クライマックスシリーズ、その先の日本一に向けて、着々と準備を進める相川ベイスターズ。CSのファーストステージ、そしてその先に待つファイナルステージで相まみえるのは、阪神タイガースと読売ジャイアンツに決定している。
ドラフト1位で入団した阪神、そして現役ドラフトで移籍した巨人。2つのライバル球団のユニフォームを着ていた馬場皐輔は少しの間もなく、あっけらかんとした表情で答えた。
「いや、もう(特別な感情は)ないっすね。もう2球団を跨いでますから。1球団だけだったら何か思うところもあるかもしれないですけど、だいぶ離れてますし、どちらのチーム相手にも投げてきましたから」
その表情からは、変な力みも因縁めいた気負いもない。
「ライバル意識というのも本当にないです。今はもう、ベイスターズの代表として投げていくだけだと思っています」
言葉の端々に漂うのは、96番の入った青いユニフォームに対するプライドと覚悟だ。
今季、育成契約からスタートして支配下を勝ち取り、ファームから一軍のマウンドへ戻ってきた右腕の投球スタイルには、昨年までと明確な変化がある。かつてはストレートとフォークを軸に組み立てる場面が多く見られたが、現在は球種の選択肢を大きく広げている。
「入来(祐作)コーチやデータアナリストの方々と話し合って見直しました。まっすぐをしっかり自信を持って投げること。引くだけじゃなく“押す”という意識を取り入れています。今はカット、スプリット、ストレートを平均的に均等な割合で使っていて、そこにカーブも交えながら、4分割くらいで相手に的を絞らせない配球を意識しています」
力で押す場面と手元でかわす場面。その「押し引き」のバランスを手に入れた馬場は、ブルペン陣の新たなピースとして確固たる存在感を放っている。
短期決戦となるCSでは、1点を争う緊迫した展開や、延長戦に及ぶ痺れるような場面でマウンドを託される可能性も高い。しかし、本人はどこまでも平常心を崩さない。
「やることは一緒だと思うんです。中継ぎですし、投げるイニングも短いですから」
そう前置きした上で、短期決戦ならではの準備にも抜かりはない。
「相手にも自分のデータは知られている状態。その中で、自分の中で配球の背景を少しずつ変えながら、ひとひねり入れて挑む感じになると思います」
今季は登板後にチームが劇的なサヨナラ勝ちを収め、延長戦で勝利投手となるなど、ここぞの場面での“持ってる”ミラクル感も発揮してきた。本人は「たまたまですよ」と照れくさそうに笑うが、「でも、そういう運みたいなものも味方にできたら強いですよね」と自信も覗かせる。
幾多の壁を乗り越え、這い上がってきた馬場皐輔。かつての古巣と対峙する秋の大一番で、背番号96はブレず気負わず、ベイスターズの勝利だけを見据えている。そしてその先には、満面の笑みでのお立ち台が待っている。
取材・文 / 萩原孝弘