西武・平沢大河 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第18回

 パリーグのペナントレースが混沌としている。

 5月3日時点で、首位のオリックスから最下位の楽天、ロッテまでが4.5ゲーム差。さらに3位の西武から最下位までは、わずかに1ゲーム差に4チームがしのぎを削る大混戦だ。(数字は3日現在、以下同じ)

 開幕前はソフトバンクと日本ハムが「二強」と目された。

 だが、いざふたを開けてみると、ソフトバンクは昨年のMVP男、リバン・モイネロ投手がWBCの影響から出遅れ、守護神の杉山一樹投手は自らの不甲斐ない投球に腹を立て左手の骨折で盤石の投手陣にほころびが出た。

 対する日本ハムもエースの伊藤大海投手が、こちらもWBCから戻っても調子が上がらず、ソフトバンクから出戻った有原航平投手が、4月を1勝4敗の絶不調で二軍再調整を命じられている。

 首位を行くオリックスも大黒柱の宮城大弥投手を左肘損傷で欠き、長期離脱の状況だけに安閑とはしていられない。

 各チームとも誤算だらけの中で嬉しい誤算もある。代表格が本稿で取り上げる西武の平沢大河選手だ。

 3日現在、打率.373で、得点圏打率は.462。さらに出塁率と長打率を足したOPSも.947と抜群の数字を残している。

 24年オフの現役ドラフトでロッテから移籍した。

 仙台育英高校時代は甲子園でも活躍してドラフト1位で入団するが、伸び悩み選手生命の曲がり角に差し掛かっていた。心機一転を期した西武の1年目はぎっくり腰で出遅れ一軍では17打数1安打のみじめな数字だけが残った。

 背水の陣で臨んだ今季も開幕は二軍スタート。それでも腐らずにバットを振り続けた。

 1週間遅れの4月4日に待望の一軍昇格を果たすと、徐々に結果を残して出番を増やしていった。今では勝負強い六番打者としてレギュラーの一角をつかみかかっている。

 4月29日の日本ハム戦では移籍後初の決勝打を放ち、チームのAクラス浮上に貢献。直近の日本ハム、ロッテ戦の6試合だけを見ると22打数8安打の打率.364だから勢いは衰えていない。

 故障の多い体質改善に努める一方で、シャープに、コンパクトに振り切る打撃習得に励んできた。「フライやゴロを少なくする」ために、バットのヘッドを効かせた鋭い打球を打ち抜く。

 今季の西武は、チームの活性化を図り、大胆な補強に打って出た。

 DeNAから桑原将志、日本ハムから石井一成選手をFAで獲得、台湾の至宝・林安可が入団。ドラフトでも即戦力として小島大河や岩城颯空選手らが加わりレギュラー争いは激しさを増した。そんな競争を勝ち抜いて首脳陣の信頼を勝ち得ているのが平沢の現在地だ。

 現役ドラフトが開催されたのは22年から。出場機会の恵まれない中堅以下の選手を対象に活性化を目指した。

 成功例の筆頭格はDeNAの控えから中日不動の四番に成長した細川成也選手、ソフトバンクでは二軍暮らしの長かった大竹耕太郎投手が今では阪神のローテーションを守っている。現在は故障で二軍に回っているが、日本ハムの水谷舜選手もソフトバンクから移籍して結果を残した例である。

 直近の現役ドラフトでは、今季阪神からロッテ入りした井上広大選手が先月29日の楽天戦で移籍1号を放っている。井上も履正社高校時代から大砲として期待の逸材として注目された7年目。環境が変わることで花を咲かせる選手も少なくない。

 平沢にはレギュラー確保に大きな問題もある。開幕から主に守ってきたのは一塁だが、主砲のタイラー・ネビンが故障から復帰。三塁には渡部聖弥選手を外野からコンバートしたばかり。二塁と遊撃には源田壮亮、滝沢夏央の守備名人がいる。つまり、平沢にとって現在の位置を死守するには打って、打って、打ちまくる事が求められる。

「この調子がいつまで続くかな?」と半信半疑だった西口文也監督の平沢に対するジョークが現実のものとなって半月以上が経つ。今やAクラスからさらに上位をうかがうチームのキーマンにまでなって来た。

 プロ11年目を迎える“大河ドラマ”は今、佳境を迎えようとしている。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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この記事を書いたのは

荒川和夫

1975年スポーツニッポン新聞社入社。野球担当として巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)等を歴任。その後運動部長、編集局長、広告局長等を経て現在はスポーツライターとして活動中

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