っている証拠である。
さらに、三塁打の三塁到達タイムは12.00秒を切れば俊足と言われるレベルだが、前田は一塁まで少し流して走りながら11.72秒をマークしている。一塁を回ってからどんどん加速するようなストライドの大きいベースランニングは迫力十分だった。
また、9回には投手としてマウンドに上がり、3点を失ったものの最速143キロをマーク。改めて能力の高さを見せた。恵まれた体格でパワーとスピードを兼ね備えており、全てのプレーにスケールの大きさが感じられる。
この試合の活躍で、多くのスカウト陣の印象に残ったことは間違いない。今後の成長次第では、十分にプロも狙える素材といえるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所