2021.08.15 18:00 | ||||
横浜DeNAベイスターズ | 1 | 終了 | 4 | 東京ヤクルトスワローズ |
新潟 |
球数を抑えて長いイニングを消化できる理想の投球へ
プロ2年目、20歳の右腕・奥川恭伸(ヤクルト)がぐんぐんと成長している。東京五輪による中断が空けて初の先発登板となった8月15日のDeNA戦では、2回に宮﨑敏郎のソロ本塁打で先制を許したものの、終わってみれば失点はその1点のみ。7回を投げて被安打4の1失点、9奪三振0四死球というほぼ完璧な内容で今季5勝目を挙げた。
まさに伸び盛り。チームの育成方針から、これまでほとんどの先発試合において奥川は90球未満で降板している。その制限のなか、シーズン開幕直後はゲーム序盤に失点することが目立ち、今季初先発となった3月28日の阪神戦から3試合連続で5回での降板となっていた。しかし、徐々にその悪癖がなくなり、投球回が確実に伸びている。これは、少ない球数で長いイニングを投げられるようになってきたことを意味する。
ここで、今季の奥川の全投球成績を振り返ってみる。
▼ 奥川恭伸2021年全投球成績
<3月>
28日(対神) 負:5回(74球)3失点/5三振/1四死球
<4月>
8日(対広) 勝:5回(84球)5失点/4三振/0四死球
23日(対中) -:5回(85球)4失点/2三振/0四死球
<5月>
5日(対神) -:6回(86球)2失点/5三振/3四死球/QS
16日(対中) -:6回(88球)1失点/7三振/0四死球/QS
27日(対日) 勝:6回(96球)2失点/9三振/1四死球/QS
<6月>
8日(対ロ) 負:5回(84球)6失点/3三振/1四死球
20日(対中) 勝:7回(84球)0失点/4三振/2四死球/HQS
<7月>
1日(対神) -:7回(87球)1失点/6三振/0四死球/HQS
13日(対巨) 勝:6回(98球)3失点/7三振/0四死球/QS
<8月>
15日(対De) 勝:7回(88球)1失点/9三振/0四死球/HQS
3試合連続無四球、直近4試合中3試合がHQS
奥川が最後に敗戦投手となったのは6月8日のロッテ戦だが、その試合を含む今季初先発からの7試合で7回を投げた試合は1試合もなかった。また、その7試合では、6回以上を投げて3自責点以内に抑えるクオリティ・スタート(QS)もわずか3試合のみにとどまった。
対して、その後の4試合は全試合でクオリティスタート(QS)を達成。さらに、直近のDeNA戦も含めて投球回が7回に達した3試合では、7回以上を投げて2自責点以内に抑えるハイ・クオリティ・スタート(HQS)も達成している。
とくに目を引くのは、四球の少なさ、そして奪三振の多さだ。この日のDeNA戦でもあたりまえのように無四球で登板を終え、これで先発3試合連続での無四球登板となった。このことはもちろん数字にも表れている。
規定投球回には達していないものの、奥川の奪三振率(9投球回あたりの奪三振数)8.45は、柳裕也(中日)の「9.18」に次ぐリーグ2位に相当し、与四球率(9投球回あたりの与四球数)1.11は、大野雄大(中日)の「1.49」を大きく引き離したリーグトップに相当する数字だ。
チームの方針で中10日以上の間隔を空けて登板しているために今季は規定投球回に達することは難しいかもしれないが、奥川の投球内容そのものはすでにリーグトップクラスと言っていい。
奪三振が多く与四球が少ないということは、コントロールミスが少ないということはもちろん、ストライクゾーンでの勝負に勝っていて、球に力があるということでもあるだろう。ヤクルトはしばらくのあいだ遠征続きで厳しい首位争いとなるが、エース格の力を発揮しはじめた奥川が、後半戦のチームを支えていく。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)