◆ 完全復活の予兆
5月16日に東京ドームで行われた日本ハムと西武の一戦。わずか1点の援護を守る力投を見せてきた日本ハムの上沢は、そのまま9回のマウンドへ。源田壮亮と浅村栄斗に連打を浴びてたちまちピンチを迎えるも、ベンチは背番号15にすべてを託した。
この時点で投球数は120を超えていたが、最後の力を振り絞って4番・山川穂高を空振り三振。つづく森友哉も二ゴロに斬ると、外崎修汰は低めの変化球を打たせて投ゴロ。力ない打球が上沢のグラブに収まった瞬間、場内は安堵の大歓声に包まれ、大事に一塁へと送球して27個目のアウトを取ると、右腕は笑顔で女房役の清水優心と抱き合った。
自身4年ぶりとなる完封勝利。その間には選手生命を左右する右ヒジの故障と手術があり、復活を果たした昨年も4勝9敗と思い描いた姿にはなかなか戻れず。それでも、オフには結婚という人生の大きなターニングポイントを迎え、背番号も「15」に変更。心機一転、完全復活を期した2018年…男はここまでチームトップタイの4勝を挙げ、リーグトップの防御率1.39をマークしている。
◆ 「1-0完封」は大谷以来
試合後、「球数は気になっていたけど、行けるところまでいこうと思っていた。勝っても負けても、みんなが納得するかたちで」と語った栗山英樹監督。ピンチになってもベンチが一切バタつく仕草を見せなかったのは、上沢の気持ちをより前向きにさせるファインプレーだった。
これが今季チーム一番乗りの完封勝利。それも「1-0」での完封勝利と言うと、2016年の9月28日以来のこと。そう、あの大谷翔平(現エンゼルス)が高校の先輩・菊池雄星と投げ合い、被安打1の15奪三振という圧巻の内容で完封勝利を挙げ、リーグ制覇を決めた伝説の一戦である。
その大谷が世界へと羽ばたいていった年。チームにとっては大きな痛手ではあるが、大きな故障と苦しみから帰ってきた上沢が大谷以来の快投を演じ、その穴を埋めようと奮闘している。
16日の完封劇で、防御率は1.39まで良化。まだ気は早いが、一気にリーグトップへと躍り出た。思えば大谷も、その前に大黒柱としてチームを支えたダルビッシュ有も、世界へと羽ばたいていった日本ハムのスーパーエースはいずれも最優秀防御率のタイトルを手中に収めていた。
偉大な2人のエースの系譜を継いで、日本ハムの新エースになれるか。復活を遂げた上沢直之の今後の投球に期待が高まる。