有言実行の活躍
「1試合でも多く、チームの勝利に貢献できるようなプレーをしたいと思います」。
エキシビションマッチ期間の8月9日に行ったオンライン取材でこのように決意を述べたロッテの加藤匠馬は、その言葉通り、後半戦はスタメンマスクを被った試合12勝3敗4分としっかりとチームの勝利に貢献している。
6月15日に加藤翔平とのトレードで中日から加入した加藤は、交流戦明け初戦の6月18日にさっそく一軍登録されると、翌19日の西武戦、8回から守備につき移籍後初出場。前半戦は移籍直後ということもあり、1度もスタメンマスクはなかったが、出場8試合・11イニング・5失点・3自責点、防御率にすると2.45だった。
後半戦に入ってからはスタメンマスクで出場する機会が増え、投手陣を引っ張り、9月5日の日本ハム戦から加藤がスタメンマスクを被った試合は現在引き分けを挟んで5連勝中だ。勝っている試合ということもあり、引き分けた9月9日のオリックス戦を除いて全て9回までマスクを被った。
9月10日からの楽天との3連戦では27イニングで許した失点はわずかに5。初戦の佐々木朗希をプロ入り後自己最長となる8回を投げさせるリードで、翌11日の小島和哉はプロ入り後自身初の完投勝利に導いた。
昨季は楽天に8勝15敗1分と大きく負け越したが、今季はここまで14勝6敗1分。ちなみに加藤がスタメンマスクを被った楽天戦は、6勝0敗と1度も負けていない。
加藤がマスクを被ると先発防御率は3.33
ロッテは“勝利の方程式”が確立されているが、先発陣がやや不安定だ。そんな中で、加藤がスタメンマスクを被った先週の5試合は、12日の楽天戦で5回を1失点で降板した河村説人を除き、8日オリックス戦の二木康太(7回・1自責点)、9日オリックス戦の石川歩(6回・1自責点)、10日楽天戦の佐々木朗希(8回・2自責点)、11日楽天戦の小島和哉(9回1自責点)がQSを達成。
先週登板がなかった14日のソフトバンク戦で予告先発となっているロメロも、先発した3試合全てマスクを被り、1勝0敗、防御率1.56。移籍後初登板となった8月22日のソフトバンク戦は5回途中2失点だったが、8月29日の楽天戦は6回無失点、9月5日の日本ハム戦は7回を1失点にまとめた。
加藤が先発マスクを被ったときの先発投手のチーム防御率は3.33。今季ここまでのチーム先発防御率が4.32ということを考えると、先発投手が安定してきたひとつに加藤のリードも挙げられそうだ。
加藤は8月に行ったオンライン取材で、先発マスクを被るときには「長い目で見られる。(終盤で出場するときと先発出場で)気持ち的な変化はないですが、やることがあるというくらいですかね」と語っている。
守護神・益田を好リード
抑えの益田直也との相性が良く、登板10試合で許した安打はわずかに2本で失点が1度もない。加藤がマスクを被ったときの直近3試合は、走者を出すことなく、1イニングをピシャッと3人で抑えている。
加藤が入団する前は20球以上投げる登板もあった益田だが、加藤とバッテリーを組んだ試合は1イニングの最多は16球。10球以内で終えた登板は3試合ある。夏場にかけて毎年調子を上げる傾向にある益田ではあるが、加藤が良さを引き出しているともいえそうだ。
課題は打撃
加藤がマスクを被ったときの投手陣の防御率が2.88と好リードしているが、課題点もある。打率.133の打撃だ。
マリーンズは後半戦に入ってから試合中盤から終盤にかけて得点を挙げることが多く、リードを許している試合では打撃に課題のある加藤は100%の確率で代打が送られている。勝っている展開や投手戦の試合では9回まで試合に出場しており、序盤から勝っている展開に持ち込めば良いと言われればそれまでだが、打撃面でもう少し確実性をあげていきたい。
1974年以来勝率1位でのリーグ制覇を目指すマリーンズにとって、欠かせない存在になってきている。田村龍弘をはじめとする捕手陣と切磋琢磨し、数多くの勝利をもたらしたい。
文=岩下雄太