データで振り返る!メジャー日本人選手の2023年:第10回・千賀滉大
2010年の育成ドラフトでソフトバンクから指名され、背番号「128」からプロ生活をスタートさせた千賀滉大。2年目に初の一軍マウンドを踏むと、3年目に中継ぎとして一軍に定着し、6年目に先発投手として12勝を挙げる活躍を見せた。
その後は22年まで7年連続2桁勝利を記録。日本での実働11年間で通算87勝を挙げ、22年のシーズン中に取得した海外FA権を行使し、海を渡った。
5年総額7500万ドル(当時のレートで約105億円)という大型契約をオファーしたのはナ・リーグ東地区の強豪メッツ。今年1月に30歳の誕生日を迎えたオールドルーキーは、想像を超えるパフォーマンスを見せ、チームに貢献した。
千賀の1年目を改めて振り返ると、開幕から4試合で3勝0敗と、これ以上ない好ダッシュを決めた。ところが、同時に露呈したのは日本時代から抱える制球難。開幕からの9試合中8試合で3個以上の四球を与え、5回もしくは6回で降板する試合が多かった。
結局1年目に登板した29試合のうち無四球だったのは1試合だけ。それでもシーズン前後半で見ると、与四球率は前半戦の4.72から、後半戦は3.52と改善を見せた。
与四球率の良化と連動するように、防御率も3.31から2.58と大きく良化。シーズン通算では2.98をマークした。日本人投手がメジャー1年目に規定投球回数に達し、防御率2点台で終えたのは、1995年の野茂英雄以来、史上2人目の快挙となった。
奪三振率も同年に野茂が記録した11.1に迫る10.9を記録。ウイニングショットも野茂と同じフォークボールで、まさに28年前の“トルネード旋風”を想起させる活躍だったといえるだろう。
“お化けフォーク”でメジャーの強打者を圧倒
今季はフォーク以外にもフォーシーム、カットボール、スイーパー、スライダー、カーブと6つの球種を投げ分けた千賀。ただし、フォークはあくまでもフォーシームとカットボールに次ぐ3番目に多い球種で、依存しすぎていたわけではなかった。
“お化けフォーク”としても知られる千賀の決め球は、シーズンを通して相手打者を翻弄。被打率.110(163打数18安打)に抑え込み、メジャー全体でも最もアンヒッタブルな球種の一つと言われた。
制球難を抱えていたとはいえ、シーズンを通してほぼローテーションに穴をあけることもなかった。慣れが見込める来季は、最多奪三振などの個人タイトル獲得も十分狙えるだろう。来季以降も“お化けフォーク”にてこずるメジャーの強打者たちの姿が目に浮かぶ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)