大学、社会人で2度の指名漏れを味わう
10月24日に行われたドラフト会議での最大のサプライズは、社会人3年目の三菱重工West・竹田祐投手(25)がDeNAから1位指名されたことだった。
明治大4年時、ドラフト解禁年だった昨秋と過去に2度指名漏れを味わった。そこから1位指名という大逆転を起こした。
履正社(大阪)時代の3年春に選抜準優勝を飾るなど知名度は高く、NPBスカウトも長く注目し続けてきた好右腕だった。
しかし昨年は、7月の都市対抗1回戦・JR東日本戦で3回2/3、5失点で降板するなど不振に陥った。
当時を「都市対抗予選で全てが分からなくなってしまった」と振り返る。
その都市対抗予選は登板4試合(先発3)で防御率4.98(21回2/3、自責12)。夏以降も不調から脱却できないまま、指名漏れにつながった。
原因は分かっていた。「“球速を出してやろう”といらないことを考えて力みながら投げていました」。下半身の力を利用できず、上半身主導の投げ方になっていたのだ。
元々練習熱心だが、昨冬は「しっかりと練習してきた」と言い切れるまでに追い込んだ。
時間を割いたのは走り込みやウエートトレ。いかに下半身の力を投球につなげるかを考え、土台づくりから見直した。
「今年は絶対に近畿の第1代表として都市対抗に行くと目標を掲げ、冬の間に細かい筋肉まで鍛えたり、相当な練習を積んできました。下半身を全く使えていない投げ方だったので、その課題を潰そうと取り組み、春から成果として出たのだと思います」
冬が明けて実戦が始まると、目に見えて変化が現れた。力を入れずとも直球は伸び、25歳を迎えた今年に自己最速を2キロ更新する153キロを計測した。
昨年の「上体投げ」のような投球フォームは、下半身の力が指先にまで伝わるような力みの少ない形に改善されたのだ。
「試合は力が入るので、30%ぐらいの力感で投げています。今年は力を抜いて制球を重視したら、勝手に球速も出てくるようになりました」
DeNAが惚れ込んだ投球術
関西圏を担当するあるスカウトは「去年が悪すぎただけだから」と社会人3年目の今年も追いかけ続けていた。
今年の都市対抗では王子との1回戦で3失点完投勝利。次第に各球団のスカウトの視線も熱を帯びるようになった。
履正社、明大、三菱重工Westと名門でエースを張り続けてきた。その経験値は即戦力としての評価に直結し、サプライズと言えるドラフト1位指名につながった。
社会人野球最後の公式戦となった今月の日本選手権大会では、日本製鉄鹿島との1回戦で6回2失点に終わり、初戦敗退となった。
それでも本調子とは言えない中で試合をつくった粘りこそが、DeNAが惚れ込んだ投球術だった。
「この1年間取り組んできたことは、全ていい方向につながったと思います。指名漏れの経験が今年1年、頑張る原動力となった。1年目から2桁勝利できるように、オフシーズンも頑張りたいです」
1位指名がサプライズではなく妥当な決断だったことを示すプロ野球人生が幕を開ける。
文=河合洋介(スポーツニッポン・アマチュア野球担当)