安定した先発投手陣が交流戦で崩れる
広島は交流戦の低迷によって、どのような野球を目指すべきなのかを改めて突きつけられている。
交流戦開幕前まではチーム打率(.261)、得点数(202点)でリーグトップを誇り、防御率(2.93)も同2位。投打ともに安定していたことで貯金6を蓄えて交流戦に臨むことができた。
しかし、交流戦で暗転した。交流戦チーム打率(.217)、得点数(33)、防御率(4.38)など軒並み12球団ワースト。
投打ともにリーグ戦とは正反対の結果に終わり、5勝13敗で2019年から3季連続での最下位に沈んだ。
交流戦で痛感させられたのは、リーグ戦での安定した戦いぶりは強力な先発投手陣に支えられていたということである。
交流戦前までに先発したのは7人のみと12球団で最も少なく、先発防御率2.65はリーグトップだった。
先発陣が最少失点で試合をつくり続けていたからこそ、つなぐ攻撃を掲げる打線は犠打などを重用して1点ずつコツコツ積み上げるスタイルを貫くことができた。
しかし、交流戦では先発防御率が4.85と悪化。今季は3点差以上の逆転勝ちが一度もないように、点差が離れて犠打などの作戦を取ることができなくなると反抗の糸口を見出せないまま終わる試合が続いた。
大瀬良が今後のチームの命運を握る
打線が低調なことを考えても、リーグ戦再開後に広島が再浮上できるかどうかは、先発陣がどれだけ我慢できるかにかかっていると言える。
その中でも大瀬良大地が今後のチームの命運を握っていると言っても過言ではない。
大瀬良は3、4月に4勝1敗、防御率2.25の好成績で月間MVPを受賞した。一転、5月は登板3試合で1勝1敗、同5.85と急変。6月3日のオリックス戦では5回7安打4失点で3試合連続の4失点以上となって今季初の2軍再調整が決まった。
5回5失点を喫した5月27日のソフトバンク戦後に「何よりも直球に力がなくて苦しくなった」とコメントしたように、不振期間は直球に切れを欠いていた。
今季は開幕から状態の良し悪しに関わらず試合をつくる技術の高さを見せ続けていただけに、本調子でないことは明らかだった。
首脳陣は大瀬良に手探りのまま投げさせるのではなく、状態を一度リセットさせる期間を与えた。1度だけ登板を飛ばすという当初の予定通り、ウエスタン.リーグで1度も調整登板をすることなく1軍に再合流。リーグ戦再開初戦となる17日のヤクルト戦で先発することが決まった。
この一戦で好投すれば、重苦しい雰囲気を一掃することができる。反対に結果を残せなければ、交流戦の負の流れをそのままリーグ戦にも持ち込むことになるだろう。
首脳陣は、それだけ重要な一戦を大瀬良に託すことに決めた。
原点の「守り勝つ野球」に立ち戻れるか
交流戦での戦いに光明がなかったわけではない。
抑えの栗林良吏につなぐ「勝利の方程式」が少しずつ見えてきた。
防御率0.69と抜群の安定感を誇る森浦大輔が8回に固定され、7回には開幕から登板14試合連続自責0のケムナ誠が台頭。勝ち継投が流動的だったことで開幕から先発陣に負担がかかっていた中、接戦でも継投策を選択できるようになったのは大きい。また先発が本調子ではない場合には、早めの継投策への変更も可能になるだろう。
打線では3番を担っていた西川龍馬が下半身のコンディション不良で離脱中。復帰時期が見通せないだけに、リーグ戦再開後も苦しいやりくりが続くことは間違いない。
とはいえ、チームが今春から掲げ続けてきたのは先発投手を中心とした「守り勝つ野球」である。打線が苦しい今こそ、もう一度原点に立ち返りたい。
文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)