2023年シーズンのプロ野球で起きた珍プレーや珍事を振り返る「プロ野球B級ニュース事件簿2023」。第3回は「爆笑珍プレー編」と銘打ち、2023年の大賞候補とも言うべき珍プレー3題を紹介する。
本塁上でボールが突然消えるミステリーの直後、同点のホームインが認められるという思わず目が点になるような判定が下されたのが、4月8日のオリックスVS日本ハムだ。
0-1とリードされたオリックスは2回、宗佑磨の幸運な一塁内野安打をきっかけに、杉本裕太郎は死球、ゴンザレスは右前安打で、無死満塁のチャンス。世にも奇妙な物語が幕を開けたのは、次打者・若月健矢のカウント1-1からの3球目だった。
上沢直之が投じた137キロフォークがワンバウンドした直後、捕手・伏見寅威が身を挺して止めたように見えたが、直後、ボールが忽然と消えてしまう。
なんと、ボールは伏見の胸元から防具の中にスッポリ入っており、打席の若月も指差してアピールした。
こうしたケースでは、「投球が球審か捕手のマスク、または用具に挟まって止まった場合はボールデッドとなり、各走者は進塁できる」(公認野球規則5.06c7)と定められており、走者3人の進塁が認められた結果、三塁走者・宗が同点のホームを踏むことになった(記録は暴投)。
ラッキーな同点劇で勢いづいたオリックスは、なおも無死二・三塁のチャンスに若月の遊撃内野安打で2-1と逆転したが、終わってみれば、6-2で日本ハムが勝利。シーズン初白星を挙げた上沢は、2018年以来、対オリックス戦12連勝とお得意さんにしており、珍プレーひとつくらいでは、ビクともしなかったようだ。
その後、7月6日のDeNA VSヤクルト、9月1日のヤクルトVS阪神でも捕手の防具にボールが入り、それぞれ走者が進塁する場面が珍プレーとして報じられたが、珍同点劇という意味でも、印象度ではやっぱりこの試合に軍配が上がるだろう。
ダブル勘違いで反撃モードに水を差すコント顔負けのプレーが見られたのが、6月17日のDeNA VSロッテだ。
0-6と一方的にリードされたロッテは5回、先頭の佐藤都志也が中越え二塁打、代打・大下誠一郎も右前安打で続き、無死一・三塁と、遅まきながら反撃の狼煙を上げたかに見えた。
ところが、藤原恭大の見逃し三振で一死後、期待のドラフト2位ルーキー・友杉篤輝は3ボールから大貫晋一の4球目、内角高め142キロ直球を見逃し。際どいコースではあったが、名幸一明球審がストライクをコールしたにもかかわらず、四球になったと“セルフジャッジ”して一塁に向かいはじめた。
すると、一塁走者の大下まで友杉の動作につられて二塁へ向かおうとするではないか。当然インプレー中なので、大貫が一塁に送球してタッチアウト。大下は「えっ、四球じゃなかったの?」と言いたげに呆然と立ち尽くした。
このタッチプレーの間に三塁走者・佐藤が判断良く生還し、1点を返したものの、友杉は遊ゴロに倒れ、結局1点止まり。反撃モードが一気にしぼんでしまったロッテは、悪い流れを変えられないまま、1-10と大敗した。
本塁打性の打球がもうひと伸び足りず、二塁打になるケースはよくあるが、本来なら二塁打になるはずの打球が本塁打に早変わりする珍プレーが見られたのが、7月8日にエスコンフィールドで行われた日本ハムVSロッテだ。
0-1の1回裏一死、日本ハムは2番・清宮幸太郎が美馬学の初球をファウルしたあと、2球目、外角低め145キロ直球を一振すると、高々と上がった打球は中堅フェンスめがけて飛んで行った。だが、本塁打にはもうひと伸び足りなかった。
ところが、藤原恭大がダイレクトキャッチを試みて必死にジャンプすると、なんと、グラブに当たって跳ね返ったボールは、そのままスタンドに入ってしまった。
グラブに当たらなければ二塁打になっていた可能性が強く、まさかのアシスト本塁打に、打った清宮も素直に喜べないまま、複雑な表情で同点のホームを踏んだ。試合後は「向こうも精一杯のプレーなので、今回に関してはちょっとラッキーだったかな」と高校時代にU18でともにプレーした藤原を気遣っていた。
さらにツイッター(現X)でも「ホームランアシスト」がトレンド入り。「こんなん初めて見たわ」「藤原選手惜しかったな……まさかのアシスト」など、驚きの声が相次いだ。
アシスト本塁打は、1987年にヤクルトのボブ・ホーナー(巨人・松本匡史がアシスト)、1991年に近鉄・鈴木貴久(ダイエー・岸川勝也がアシスト)も記録。オールドファンにとっては「久々に見た」珍プレーも、リアルタイムで知らない世代には、新鮮に映ったようだ。
ちなみに翌9日もエスコンフィールドで同一カードが行われ、試合前に藤原が清宮と談笑中、親指と人差し指で輪を作るハンドサインを見せ、“アシスト料”を要求する姿も見られた。これに対し、清宮は「今日も(アシストを)よろしく」と笑顔でツッコミ返していた。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
