恒例「1日キャプテン」で決意表明
「レインメーカー、知ってますか?カネの雨を降らせましょう!」──
通りすがりのプロレスファンなら振り向いてしまうような言葉を沖縄・宜野座村野球場に響かせたのは、タイガースの13年目・秋山拓巳だった。
今春キャンプで恒例となっているのが「1日キャプテン」。
投打で各1人ずつが、お揃いの蛍光イエローのTシャツに座右の銘や今季の目標などを記し、練習前にナインの前で決意表明する。
第3クール初日の10日、近本とともに右腕に出番が巡ってきた。
「昨日の夜から喋ることをいろいろ考えながら、ソワソワした1日の始まりでした」
考えた末、秋山は以前から顔が似ていると指摘されていた、新日本プロレスの大黒柱で現IWGPヘビー級王者・オカダカズチカの決め台詞を拝借したのだった。
「みんなで関西、日本にカネの雨を降らせましょう!」
プロレスに精通している同僚が少なく、「思いのほか、認知されてなくて、全然ウケが良くなかったですね」と苦笑いを浮かべたが、関西にカネの雨を降らせるとは、甲子園の熱狂に他ならない。
“虎のオカダ”なりのリーグ優勝、日本一への意気込みった。
“大役”についても「特にありません」ではなく…
頂点へ駆け上がるためのワンピース…いやビッグピースになる。
昨年まで2年連続2ケタ勝利を達成している背番号21は、さらなる進化へ新フォームに着手。今オフは捻転動作を加えることに注力し、昨シーズン終了後からトレーニングに励んできた。
沖縄入りしてからはブルペンで精力的に投げ込みを行っており、手応えも上々のようだ。
「しっかりブルペンに入れている。僕はフライピッチャーなんですけど、その要因となる(ボールの)ホップ成分が、去年より伸びている。そのへんは、(新フォームへ着手して)やった成果は出ている。楽しみだなというのはある」
ホップ成分が向上すれば、打者の予測よりボールがバットの上を通るためフライになりやすい。
スピードガンに表れるような目に見える変化でなくても、己の武器をしっかりと磨く春を過ごしている。
今年は競争の身ではなく、ローテーションの座をすでに手中に収めた立場で、開幕にベストコンディションをもっていく計画。
これまでは早期の実戦登板に備え、仕上げも自然と早くなっていたが、今キャンプ序盤は投球の基本となる直球を中心に投げ込み、「いつも以上にしっかり自分のペースでボールを投げられる」と充実感が漂う。
これまで控え目だった“開幕投手”に対しても、「個人的には全然言ってなかったけど、テレビで監督やヘッドが名前を出してくれて、それを聞くと頑張らないとな、という気持ちになった。開幕投手は軸として1年間、回らないといけない。それに対して自分の覚悟はどれだけあるのかなという疑問を持ちながら過ごしている」と語る。
いずれにしても、2022年、秋山に求められるのは“エース級の働き”だ。
白星を量産する「WINメーカー」として、甲子園にカネの雨を降らせることができるか。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)