内海哲也(C)KYODO NEWS IMAGES

◆ かつてのエースがプロテクト漏れ

 西武は20日、巨人へFA移籍した炭谷銀仁朗の人的補償として、内海哲也の獲得に合意したことを発表した。

 誰もが予想していなかったであろう驚きの指名だった。内海と言えばかつての巨人のエースであり、通算133勝の実績を誇る左腕。いくら近年は全盛期ほどの働きができていないとはいえ、経験豊富なベテランがチームに加わるプラス要素は計り知れない。

 ましてや、西武は今オフにエースの菊池雄星がメジャー挑戦に向けて旅立とうとしているところ。単純にエース左腕が抜けるというタイミングで、実績豊富で即戦力となり得る内海の名前がリストにあれば、魅力的に映るのは当然のことだろう。

◆ 人的補償選手をFAで流出…

 大きな衝撃をもって伝えられたニュースだが、移籍に関して“訓練されすぎている”西武ファンからは意外な声が挙がっている。内海は「すぐに巨人に戻るのでは…」というものだ。

 その“トラウマ”の元になっているのが、2015年のこと。脇谷亮太のFA移籍である。

 西武は2013年のオフに片岡治大が巨人に移籍した際、その人的補償として脇谷亮太を獲得。巨人ではスーパーサブ的な役割がメインだった脇谷だが、西武で1年目から96試合に出場。2年目には118試合と出場機会を増やし、新天地で地位を築きつつあった。

 ところが、脇谷は2015年のオフにFA権の行使を宣言。かつての盟友であり、兄貴分として慕っていた高橋由伸氏の監督就任に合わせ、古巣への復帰を決断する。人的補償で移籍した選手のFA移籍という初のケース、それも古巣への復帰。加えて脇谷が補償を必要としないCランクの選手だったため、西武ファンは大きな傷を負った。

 そして今回。内海と言えば、巨人一筋15年でこれまでキャリアを歩んできた男であり、過去には選手会長を務めたことも。後輩から慕われる兄貴分的な存在であり、チーム愛は強い。

 さらに、巨人の石井一夫・代表取締役社長兼編成本部長が「今後は埼玉西武ライオンズで、これまで通り子どもたちのあこがれの的として活躍し続けていただき、いつの日か、再びジャイアンツに戻ってきてくれることを期待しています」とコメント。もちろん、現役中に限った話ではないにしろ、FA権を保有している男に対して『いつでも帰ってこい』というメッセージを残しているのだ。

◆ 冷静すぎる?西武ファン

 しかし、西武も同じ過ちは繰り返さない。

 内海は今オフ、巨人と推定年俸1億円で契約を更改。これを西武が引き継ぐとなると、菊池や浅村栄斗、炭谷銀仁朗といった主力が抜けた西武のなかで、内海の年俸は上位10名以内に入ることが確実となる。これで来オフに内海がすぐにFAでの巨人復帰を希望した場合、西武はまたも巨人から金銭、もしくは金銭プラス人的補償を得ることができるのだ。

 もちろん、内海が新天地で復活を果たし、西武で欠かせない存在になるというのがファンにとっての第一希望だろう。たが、これまでに何度も移籍に関して心を痛めてきた西武ファンは、“その時”が来たときの気構えも忘れない。

 今回で言えば、「内海がもし巨人に帰ることになったとしても…」の想定。補強が急務の先発陣に実績のある1枚の候補が加わるうえ、すぐにチームを離れるとなっても今度は補償が得られる。結果的に期間限定の“レンタル移籍”のような形で終わることになったとしても、何も残らないという可能性は低い。前回の悪夢を考えれば、傷は浅く済むというわけだ。

 2018年も残りわずかというところで飛び込んだ衝撃の移籍。内海は西武でどんな活躍を見せるのか。そして、この後どんなキャリアを歩んでいくのか。ベテラン左腕の今後から目が離せない。

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