ボールが忽然と消えた
本塁上でボールが突然消えるミステリーの直後、同点のホームインが認められるという思わず目が点になるような判定が下されたのが、4月8日のオリックスVS日本ハムだ。
0-1とリードされたオリックスは2回、宗佑磨の幸運な一塁内野安打をきっかけに、杉本裕太郎は死球、ゴンザレスは右前安打で、無死満塁のチャンス。世にも奇妙な物語が幕を開けたのは、次打者・若月健矢のカウント1-1からの3球目だった。
上沢直之が投じた137キロフォークがワンバウンドした直後、捕手・伏見寅威が身を挺して止めたように見えたが、直後、ボールが忽然と消えてしまう。
なんと、ボールは伏見の胸元から防具の中にスッポリ入っており、打席の若月も指差してアピールした。
こうしたケースでは、「投球が球審か捕手のマスク、または用具に挟まって止まった場合はボールデッドとなり、各走者は進塁できる」(公認野球規則5.06c7)と定められており、走者3人の進塁が認められた結果、三塁走者・宗が同点のホームを踏むことになった(記録は暴投)。
ラッキーな同点劇で勢いづいたオリックスは、なおも無死二・三塁のチャンスに若月の遊撃内野安打で2-1と逆転したが、終わってみれば、6-2で日本ハムが勝利。シーズン初白星を挙げた上沢は、2018年以来、対オリックス戦12連勝とお得意さんにしており、珍プレーひとつくらいでは、ビクともしなかったようだ。
その後、7月6日のDeNA VSヤクルト、9月1日のヤクルトVS阪神でも捕手の防具にボールが入り、それぞれ走者が進塁する場面が珍プレーとして報じられたが、珍同点劇という意味でも、印象度ではやっぱりこの試合に軍配が上がるだろう。
“セルフジャッジ”につられて痛恨のミス
ダブル勘違いで反撃モードに水を差すコント顔負けのプレーが見られたのが、6月17日のDeNA VSロッテだ。
0-6と一方的にリードされたロッテは5回、先頭の佐藤都志也が中越え二塁打、代打・大下誠一郎も右前安打で続き、無死一・三塁と、遅まきながら反撃の狼煙を上げたかに見えた。
ところが、藤原恭大の見逃し三振で一死後、期待のドラフト2位ルーキー・友杉篤輝は3ボールから大貫晋一の4球目、内角高め142キロ直球を見逃し。際どいコースではあったが、名幸一明球審がストライクをコールしたにもかかわらず、四球になったと“セルフジャッジ”して一塁に向かいはじめた。
すると、一塁走者の大下まで友杉の動作につられて二塁へ向かおうとするではないか。当然インプレー中なので、大貫が一塁に送球してタッチアウト。大下は「えっ、四球じゃなかったの?」と言いたげに呆然と立ち尽くした。
このタッチプレーの間に三塁走者・佐藤が判断良く生還し、1点を返したものの、友杉は遊ゴロに倒れ、結局1点止まり。反撃モードが一気にしぼんでしまったロッテは、悪い流れを変えられないまま、1-10と大敗した。
まさかの「ホームランアシスト」
本塁打性の打球がもうひと伸び足りず、二塁打になるケースはよくあるが、本来なら二塁打になるはずの打球が本塁打に早変わりする珍プレーが見られたのが、7月8日にエスコンフィールドで行われた日本ハムVSロッテだ。
0-1の1回裏一死、日本ハムは2番・清宮幸太郎が美馬学の初球をファウルしたあと、2球目、外角低め145キロ直球を一振すると、高々と上がった打球は中堅フェンスめがけて飛んで行った。だが、本塁打にはもうひと伸び足りなかった。
ところが、藤原恭大がダイレクトキャッチを試みて必死にジャンプすると、なんと、グラブに当たって跳ね返ったボールは、そのままスタンドに入ってしまった。
グラブに当たらなければ二塁打になっていた可能性が強く、まさかのアシスト本塁打に、打った清宮も素直に喜べないまま、複雑な表情で同点のホームを踏んだ。試合後は「向こうも精一杯のプレーなので、今回に関してはちょっとラッキーだったかな」と高校時代にU18でともにプレーした藤原を気遣っていた。
さらにツイッター(現X)でも「ホームランアシスト」がトレンド入り。「こんなん初めて見たわ」「藤原選手惜しかったな……まさかのアシスト」など、驚きの声が相次いだ。
アシスト本塁打は、1987年にヤクルトのボブ・ホーナー(巨人・松本匡史がアシスト)、1991年に近鉄・鈴木貴久(ダイエー・岸川勝也がアシスト)も記録。オールドファンにとっては「久々に見た」珍プレーも、リアルタイムで知らない世代には、新鮮に映ったようだ。
ちなみに翌9日もエスコンフィールドで同一カードが行われ、試合前に藤原が清宮と談笑中、親指と人差し指で輪を作るハンドサインを見せ、“アシスト料”を要求する姿も見られた。これに対し、清宮は「今日も(アシストを)よろしく」と笑顔でツッコミ返していた。
文=久保田龍雄(くぼた・たつお)