来季の構想は「1番・宇草、2番・野間」
広島首脳陣が、来季に向けて「1番・宇草孔基、2番・野間峻祥」という構想を持っていることを明かした。宇草は来季プロ3年目を迎える24歳。成功率は高くないものの盗塁できる足があり、ただ足が速いだけの選手に収まらないパンチ力もある。もちろん今後の成長次第だが、ポンテシャルとしては十分にリードオフマンを任せられるものを持っている。
一方の野間の俊足、走塁技術に関してはいまさらいうまでもない。当然ながら首脳陣がふたりに期待しているのは、スピードを活かした「かきまわせる1、2番コンビ」だろう。
クリーンアップにどれだけ強打者を並べたとしても、塁上に走者がいなければ得点の可能性は大きく低下する。クリーンアップにどういうかたちでつなぐのか、1、2番打者の役割は打線のなかでも大きく、その出来はチームの勝敗を左右する重要な要素のひとつだ。ここで、今季のセ・リーグ6球団の1、2番打者の成績を振り返ってみる。
【2021年セ・リーグ6球団1、2番打者成績】
<ヤクルト>
1番 打率.267/出塁率.340(28二塁打/6三塁打/11本/51打点/58四球/20盗塁)
2番 打率.261/出塁率.329(36二塁打/0三塁打/13本/65打点/49四球/4盗塁)
<阪神>
1番 打率.308/出塁率.351(35二塁打/8三塁打/9本/55打点/37四球/24盗塁)
2番 打率.268/出塁率.311(24二塁打/5三塁打/1本/48打点/29四球/26盗塁)
<巨人>
1番 打率.262/出塁率.328(29二塁打/3三塁打/15本/49打点/55四球/16盗塁)
2番 打率.279/出塁率.361(30二塁打/0三塁打/17本/47打点/64四球/5盗塁)
<広島>
1番 打率.270/出塁率.327(25二塁打/2三塁打/9本/38打点/45四球/11盗塁)
2番 打率.296/出塁率.330(22二塁打/5三塁打/8本/41打点/31四球/16盗塁)
<中日>
1番 打率.277/出塁率.329(21二塁打/7三塁打/3本/35打点/41四球/12盗塁)
2番 打率.226/出塁率.270(17二塁打/2三塁打/7本/36打点/30四球/15盗塁)
<DeNA>
1番 打率.293/出塁率.354(39二塁打/2三塁打/18本/50打点/53四球/13盗塁)
2番 打率.215/出塁率.274(26二塁打/1三塁打/4本/38打点/41四球/2盗塁)
「足」という点で見ると、阪神が図抜けている。主に近本光司、中野拓夢のふたりで稼いだ盗塁数は合わせて50。2位で並ぶ広島と中日の27盗塁を大きく引き離している。また、阪神の1番打者は6球団の1、2番打者のなかで打率が唯一3割を超えており、三塁打数もトップ。もう少し四球を選べれば……という印象も受けるが、それはぜいたくというものだろう。
また、ペナントレースを制したヤクルト、3位の巨人の1、2番コンビはふたりそろって3割を大きく超える出塁率を残している。また、いずれの1、2番打者もともに2桁本塁打をマークしており、長打力も備えた1、2番として勝利に貢献していたようだ。また、ヤクルトの2番打者の65打点は6球団の1、2番打者のなかでトップの数字だ。
Bクラスに目を向けると、広島と中日は1、2番打者がそろって1桁本塁打にとどまり、中日とDeNAの2番打者はその出塁率が3割に満たない。Aクラスの3球団と比較すると、1、2番打者の成績がやや見劣りする印象だ。
固定できず「日替わり」だった今季の広島1、2番
また、広島にフォーカスした場合、上位球団とのちがいは打撃成績だけではない。ヤクルトは塩見泰隆が1番打者として98試合、青木宣親が2番打者として88試合でスタメン起用されている。阪神も中野が73試合で2番打者として先発し、近本に至っては1番打者として134試合で先発出場と、完全に打順が固定されていた。
一方の広島の場合、1、2番打者は「日替わり」だ。シーズン前半こそ1番・菊池涼介という打順がほとんどだったものの、その菊池の1番打者としてのスタメン起用も58試合止まり。2番でもっとも多くスタメン出場した小園海斗もその試合数は46試合にとどまった。シーズンを通して1番には10人、2番には11人もの選手がスタメン起用されており、1、2番を固定できなかったことは明白だ。
2016〜2018年にかけて広島がリーグ3連覇を果たしたときには、田中広輔、菊池、丸佳浩(現巨人)の「タナキクマル」により、1、2番どころか3番打者まで完全に固定されていた。2017年からは、ケガで離脱した期間を除けば4番の鈴木誠也まで固定されていたといっていい。
もちろん、1、2番を固定するには安定したクリーンアップをつくり上げる必要もあるだろう。メジャー挑戦により鈴木の退団が確実視される来季、果たしてどんなクリーンアップを組み、そして首脳陣の思惑通りの「かきまわせる1、2番コンビ」をつくれるのか。広島伝統の機動力野球を見たいというファンも多いはずだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)