打線を支える
ロッテの中村奨吾は自身初のベストナイン、3年ぶり2度目となるゴールデングラブ賞を受賞と、攻守に躍動の1年となった。
井口資仁監督が就任した2018年にレギュラーに定着した中村だったが、昨季は打率.249と低調な成績に終わった。今季に向けて、「(中村)奨吾にはチームの先頭に立って、存在感を見せて欲しいと思っています。責任感も強いし、いつもチームの事を最優先に考える自覚もあるので彼ならチームを引っ張ることが出来ると思っています」(井口資仁監督)と、チームキャプテンに就任。
チームキャプテンとなった中村は、主に3番打者として、1番を打つ荻野貴司とともにシーズン通して打線を支えた。開幕直後は2試合連続で3安打以上放つ好調ぶりで、打率は一時リーグトップに浮上。4月を終えた時点で打率.327、5月も月間打率.315と、リーグトップの得点力を誇った打線を引っ張った。
6月に月間打率.229と落ち込むも、7月と8月の打率は.344と再び上昇し、6月24日のソフトバンク戦から9月1日の西武戦にかけて30試合連続で出塁した。
9月に入り打撃の状態が落ち、普段使用しているオレンジのバットから黒茶のバットを使用するなど試行錯誤する時期もあったが、安打が出なくても四球を選んだり、犠打、犠飛と最低限の仕事を果たした。今季の中村は、10月27日の楽天戦から10月30日の日本ハム戦にかけて3試合連続で出塁がなかったというのが最長だった。
チャンスメイクするだけでなく、勝負所で価値ある一打も多かった。5月22日の楽天戦では1-1の8回に勝ち越しのソロを放てば、7月3日の楽天戦では2-3の8回に第6号逆転2ラン、8月24日の日本ハム戦では0-3の9回に2点を返しなお二死一、二塁の場面で同点の適時打、8月27日の楽天戦で1-1の8回に勝ち越しの第7号ソロを放った。
18年以来のGG賞
守ってもゴールデングラブ賞を受賞し、華麗な守備でチームのピンチを何度も救った。
4月18日のオリックス戦では、太田椋が放った高いバウンドの打球に対し前に突っ込み、うまくあわせてキャッチし一塁へ送球しアウトにした。5月9日のオリックス戦では杉本裕太郎が放ったセンター前へ抜けそうなゴロを中村が逆シングルでキャッチし、二塁ベースカバーに入ったショートへ送り、4-6-3の併殺を完成。
一、二塁間の難しい打球を何度も好捕にした。6月8日のヤクルト戦では青木宣親、7月10日の日本ハム戦の石井一成、8月31日の西武戦の栗山巧が放った一、二塁間の当たりをダイビングキャッチし、素早く一塁へ送球し一塁でアウトにした。
セカンドベース付近に飛んだ打球に対しても、9月24日の西武戦、森友哉が放ったセカンドベース付近の打球を逆シングルでキャッチし、そのまま一塁へジャンピングスローでアウトにするスーパープレー。
中村はゴールデングラブ賞を受賞した際、球団を通じて「アドバイスをいただいた皆様、手伝ってくださったスタッフ、そして信頼しあいながらお互いカバーしながらプレーをさせてもらったチームメート。皆様に感謝です。本当に一人でとれた賞ではありません。周りの皆様に感謝しかありません」と感謝の言葉を述べた。
好走塁を連発
走塁面での貢献度も高かった。4月2日の日本ハム戦では8回に山口航輝のセンターへのフライで二塁から三塁へタッチアップ。14-0と大量にリードする展開だったが、気を緩めることなく1つ先の塁を貪欲に狙い続けた。
4月24日のソフトバンク戦では角中のセンターへの犠飛で、二塁走者だった中村もセンターから中継のショートへの送球が乱れた隙にホームインする好走塁。
交流戦では5月28日の広島戦、5月30日の広島戦で、投手の投球モーションを完全に盗み盗塁を決めれば、6月9日のヤクルト戦ではセンター前に安打を放ち、センターが一塁走者のマーティンを刺そうと三塁に送球している間に二塁へ進塁する好判断。
8月24日の日本ハム戦では、センターとセカンドの間にフライを放ち、センターがダイビングキャッチを試みるも、打球が転々している間に二塁を陥れた。
2月の対外試合から出場
攻撃、守備、走塁で高いプレーを披露し続け、なおかつ4年連続で全試合出場を果たした。
中村は対外試合が始まった2月13日の楽天戦に『5番・セカンド』でスタメン出場を果たすと、2月の練習試合は全10試合に出場。オープン戦も13試合中12試合に出場し、東京五輪期間中に行われたエキシビションマッチも11試合中10試合に出場した。もちろんCSは日本シリーズ出場をかけての戦いのため全試合フルイニングで試合に出た。
練習試合、オープン戦、エキシビションマッチはシーズンに向けた調整期間のため、途中交代や途中出場があったものの、2月の対外試合からほぼ全試合に関わっている。とにかく故障に強く、頑丈な選手だ。プロ野球選手は移動があり大変ななかで、故障なく全試合に出場していることは、個人的にもっと評価されるべきだと思う。
派手さはないが、攻走守すべてにおいて今のマリーンズには欠かせない存在。来季も背番号『8』がチームを引っ張っていってくれるはずだ。
文=岩下雄太