7月連載:V獲りへの道標(みちしるべ)
ペナントレースが“夏の陣“に突入した。
143試合の長丁場にあって、各チームとも前半戦にあたる71~72試合を消化。マラソンに例えれば、ちょうど折り返し点を過ぎたことになる。
優勝争いは、セ・パ共に混戦模様。パ・リーグではソフトバンクとオリックスが日替わりで首位に立つ。セ・リーグでは首位の阪神から4位の巨人までが4.5ゲーム差と、まだまだ目が離せない。(数字は5日現在、以下同じ)
過去にも、多くのドラマを生んだ終盤のデッドヒートだが、勝者と敗者の間には必ずその差を分ける要因がある。監督の手腕や、運不運だけでない勝利への鉄則とは? 現在、勝率5割超の“優勝候補”7チームに絞って問題点と課題を洗い出してみる。
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セ・リーグの上位争いが、混沌の度を深めている。
春先には、阪神とDeNAが抜け出したかに思えたが、首位・阪神から最大9ゲーム差離されていた広島が猛追、一時は最下位まで転落した巨人も戦力を建て直してAクラスどころか、頂点を狙える位置までこぎつけた。
“混セ”の要因を突き詰めると“内弁慶”にたどり着く。地元では滅法強いが、敵地に行くと弱いのが“内弁慶“たる所以、数字を見れば一目瞭然だ。
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<ホーム> <ビジター>
①阪神 24-12(2) 18-18(1)
②DeNA 24-11(2) 15-21
③広島 23-14 17-21
④巨人 19-15(1) 19-20
※左が勝利、右が敗戦数( )内は引分け
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上位を行く3チームは甲子園、横浜、広島で圧倒的な数字を残しているが、敵地に行くと貯金はゼロ。DeNAと広島に至っては大きく負け越している。
ちなみにパ・リーグに目を転じると、ソフトバンクはホームで9、ビジターでも5個の勝ち越し。オリックスも同様にホームで4、ビジターで9個の貯金を作り出している。3位のロッテだけがロードで借金5を抱えて、その分が上位二強との差になっている。
では、なぜこうした“内弁慶“現象は起こるのか? 一つの例として交流戦直後のDeNAの戦いの跡を振り返ってみる。
交流戦で優勝した直後に地元・ハマスタで迎えた阪神との直接対決。先発には今永昇太、東克樹、トレバー・バウアーのエース3本柱を立てて、思惑通りに3連勝、ついに首位を奪還した。
ところが次のビジターの広島戦に3連敗、続く中日との初戦も落として4連敗で阪神の首位返り咲きを許している。
この1週間、ホームでエースを揃えるのは決して間違えではない。地元・横浜の熱狂。興行面を考えても「地の利」を生かさない手はない。だが、この天王山の後の備えが出来ていなかった。
各チームとも、先発ローテーションは6人から7人で編成する。この中で「表ローテ」と「裏ローテ」が存在する。具体的には1週間で2カード、6試合とした場合、最初の3連戦にエース級を2人、次の3連戦にもう一人のエース級を配するのが一般的だ。1カード目を勝ち越しても、次カードで連敗を避けるための分散策である。
しかし、この時のDeNAは広島戦に大貫晋一、石田健太、ロバート・ガゼルマンとエース不在の「裏ローテ」で臨み、連敗を喫する。つまり、ホームゲームを重視して、ビジターが手薄になれば“内弁慶“は解消されない。
ちなみに昨年のセ・リーグを制したヤクルトの戦いを振り返ると、ホームで37勝34敗、ロードで43勝25敗4分けと敵地でも圧倒的な強さを見せている。さらに同年6月には8連勝を含む月間19勝4敗の爆発力も発揮した。
地元では強いが、敵地ではもろさを露呈する“内弁慶”の戦いが続くうちは大型連勝も望めない。
首位を行く阪神には、ここへ来てリードオフマン・近本光司選手の骨折離脱や西勇輝投手の2軍再調整、佐藤輝明選手の不振など不安材料も多い。4位からの逆襲を狙う巨人も絶対的守護神である大勢投手の離脱などがあり、一気に急浮上までは難しい。
どのチームも一長一短の混戦模様。鍵を握るのは敵地での戦いと見た。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)