個性豊かなルーキーたちの意気込み
どれも一面の見出しになる、スポーツ紙にとってありがたいフレーズが次々に飛び交った。
12月13日に行われた阪神タイガースの新入団選手発表の会見。育成を含む8選手がタテジマのユニホームに袖を通し、プロとしての“第一声”を口にした。
「夢はでっかく」とはよく言うが、今年のルーキーたちが語る未来図のスケールは壮大かつ、オリジナリティに満ちあふれていた。中でも、虎党の心をわしづかみにしたのは、ドラフト4位の前川右京(智弁学園)だ。
「前川、将来、何番欲しいんやっけ?」。壇上で横に座っていた矢野燿大監督から突然投げかけられた質問に、18歳は即答して見せた。
「6番です!」
ファンの方なら、この時点でどれほどの大志を抱いてこの場に座っていたか伝わっただろう。
前川が欲したのは現役、そして監督時代に金本知憲氏が背負ってきた「6」。同氏が監督を退いた2018年以来、“準永久欠番”となっており、後継者はまだ現れていない。
“アニキ”の背中を追いかけて
付けたいからといって背負える番号でもないが、無邪気にレジェンドナンバーに食いついたわけではない。
「金本さんの番号で、智弁学園にも教えに来ていただきましたし。偉大な方の背番号」
OBで同じ外野手の長距離砲という共通点だけでなく、今年3月のセンバツ前には、テレビ番組の企画で智弁学園を訪れた際に指導を受ける機会に恵まれていた。
腰の回転を並行に回すよう助言も授かり、タイガースへの入団が決まった今、“背番号6”は前川の中ではっきりと追いかける存在になった。
とは言え、プロでの実績も皆無の“1年生”は、「58番という背番号で嬉しい気持ちでいっぱい。まずはこの背番号でしっかり頑張っていきたい」と足下を見つめている。
「世界」を見据えて
ドラフト1位の森木大智(高知)も、志はどこまでも高い。
目標の選手に大谷翔平を挙げた右腕は、「将来を見据えて言えば、世界を代表する大きい選手になりたい。具体的に言えば、こいつが投げたら侍ジャパンでも世界で勝てるとか。どこの世界の人たちに聞いても僕の名前がとどろくような大きい選手になりたい」と宣言。
18歳には、鮮明なビジョンとして世界を舞台に腕を振る姿が映っているようだ。
即戦力左腕として期待される鈴木勇斗も、海の向こうを見つめた。
大学時代に世界一の左腕と言っていいクレイトン・カーショーを参考に投球フォームを作り上げた21歳は、「日本にとどまらず、海外、メジャーに行って世界一の左投手になります」と、こちらも堂々と決意表明。
甲子園だけでなく、アメリカのファンも魅了する野望を胸に、プロの扉を開いた。
ちなみに、ドラフト5位の変則右腕・岡留英貴も、色紙に「世界のクローザー」と記入。これだけ「世界」を意識した目標が相次いだのは、メジャーを震撼させた大谷の躍動や、東京五輪での侍ジャパンの金メダル獲得も影響しているのだろうか。
また、YouTubeをはじめ、身近なコンテンツでメジャーリーガーのトレーニングの様子など、「世界」を知ることができるようになったことも多分に影響しているはずだ。
まっさらなキャンバスに様々な色彩で描かれた若虎たちの「将来像」。取材するこちらも瑞々しい気持ちにさせてくれる1日だった。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)