オリックスの宗佑磨選手が、“分身の術”で自分を客観視することで打撃の好不調の波を少なくしている。
「自分を客観的に見るということですね。身体とは違うところに(本来の)僕がいて、その身体を使って動かしているという感じです」。宗が、静かに口を開いた。
宗は、横浜隼人高から2014年ドラフト2位でオリックスに入団。ボールに対する反応の高さと安定した送球で、3年連続してゴールデングラブ賞を獲得したほか、勝負強い打撃でリーグ3連覇、日本一に貢献した。
しかし、ここ2年は打撃不振に苦しみ、出場100試合を切ってしまった。「結果を欲しがっていましたね。単なる結果であって、それまでの自分がしっかりしていないと結果もついてこない。そっちを考えた方がいいと思いました」という宗が掲げた今季のテーマは「言い訳をしない」だった。
「人って、何かをちょっと言い訳して生きているんです。(誰しも)しょうがないと思うことがあると思うんですが、それってできなかったことに対しての自分自身のショックを減らすための言い訳になっていることが多いんです。それに本人も気付いていない。多分、気付いてはいるんですよ、でもそれを覆い隠すかのように『いや、でもこうだったから』みたいな理由をつけてね」と語ったのは開幕前。
そして今、宗は「二人の自分」とプレーを続けている。プレーをするのは別の自分で、それを離れた場所から見ている自分がいるという。「動いているのは別の自分なので、打って結果を出すのも、出せないのも、(別の)身体だけ。本来の僕は違うところにいるので、落ち込むということがないんです。次をどうするか、みたいな感じです」。思考と身体とを切り離し、俯瞰することで見えてくる世界がある。「別の自分を本当の自分だと思うと、のめり込んでわからなくなってしまうんです」。分身を作ったことで自分を客観視できるようになった。
5月の打撃は好不調が顕著だった。前半は31打数3安打、打率.129と低迷したが、後半は49打数16安打、打率.327。5月15日のロッテ戦(ZOZOマリン)から、ストレートを弾くことに専念した。「打てない時って、ストレートを弾けなくて、他のボールも全部追いかけてしまって打ち取られるパターンが多くなるんです。まずストレートを前に飛ばすところからスタートしました」と宗。別の自分を客観視する冷静な自分がいるからこそできる、不振からの脱出法だ。
打ちたいという「欲」にも自然体で臨む。「(欲は)出るもんなんです。出ても落ち込む必要はないです。打っても、打たなくても、次に何ができるかということを探してやっているんで、落ち込んでいる暇はないというか。そうは言いつつ、落ち込むときもあるのですが、そこじゃないと思います」
「やっぱり結果を欲しがっちゃうんですが、そこに陥ってしまうと必要なことが得られません。動かせるのは身体だけなので、そこだけに集中します」。分身と“二人三脚”で相手投手と対峙する。
取材・文=北野正樹