鳥谷敬が甲子園に帰ってくる
2年ぶりの開催となる『日本生命セ・パ交流戦』。
阪神タイガースにとって幾つもの“再会”が控えている。
25日からの開幕カードで戦うロッテには、2019年まで在籍した鳥谷敬がいる。
タテジマ最後の試合となった2019年9月30日・中日戦以来となる、甲子園でのプレー。背番号00が聖地の土を踏みしめた瞬間の空気は、今からでも容易に想像が付く。
不動の遊撃手として一時代を築いたかつての“象徴”がどのような形でチームメートと対峙し、立ちはだかっていくのか。いきなり目が離せない戦いが繰り広げられる。
トラの正捕手を育てたあの左腕も…
今年からオリックスに入団した能見篤史と、その背中を追いかけてきた後輩たちとのマッチアップも見逃せない。
タイガースの選手として最後の登板となった昨年11月11日のDeNA戦では、大山悠輔や梅野隆太郎、岩貞祐太も涙した。
毎年、キャンプ前に沖縄で合同自主トレを行ってきた「チーム能見」の面々。その一員として教えを受けてきた梅野は人一倍、思い入れも強い。時には厳しい言葉もかけられながら、捕手として歩む道を示してくれた特別な存在と言える。
初めて弟子入りしたのは、2016年1月。食事の席での出来事が忘れられない。
「捕手が盗塁を刺したり、ワンバウンドをしっかり止める。それが投手にとってどれだけ助かることか。信頼関係はそれに尽きるかもしれない」(能見)
やるべきこと、磨くべき能力が明確になった瞬間だった。
「能見さんにそういう話をしてもらって、それからはひたすらワンバンを止める技術練習に時間を割いたと思います。捕手は生きた球を受けてナンボ。ブルペンでも絶対にそらさないように、一球一球を無駄にしないように」
リーグ屈指の強肩と、ブロッキングを誇る正捕手の礎になった。
成長を示す快音か、意地の快投か…
1年目からの2年間、当時は先発だった能見とバッテリーを組んだものの6戦全敗…。
経験値が違い、サインに首を振られることも少なくなかった。
面と向かって言うのではなく、背中で示す先輩。
「能見さんは、あえて言わない厳しさもあって…」と、悩みながらミットを構えた。
それでも、ボールを逸らさないことだけは強く意識し続けた。
2017年には前年の37試合を大きく上回る112試合出場を果たし、プロ4年目で力強くジャンプアップ。
「ウメがずっと(マスク)かぶらないと優勝できないぞ」。まぶしく、大きかった背番号14に肩をたたかれたのもその時だ。
頂点だけを見据えて今、梅野はリーグ首位に立つチームをけん引する。
オリックスでは兼任コーチを務め、ブルペン待機している能見。
“師弟対決”は試合展開や巡り合わせに委ねる部分も多くなるが、バッテリーを組んできた2人の対峙は様々な駆け引き、思いが交錯するだろう。
成長を示す快音か、意地の快投か──。
能見篤史と梅野隆太郎が向かいあう「その時」を待ちたい。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)