コラム 2021.06.28. 18:00

二冠をうかがう巨人・岡本和真にそれでも足りないもの【白球つれづれ】

無断転載禁止
巨人・岡本和真 (C) Kyodo News

白球つれづれ2021~第26回・盟主の4番として


 巨人の猛追が始まった。

 27日のヤクルト戦に勝利して7連勝。18日の時点では8ゲーム差をつけられていた首位・阪神の連敗もあって、わずか9日間で2.5差まで肉薄、完全に射程圏に捕えた格好だ。

 7つ目の白星の立役者は岡本和真選手である。同点で迎えた6回、ヤクルト先発、アルバート・スアレスのカットボールを右翼スタンドに叩き込む21号3ランで勝負を決めた。それまで2三振と苦しんだが、勝負どころの一振りで結果を残すあたりが4番の仕事だ。

 今月12日の対ロッテ交流戦で18、19号の固め打ちがいずれも3ラン、さらに20号、21号も3ラン本塁打と来れば、打点も比例して荒稼ぎとなる。28日現在(以下同じ)、66打点は両リーグ断トツのトップ。ホームランレースでもヤクルトの村上宗隆選手に1差と迫り、2年連続の本塁打王、打点王の二冠に向け、視界は良好と言える。


仮免から二代目若大将へ


 日頃から理想の4番像を追い求める。

 「自分のことよりチームが勝つこと。負けた時には(4番である)自分の責任だと思っている」。かつてのONから原辰徳・現監督や阿部慎之助・現二軍監督らが立ち続けた巨人の4番は、栄光の歴史であり、看板選手の証でもある。

 22歳の若さで主軸を任され、当時は指揮官から「仮免の4番」と呼ばれた男が、今では「二代目若大将」と認知される。4月にはセ・リーグ高卒最速の100号に到達。着実に大打者の階段を登り始める姿に、原監督は「僕なんか足元にも及ばない4番になる。彼は王さんや松井(秀喜)を追っていく存在。あと400本、500本を目指して欲しい」とエールを送る。

 仮に王貞治・現ソフトバンク球団会長が現役引退した40歳までプレーしたとしたら、今月30日で25歳を迎える岡本の残りシーズンは15年。今後年間35本ペースで量産し続ければ、現在の117本塁打は600本以上まで伸びる計算になる。原監督の発言はあながち、夢物語とばかりは言えない。


6月の現実


 今や、球界を代表する強打者に成長した岡本だが、一方で厳しい現実を突きつけられた6月でもある。

 16日に発表された東京五輪の日本代表24選手の中に岡本の名前はなかった。さらに、28日に発表されたオールスター(7月16日メットライフドーム、17日楽天生命パーク)のファン投票結果でも、セの三塁手部門で村上(ヤクルト)、大山悠輔選手(阪神)の後塵を拝する3位となっている。特に村上とはダブルスコアに近い得票差で、意外なほどの大差が浮き彫りになった格好だ。

 同じ若き主砲で共に三塁手、打撃タイトルを争う好敵手。岡本と村上は比較対照されることが多い。侍ジャパンの稲葉篤紀監督は、村上の勝負強い打撃と出塁率の高さを岡本より評価した。一方で岡本の場合は好不調の波が大きく、短期決戦では不安材料と指摘する向きもあったことは確かだ。

 さらにチーム編成を考えた時、4番を鈴木誠也選手(広島)にすれば、前後を左打者で固めたい。柳田悠岐(ソフトバンク)、吉田正尚(オリックス)と並ぶ大砲役に村上を選択したという事だろう。岡本にとっては残念な結果となったが、これをバネに夏以降の爆発を期待したい。


求められる更なる発信力!?


 人気面に関連すれば、岡本の「アピール力不足」が起因しているのかも知れない。担当記者の中でも岡本の談話は面白みがなく、見出しにならないと言う声を聞く。選手はプレーで魅了するものという意見もあるだろうが、特に人気球団のスター選手は、振舞いや言動でも「華」を求められる。

 かつての松井秀喜氏も派手なガッツポーズや大言壮語をすることはなかった。それでも誠実な人柄は多くに愛され、自然と報道陣の輪ができあがった。岡本も同タイプの選手だ。発展途上の24歳、まだまだ改善すべき余地は多いが、マスコミの後ろにいるファンへの発信力が増せば、真のスーパースターに近づくことだろう。

 球界の盟主を任じる巨人が圧倒的な人気を誇る時代は終わった。菅野智之、坂本勇人両選手以外に全国区スターのいない現状を見た時、球団としても岡本を人気面でもNo.1選手にしたいはず。10年、20年にひとりの逸材だからこそ、新たな岡本の魅力発信が求められる。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
ツイート シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西