レギュラー不在の遊撃に新戦力
DeNAは、昨季の最下位から2位に大躍進。夏場には本拠地・横浜スタジアムで17連勝を達成するなど、首位ヤクルトに一時は4ゲーム差まで詰め寄った。優勝したヤクルトとは最終的に8ゲーム差があったものの、「投打ともにあと少しの上積みがあれば」と期待できる内容だったことは間違いない。
DeNAはこのオフシーズン、砂田毅樹との交換トレードで中日から京田陽太を獲得した。京田は6年目の今季こそ43試合の出場で打率.172(128-22)、3本塁打と低迷したが、昨季までは5年連続で規定打席に到達し打率も2割5分前後の選手。これまでゴールデングラブ賞の受賞はなかったが遊撃守備も堅実だ。
打率2割5分という数字は、確かに物足りなく映るかもしれない。だが、今季のDeNAは大和(65試合)、森敬斗(42試合)、柴田竜拓(36試合)と3選手がスタメン遊撃手として起用され、大和は打率.247(259-64)、柴田も打率.195(169-33)、森も打率.234(154-36)と、いずれも打率が2割5分に届いていないのが現実だ。
京田は来年で29歳とまだまだ衰える年齢ではない。そしてなにより、5年連続で規定打席に到達したことからもわかるように、大きな故障をしてこなかった選手でもある。昨季までのような成績を残すことができれば、遊撃のレギュラー争いには確実に入ってくるだろう。
石井琢、石川ら高卒4年目で飛躍
新加入の京田は新天地でのレギュラー奪取に燃えているだろうが、それは今季を戦ってきた大和、柴田、森の3人も同様だ。なかでも来季が高卒4年目となる森は勝負の年となる。
森は2019年ドラフト1位で入団し、1年目に8試合、2年目に44試合に出場。3年目の今季は春季キャンプからレギュラー奪取の期待がかかっていた。だが、2月下旬のオープン戦で肉離れを起こし、一軍に昇格したのは6月3日のことだった。そこから61試合に出場したのだから、高卒3年目ということを考えれば及第点と見ていい。
とはいえ、同学年の長岡秀樹(ヤクルト5位)や紅林弘太郎(オリックス2位)はすでに遊撃のレギュラーとして活躍しており、それこそ長岡はゴールデングラブ賞まで受賞するなど大ブレイクを果たした。ドラフト時の評価は森の方が高かったかもしれないが、3年目までの実績では完全に遅れを取ってしまった。
ますます激しくなったDeNAのレギュラー遊撃手争いだが、森としてみれば、京田はもちろん、大和や柴田との競争に真正面から挑んでいく必要がある。過去のDeNAにおける高卒内野手を振り返ると、石井琢朗(三塁)も石川雄洋(遊撃)も4年目に飛躍していた。石井は69試合(250打席)、石川は83試合(273打席)の出場で結果を残し、翌5年目に初めて規定打席に到達している。
森が非凡なものを持っているのは誰もが認めるところであり、圧倒的な肩の強さを生かした守備は大きな武器だ。あとは故障離脱することなく、打力を向上させるだけ。森もOBの名選手たちのように4年目をきっかけとし、5年目以降へ弾みをつることができるか。