先輩投手陣をリード「すごくいい感じ」
スワローズを常勝チームへと導く捕手へ――。ヤクルトのドラフト3位ルーキー・内山壮真は、高卒1年目から実戦を通じて成長を続けている。
ここまでファームで59試合に出場し、打率.234、6本塁打、18打点の成績を残している。一軍へは4月と5月に3試合ずつの出場を果たした。
球団の公式HPでは身長171センチ、体重は71キロだが、現在「74.5キロ」まで増量。「入った頃に比べれば飛距離は伸びているというのは実感しています。筋トレでも重量をだんだん上げられるようになってきた」と、体力強化の成果は徐々に表れてきている。
これまでのキャリアで「捕手」と「遊撃手」の2つのポジションをこなしてきた。強肩で野球センスは抜群。星稜高校(石川)では2年生まで遊撃のポジションを守り、2019年夏の甲子園では「4番・遊撃手」として準優勝に貢献すると、3年生になって中学時代に守っていた捕手に再転向した。
プロ入りし、“キャッチャー1本”で勝負していく。
未来の正捕手候補は「1年でも早く、1日でも早く一軍のレギュラーになれるようにという思いで今はやっています」と、決意をにじませる。
ファームではチームトップの43試合でマスクを被り、先輩投手陣を落ち着いてリードする姿が印象的だ。
「最初は全然わからない状態だったんですけど、最近はちょっといろいろ試しながらやってきて、すごくいい感じでできている」と、手応えをつかんだ。
捕手として心がけていることがある。「自分はこういったボールがほしくて、こういった打ち取り方をしたいですよ、といった表現というのをピッチャーにして、自分がやりたいことをしっかり伝えられたら」と、投手に対しての意思表示を大切にしている。
8月17日のイースタン・楽天戦(森林どり泉)では、ファームで調整登板の小川泰弘と初めてバッテリーを組んだ。エースの投球を受け止め、感じたことがある。
「やっぱりすごくコントロールがいいなと感じました。自分が要求するところにしっかり投げてくれて、追い込んでからも確実に低めに投げてくれるので、ひとつひとつレベルが高いなと感じました」
この日は4回終了時点で降雨ノーゲームとなったが、小川の持ち味を生かすコーナーを突く配球を見せ「(リード面で)ほとんど任せてくださったので、そういったところでいい経験になった」と、1球1球を胸に刻んだ。
さらに「インコースの使い方というのはもっともっと勉強していかないと」と反省点も口にし、課題をつぶしていくことも忘れていない。
また、7月26日のイースタン・楽天戦(戸田)でプロ入り後、初めて高校の先輩である奥川恭伸と初バッテリーを組み、「高校時代も含めて今まで組んだことがあまりなかったので、すごく楽しくやらせてもらいました」と振り返った。今度は一軍でのバッテリーを実現させるつもりだ。
19歳は多くの経験を糧にし、着実に成長の階段を上り始めている。
「首位打者」を目標に、一軍で活躍を
広角に打ち分ける打撃力も内山壮真の魅力だ。高校通算34本塁打。ファームではチームトップの6本塁打をマークしている。ヤクルトOBの古田敦也氏を目標に掲げ、「打てるキャッチャー」を目指している。あらためて理想とするバッティングスタイルについて聞いてみた。
「一番はアベレージヒッター。打率を残せて首位打者というのを目標にしているので、そこをしっかり目指しながら、長打も自分の魅力だと思うので、ホームランをしっかり打っていけるようなバッターになっていきたい」。
ヤクルトの黄金時代を支え、一時代を築いてきた古田氏のように「打つ方でも守る方でもしっかり貢献していきたい」と、チームを勝利に導ける捕手へと成長を目指す。
打席では積極果敢な姿勢で臨む。「思い切り振るというのは高校時代からやってきたことなので、それはしっかりプロでも継続できているのかなと思います」。
ファームで池山隆寛二軍監督や、畠山和洋二軍打撃コーチからも「『失敗はしてもいいから思い切ってやれ』というのはすごく言われている」と、その教えを体現している。
思い切りの良さは、大舞台でも発揮された。7月15日に松山で行われたフレッシュオールスターゲームでは、3回の第1打席で2ボールから真っすぐを振り抜き、レフトスタンドへ先制のアーチを叩き込んだ。MVPを獲得し「後半戦に向けていい形で入れたのかなと思います」と、自信を深めた。
一軍はAクラスをキープして奮闘を続ける。後半戦の残り試合で背番号「33」が逆転優勝のピースとなれるか。
「後半戦に上がれるチャンスがあるなら上がりたい。前半戦も2回上がったんですけど、まだヒットを打てていないので、初ヒットを打ちたい」と意気込む。
「今年の経験を励みに、2年後、3年後に一軍に定着して活躍できるようにとすごく思っているので、一軍のレギュラーとして早く活躍できるように頑張りたいなと思っています」。
2017年の星稜中3年時には侍ジャパンU15代表として日の丸も背負った。
今夏の東京五輪を見て「(山田哲人と村上宗隆)同じ球団の先輩の方が活躍されていたので、自分も将来そういったところで活躍できるように頑張りたいなと思いました」と、刺激を受けた。
向上心を携え、日々成長し続ける内山壮真。ヤクルトで活躍し、球界を代表する捕手へ、大きく羽ばたいていく。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)