セ最後の20勝投手は…
投手にとっての“大台”といえば、200投球回や200奪三振、そして20勝。このなかで、近年、なかなか生まれないのが20勝投手だ。先発ローテーションの確立により、先発投手の登板試合数は多くても30試合程度。達成者がなかなか現れないのも当然である。
ちなみに、「権藤、権藤、雨、権藤」のフレーズで知られる権藤博(元中日)が35勝をマークしたのは新人だった1961年。この年の権藤の登板数は実に69試合、先発に限っても44試合という、いまでは考えられない数字を残している。
直近の20勝達成者は2013年の田中将大(当時楽天)だ。24勝無敗という驚異的な成績を残したことは野球ファンにはお馴染みだろう。しかし、セ・リーグには長く20勝投手が誕生していない。最後に20勝に到達したのは井川慶(当時阪神)。同年、日本シリーズで対戦した斉藤和巳(当時ダイエー)とそろって20勝をマークした。
現在、セ・リーグで20勝に最も近い位置にいるのが菅野智之(巨人)だろう。球界随一の制球力、多彩な変化球を武器に、“出塁させない”という投手が第一に目指す理想に限りなく近づいているのが菅野だ。今季、1投球回当たりに許した走者数であるWHIPは0.85。両リーグ規定投球回到達者のなかでただひとり0.90を切るトップの数字だ。
今季の菅野は最優秀防御率、最多勝の2冠を獲得し、沢村賞も受賞。3度の月間MVPに輝くなど、充実のシーズンを送った。しかし、その菅野をもってしても勝利数は17勝どまり。現代野球においていかに20勝の壁が高いかがわかる。
援護に恵まれない菅野
しかし、打線の援護次第では大台を突破していた可能性も高い。以下は、菅野が敗戦投手となった5試合と勝敗がつかなかった3試合、計8試合の成績と援護点だ。
【対象試合における菅野の成績と援護点】
4/11:広島戦 5回2/3 5失点<援護回5 援護点3>
5/ 9:阪神戦 8回 4失点<援護回8・援護点2>
5/30:楽天戦 5回 8失点<援護回6・援護点4>
6/ 6:西武戦 6回 8失点<援護回7・援護点5>
6/23:中日戦 8回 1失点<援護回8・援護点0>
6/30:DeNA戦 7回 3失点<援護回7・援護点1>
8/12:広島戦 7回 1失点<援護回8・援護点0>
9/14:阪神戦 7回 2失点<援護回8・援護点1>
6月6日の西武戦までは完全に打ち崩されているが、6月23日の中日戦以降4試合は、菅野に勝ちがついていてもなんら不思議ではない成績だ。もしその4試合で菅野が勝利投手となっていたら……。井川以来のセ・リーグ20勝投手が生まれていたことになる。
打線に助けられる試合もあれば、援護に恵まれない試合もあるのが野球というスポーツとはいえ、やはり近年の巨人打線の弱体化が気になる。来季、菅野が大台に乗ることができるのか。巨人打線の奮起にかかっている。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)