◆ 貯金「1」まずまずのスタートも…?
開幕から17試合を終えて9勝8敗の貯金1。現在リーグ3位につけている阪神。成績・順位自体は悪くはないものの、開幕から5割を行ったり来たりで突き抜けることができず、チーム状態は良いとは言えない。
そのなかでも勝ち越すことができているのは、投手陣の踏ん張りによるところが大きい。チーム防御率2.96はDeNAの2.58に次ぐリーグ2位。特に先発陣はクオリティ・スタート(6イニング以上を投げて自責点3以内)をリーグ最多の11度も記録している。大黒柱のメッセンジャーを中心に、秋山拓巳に加えて小野泰己など、若い投手の台頭もあり、開幕からの安定感は両リーグでも屈指だ。
一方、打撃面は大きな課題。1試合の平均得点3.18は両リーグで見てもワーストの数字であり、チーム本塁打9も中日と並ぶ最少。期待の大きかった新助っ人・ロサリオの不振もあって、得点力不足にあえいでいる。
◆ 「機動力野球」はどこへ…
長打力が足りないとなれば、本来なら機動力でカバーして得点力を補いたいところ。しかし、今年はそれも全く機能していない。
期待の高卒4年目・植田海や“桐生祥秀に勝った男”としても話題になったルーキーの島田海吏が開幕一軍入りを果たし、走れるチームへの変貌が期待された開幕前だったが、ここまでのチーム盗塁数はまさかの「1」。それどころか、そもそも企図した盗塁自体が2回だけ(成功1:失敗1)なのだ。
ちなみに、リーグ最多はDeNAの23回(成功18:失敗5)で、阪神の次に少ない巨人でも12回(成功10:失敗2)の企図がある。「機動力野球は諦めたのか…」とすら思えてしまうような状況だ。
長い日本のプロ野球史上、最もシーズン盗塁(成功)数が少なかったのは2004年の巨人で、その数は25個だった。ただし、その年の巨人打線といえば“史上最強打線”とも言われ、シーズン記録の259本塁打を放った。当時の巨人は「走る必要がない」チームだったのだ。
今季の阪神打線はというと、長打力の面で到底2004年の巨人には及ばない。やはりある程度の機動力、そして何より走る意識を持たないと得点力の向上は見込めないだろう。
オリックス時代の2016年に盗塁王に輝いている糸井嘉男や、昨季は16盗塁をマークした上本博紀など、走れる選手はレギュラーにもいる。さらに、ファームはリーグで断トツの盗塁企図数と盗塁成功数を誇るなど、二軍では「走る意識」を植え付けさせている。
金本監督も就任以来、「機動力野球」の重要性は何度となく説いてきた。しかし、今季に限っては機動力に関する言及も少ないように感じる。このまま機動力野球を捨てるようなことがあれば、阪神の得点力向上は望めない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)