沖縄大のプロ注目右腕
夏場に向けて各カテゴリーで動きが激しくなってきたアマチュア球界。
6月6日から開催された大学野球の大舞台『第71回全日本大学野球選手権大会』は、亜細亜大の20年ぶり5回目の優勝で幕を閉じた。
このあと7月8日からはオランダで開催される『第30回 ハーレムベースボールウィーク』が控え、侍ジャパン・大学代表も始動。大舞台でのアピール合戦は続いていく。
そんな中、今回取り上げる選手は全日本大学野球選手権の出場がなく、現時点では侍ジャパンの代表候補にも名前がない大学生の選手だ。
野球ファンの間では馴染みが薄いかもしれない沖縄大のドラフト候補・仲地礼亜である。
▼ 仲地礼亜(沖縄大)
・投手
・180センチ/80キロ
・右投右打
・嘉手納高
<主な球種と球速帯>
ストレート:142~151キロ
カーブ:105~108キロ
スライダー:125~130キロ
カットボール:135~138キロ
フォーク:133~135キロ
<クイックモーションでの投球タイム>
1.29秒
昨年の大学選手権で最速151キロ
仲地の名前が一躍有名になったのは、昨年出場した全日本大学野球選手権だ。
チームは1回戦で名城大に敗れたものの、仲地は被安打6の自責点0で完投。ストレートの最速は149キロをマークした。ちなみに、この時のピッチングは『今秋のたのしみだけじゃない!全日本大学野球で輝いた「下級生」の注目投手』というコラムでも紹介している。
その後、順調に成長した右腕はこの春の沖縄地区予選でも安定したピッチングを見せ、ストレートは昨年の大学選手権を上回る最速151キロをマークしたという。
迎えた5月16日、熊本県のリブワーク藤崎台球場で行われた九州地区大学野球選手権・南部九州ブロック大会決勝トーナメント。全国の大学野球の中では比較的一般的な注目度が高くないリーグだが、この日のスタンドにはNPB全12球団、約30人のスカウトが集結。その最大のお目当てこそ、沖縄大のエース・仲地礼亜だった。
この日は、宮崎産経大打線を相手に初回からいきなり連打を浴びて2点を失い、3回にも味方のフィルダースチョイスなどから1点を追加された。
しかし、中盤以降は粘り強さを発揮。最終的には9回を4失点にまとめて10三振を奪い、チームの逆転勝利に大きく貢献した。
まず昨年と変わったのが、その体つきだ。
身長180センチ・体重80キロとそこまで大柄なわけではないが、明らかに下半身のたくましさは増している。その効果もあって、フォームの安定感と躍動感がアップした印象を受けた。
ステップの幅は少し狭いように見える一方で、左足の着地が安定しているため、体重移動のスピードも申し分ない。下半身でしっかりとリードして、楽に鋭く腕を振ることができる。
肘はスムーズに高く上がり、腕を縦に振れることから、上背以上にボールの角度も感じられる。
この日の最速は149キロと、自己最速に及ばなかったとはいえ、1回から9回まで145キロ以上をマーク。昨年の大学選手権よりもボールの勢いはアップしていた。
変化球のレベルも高い
一方、変化球も100キロ台のカーブと120キロ前後のチェンジアップで緩急をつけることができるほか、120キロ台後半のスライダー、140キロ近いカットボールも打者の手元で鋭く変化する。
この日はフォークボールだけが狙ったところに落ちず、精度とブレーキに課題が残るようにも見えた。ただ、それを割引いたとしても変化球のレベルは十分に高い。
3回までにストレートをとらえられて3失点しながらも、そこから立て直して9回を投げ抜いたところを見ても、決してスピードだけの投手ではないことがよく分かる。
投げる以外のプレーでは、クイックが少し遅いのは気になった。
それでも、フォームに関しては欠点らしい欠点がなく、まだまだこれから伸びそうな雰囲気も十分に感じられた。
チームは残念ながら2年連続の全日本大学野球選手権出場を逃したものの、仲地はこの翌々日に行われた鹿屋体育大との試合でも、中1日ながら13奪三振で2失点完投。改めて能力の高さを見せつけている。この2戦がスカウト陣への強烈なアピールとなったことは間違いないだろう。
プロ野球で活躍する沖縄出身者は数多くいるが、これまで「沖縄の大学からドラフト指名を受けた選手」はいないと言われている。仲地は歴史の扉を開くことができるのか。秋までにまた成長した姿を見せることができれば、高い順位での指名も十分に期待できそうだ。
☆記事提供:プロアマ野球研究所