実に2カ月ぶりのホールドを記録
後輩の穴を、先輩がしっかりと埋めて見せた。
8日のホークス戦。2点リードの7回からマウンドに上がったのはタイガースの岩貞祐太だった。
先頭のフレディ・ガルビスには8球粘られながらも、最後は149キロの直球で空振り三振。
代打・松田宣浩も打ち取り、二死から周東佑京はスライダーで左飛に仕留めて三者凡退に封じた。
4月13日以来、実に2カ月ぶりとなるホールドを記録。開幕は二軍で迎え、ここまで僅差の場面でほとんど出番のなかった左腕の突然の起用には理由があった。
今季、ストッパーの岩崎優につなぐ「勝利の方程式」は7回をラウル・アルカンタラ、8回を湯浅京己が担ってきた。
そんな中、湯浅が疲労を考慮されて前日に出場選手登録を抹消。首脳陣は昨年まで一軍での登板わずか3試合で実質“1年目”の22歳右腕に積極的休養を与えた形だ。
8日から交流戦の残り2カード・計6試合が組まれていたが、その後はリーグ戦再開まで4日間試合が行われない。最短の抹消期間は10日でも、セットアッパー不在を6試合にとどめられる戦略もあったのだろう。
支え合い、助け合う強固な絆
とはいえ、23試合に登板して防御率0.82。目下16試合連続無失点中の男を欠くことは、ひとつの不安材料でもあったことも間違いない。
そんな状況で早速、ホークス戦でやってきた僅差リードでの終盤。直近の3試合を零封し、好調をキープしてきた背番号17に白羽の矢が立った。
そもそも、先発から中継ぎに転向した昨年、開幕時に「7回の男」を務めたのは岩貞だった。
ただ、自己最多46試合に登板も防御率は4.66、勝ちパターンでの起用は少なくなり、不本意な形でシーズンを終えていた。
「そういう所(勝ちパターン)で投げるためにやっている」と“復権”を期した2022年。オフシーズンから精力的に取り組んだウエートトレーニングの効果がボールに現れ始め、今季の直球は自己最速の153キロを計測するまでパワーアップしている。
19試合に登板して防御率1.84と、どんな場面でもコツコツとアウトを積み重ね、満を持してこの日、7回のマウンドに帰ってきていた。
「これまで湯浅が頑張ってくれていましたし、帰ってきた時により良いチーム状態で迎えてあげたい」
昨年投手キャプテンも務めた男は、しばしの“充電期間”に入った若武者へ向けて優しい言葉を投げかけた。
思い返せば、開幕守護神を務めたカイル・ケラーが不振で降格すると岩崎優が代役を担い、浜地真澄らニューフェイスも台頭した。
マウンドでのパフォーマンスだけでなく、支え合い、助け合う強固な絆が、今のタイガースブルペン陣から垣間見える。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)