第40回:投手力強化へ向けキャンプイン
WBCイヤーとなる2023年は、例年とは異なる春季キャンプを迎えることになる。ヤクルトからは村上宗隆、山田哲人、中村悠平、高橋奎二の4人が侍ジャパンのメンバーに選出された。
投打の主軸は2月中旬にチームを離れ、WBCを終えてからレギュラーシーズン開幕へ向けて再び合流する。WBC決勝は日本時間3月22日朝に行われる予定で、同31日のシーズン開幕戦までの再調整の時間はわずか。文字通り難しい調整を強いられることになるが、高津臣吾監督は「ケガをさせない良い状態でグラウンドに立たせるということ」を今年も目標として掲げている。
さらに「絶対今年は守り負けたくない」と強い決意をにじませた。ディフェンス面を重視するのはもちろんだが、僅差の勝利をものにするために投手力を強化していくことが必要だ。今キャンプでも注目すべきポイントとなる。
リリーフ陣は抑えを任せられてきたスコット・マクガフが退団し、清水昇、木澤尚文、石山泰稚の間で守護神争いが激化しそうだ。他にも、中継ぎ左腕として奮闘した田口麗斗がおり、新たに加入した最速160キロ右腕のキオーニ・ケラも割って入る。
先発投手陣については昨季9勝を挙げた小川泰弘がひとり規定投球回に達したのみで、2年連続で二桁勝利達成者が現れなかった。加えてチームの先発防御率がリーグワーストの「3.84」という数字が示す通り、苦しい状態が続いている。
25歳のルーキー右腕が新たな先発候補
現状を打破するには、やはり新しい力の台頭が必要になってくる。候補のひとりとして挙げられるのが、ドラフト1位ルーキーの吉村貢司郎だ。
1月19日に25歳になった即戦力右腕は、新人合同自主トレ期間中に4度ブルペン入りを果たした。独特の「振り子投法」から投げ込む最速153キロのストレートに加え、スライダー、フォークなど変化球も豊富だ。
自主トレ最終日を終え「しっかりとキャンプに向けての準備はできたと思います。1カ月経っていろいろと慣れてきた部分もありますし、良い時間になったと思っています」と話した吉村。
初のキャンプへ向けては「新人選手としていろいろ新しく学ぶ部分があると思うので、いろんな人から吸収できるようにやっていって、その中でレベルアップをして開幕を迎えられればと思っています」と意気込みを語った。
キャンプ中は対外試合も組まれているが「実戦を想定したピッチングをやっていきたい。試合も入ってくるので、自分の持ち球をしっかり確認して、次につなげられる、日々成長というのを意識しながらやっていきたいなと思っています」と、実戦デビューが今から待ち遠しくなってきた。
21歳のエース候補、復活へ期待
吉村の他にも新たな先発候補として、新外国人投手のディロン・ピーターズやライネル・エスピナル、昨年の日本シリーズ第5戦にも先発した左腕・山下輝も今季は開幕からローテーション入りが期待される。
そして、プロ2年目に9勝を挙げ、将来のエース候補と目される奥川恭伸にも期待が集まる。昨年は右肘痛の影響でわずか1試合の登板に終わった21歳は、新たに背番号18をつけて再出発する。
高津監督は奥川について「昨年できなかった時間が無駄じゃなかったということを証明する今年だと思っていますので、今年復活することは期待しています」と、指揮官も右腕の様子を気にかけている。
今年、ヤクルトの先発陣を引っ張るのは誰か。小川、高橋、サイスニード、43歳となった石川雅規らに続く新しい力がリーグ3連覇の行方を左右する。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)