コラム 2022.04.11. 19:24

パ・リーグ打者の悲鳴が聞こえる【白球つれづれ】

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ロッテ・佐々木朗希 (C) Kyodo News

白球つれづれ2022~第15回・「打者泣かせ」の剛腕が揃うパ・リーグ


 空前絶後。前人未到。どんな形容を使っても表現できない。それくらいロッテ・佐々木朗希投手の完全試合は圧倒的だった。

 10日にZOZOマリン球場で行われたオリックス戦。“令和の怪物”は輝き続けた。打者27人をノーヒット。13連続奪三振は日本記録を大幅に更新。外野に飛んだ飛球もわずかに2個。最後の打者・杉本裕太郎を3球三振に仕留めて奪三振は19まで伸びた。槙原寛己(巨人)以来28年ぶりのパーフェクトは、メジャーの歴史にも例を見ない圧倒的な偉業となった。

 マリン特有の強風はバックネット方向に吹くと、スタンドにぶつかって投手方向への逆風になる。それが変化球の落差を増すと評論家は解説する。18歳のドラ1ルーキー・松川虎生捕手の思い切りのいいリードも貢献した。

 それでも、最速164キロのストレートと140キロ台後半のフォークボールをぐいぐいと投げ込まれたら、オリックス以外の打線でも攻略は至難の業だ。

 「自分が見てきた中でも最高の投手。“令和の怪物”じゃない。“時空を超えた怪物”ですね」と評論家の藤川球児氏は、これ以上ない賛辞を贈る。

 “昭和の怪物”江川卓でも、“平成の怪物”松坂大輔でも成し遂げられなかった完全試合を20歳の若者が、涼し気にやってのけるのだから末恐ろしい。

 2年連続首位打者にして、ミートのうまいオリックスの吉田正尚選手が3打席3三振。佐々木朗の凄さを改めて実感したが、今季のパ・リーグには「打者泣かせ」の剛腕が揃っている。中でも傑出しているのがオリックス・山本由伸とソフトバンク・千賀滉大両投手だ。

 11日現在(以下同じ)佐々木朗を含めた3投手の数字を列記する。

■ 佐々木朗希(ロ)
投球回:23 被安打7 奪三振42 失点4 防御率1.57 奪三振率16.43 被打率.095

■ 山本由伸(オ)
投球回:22 被安打17 奪三振26 失点2 防御率0.82 奪三振率10.64 被打率.218

■ 千賀滉大(ソ)
投球回:22 被安打12 奪三振24 失点2 防御率0.82 奪三振率9.82 被打率.169



 いずれも3試合に登板して、山本が3勝、佐々木と千賀も2勝無敗。現在18連勝中の山本は昨年も投手タイトルを総なめした実力ナンバーワン。ここに昨年はケガで出遅れた千賀が復活、未完の大器だった佐々木が本格的なエース街道を歩み出したことによって近年でも稀に見る怪腕が揃った。彼らが登板する時には相手チーム監督も、よほどのことがない限り勝機を見つけ出すのが難しいのが現実だ。


“投高打低”のパ・リーグ


 三振の山を築き、相手打者を手玉に取る。その影響は打者の個人成績にも表れている。セ・パの打撃成績を見ると、それは顕著である。

 打率トップはセ・リーグが大島洋平(中日)の.385に対してパ・リーグは松本剛(日本ハム)の.375と大差ないが、10位になるとセ・坂本勇人(巨人)が.289に対してパ・高部瑛斗(ロッテ)は.255とがくんと落ちる。セが22位まで2割5分あるのに、パの同順位は1割7分台。いかにパ・リーグが“投高打低”かがわかる。その要因に佐々木、山本、千賀の剛腕トリオがあることは想像できるだろう。

 佐々木のパーフェクトは特例としても、3投手が登板する日に複数安打を放つことは難しい。それどころか4打席立って無安打の方が確率は高い。そうすると彼ら以外の投手が登板日に固め打ちをしないと打率は上がってこない。パ・リーグ打者の悲鳴が聞こえてきそうだ。


 昔からパ・リーグにはパワー重視の野球が根付いてきた。西武時代の清原和博とロッテの伊良部秀輝は互いにストレート勝負を公言して決着をつけたほどだ。

 セリーグは現在でも巨人・菅野智之や広島・大瀬良大地、中日・大野雄大らの各エースも制球重視のタイプで剛腕ではない。ドラフトの明暗もあるが、伝統的にパワーピッチャーが生まれる下地がパ・リーグにはある。加えて指名打者制という打者優位の野球を克服するために、凄みのある投手が求められるのだろう。


 千賀は今オフにもメジャー挑戦が有力視されている。山本は昨年からの契約交渉でポスティングによるメジャー行きを直訴したと言われる。

 さらに、佐々木の下にも毎試合、大リーグ関係者が視察に訪れている。年齢的には、まだまだ先の話だが、あの大谷翔平以上と評価されるポテンシャルはメジャーのスカウトも放ってはおけない。

 千賀に、山本に、やがて佐々木も海を渡ったら、今度はファンが悲鳴を上げる時がやって来るかも知れない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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