プロ野球の世界に帰ってきた理由
来季から中日の一軍打撃コーチに就くOBの和田一浩さん(50)が14日、名古屋市内の球団事務所で契約。就任会見を行った。
現役引退した2015年以来、8シーズンぶりに竜のユニフォームに袖を通す。球団とは若手育成や得点力アップへの話をしたと言い、理想のコーチ像は“教えないスタイル”だという。
「理想は、教えない。こう打ちなさいよと言わない。だけどその選手に合ったバッティングに導けるような指導が理想です。理想通りにはいかなとは思っています(笑)」
現役引退してからは「プロ野球の世界には戻らないな」と思って解説・評論をしてきた。
これまでコーチを務めたのは、社会人・JR東海の臨時コーチとして。気持ちが変化した最大の理由は時間の経過。そして、立浪監督と現役時代に共有した思い出だった。
「立浪監督には現役時代、チームに溶け込めるようにしていただきました。尊敬できる方です。ドラゴンズにお世話になった気持ちも大きかったですし、覚悟を決めて(要請を)受けました」と話す。
そのうえで「それなりに現場に戻るには覚悟が必要だった。コーチの怖さ、大変さは見てきてました。また厳しい世界に戻るんだなという気持ちです」と心境を打ち明けた。
「いかにきっかけをつかんで、自分自身がつかみとるか」
中日に、立浪監督に仕えると決めたからには、どう教えるかを整理する必要があった。
そこで出たのが、教えないコーチ像。そこには、どう伝えるかはもちろん、どう選手に響くかがある。最終的には、プレーヤーが周囲の意見を納得して、かみ砕いて受け入れ、実践しなければ意味がない。
「僕自身いろんな指導者に指導は受けてきた。きっかけはたくさんつくってもらった。ただ結局、きっかけを教えてもらったんですけれども、最後は自分自身がこうしようというものを見つけないといけないんですよね。自分が理解して練習して実戦に生かさないことには身につかないと十分感じてきているので、こう打ちなさいというのであれば長続きは絶対しないと思う。いかにきっかけをつかんで、自分自身がつかみとるか。そうでないとバッターボックスの中、(投手と)1対1の勝負の中で勝っていけないので」
すでに秋季練習、秋季キャンプで指導している。どう得点するか、すでに戦いは始まった。
「点をどう取ろうか、(立浪監督は)結構いろいろな作戦を仕掛けて、試行錯誤して動かれていたので、点を取らなきゃ勝てないところはすごく見えたとは思いました。単純に速いボールを打てるバッターがいなかったじゃないか、と感じています。今の野球はピッチャーのボールのスピードが上がってきてて、ピッチャーの能力、レベルがすごく上がっている時代。バッターの能力が追いついていないんじゃないか、と感じています。ドラゴンズ打線が一番弱いところはストレート。いかにストレートを打つ技術を身につけるかは現段階での一番の課題じゃないかと思います」
現役時代は「立浪さん」、「ベンちゃん」と呼び合った間柄は、監督とコーチに変わった。
来季2年目の立浪竜。中日はリーグ最低414得点だった。最高はヤクルトの619得点。202点差をどう縮めるのか。簡単ではない作業が待っている。
覚悟を持って、厳しい世界に戻ってきた和田さん。腕を見せる機会がめぐってきた。
文=川本光憲(中日スポーツ・ドラゴンズ担当)