初先発で岸を相手に堂々たる投げ合い
2017年シーズンも残すところ10数試合…。優勝決定やCS争いといったところに注目が集まる時期であるが、残念ながらその争いから脱落してしまったチームも143試合を消化するまでは戦いが続く。
“消化試合”と言われれば印象は良くないが、ポジティブに捉えるなら『上位チームよりも早く来季に向けた始動ができる』ということ。ここに来て、各地で来季が楽しみな若き力が芽を出そうとしている。
その一人がロッテのドラフト2位ルーキー・酒居知史だ。社会人野球の名門・大阪ガス出身の24歳。4月22日に一軍初昇格を果たし、当初は中継ぎとして起用された。5月18日に一度降格するも、ファームで結果を残して再び一軍にはい上がると、先発の座を任された。
プロ初先発は一軍再昇格を果たした8月4日の楽天戦。この試合の酒居はストレートが走り、次々と三振を奪った。結果は8回1失点、8奪三振という見事なもの。チームが逆転負けを喫したために残念ながら初先発・初勝利は逃したが、相手先発・岸孝之を向こうに回して堂々たる投げ合いを演じてみせた。
待望のプロ初勝利を挙げたのは、先発3試合目となった8月18日のオリックス戦。プロ入りまでの期間をずっと関西で過ごしてきた酒居が、地元の大応援団の前で123球の熱投。被安打わずか4本で2失点、初完投で初勝利をもぎ取った。
そこから3連勝を挙げる快進撃を見せたが、9月8日のソフトバンク戦は6回6失点と炎上。プロ初黒星を喫したが、試合後の伊東勤監督は「スタミナがついてきた。ボールはそんなに悪くなかった」と右腕を評価。春季キャンプ時から「即戦力」と断言していたように、やはり酒居の投球を高く評価しているようだ。
めった打ちにされた初黒星を糧に!
指揮官からは一定の評価を得るも、本人は「カウントを悪くして甘いところを打たれた。走者を出してから粘れなかった」と反省しきりだった。
ただ、新人の酒居にとっては“記念すべき”初黒星ともいえる。首位・ソフトバンクの強力打線に先発全員の12安打を喫した。めった打ちにされての完敗から学ぶことも多いはずだ。むしろ、チームとしてはどんどん学んで成長してもらわないと困るだろう。
今季のロッテは涌井秀章や石川歩、スタンリッジら先発陣の主力がピリっとせず、終盤戦は二木康太、関谷亮太ら若手を積極的に起用する方針に切り替えている。また、野手も中村奨吾や三木亮がシーズン途中からスタメンに定着するなど、チーム全体で若返りを推し進めてきた。
低迷期にあるチームは、なんとか打開策を見つけようと若手にも出場機会を与える。若手にとっては大きなチャンスであり、ファンにとっては期待を寄せるフレッシュな選手を見られるという楽しみもある。
54年ぶりのシーズン80敗を喫するなど苦しいシーズンとなったロッテだが、来季に向けて酒居を含め楽しみな素材が芽を吹きはじめたことも確かだ。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)