オリ熱コラム2019~第8回・山本由伸~
オリックスの“神童”山本由伸投手が、28日のソフトバンク戦(京セラD)に先発登板し、7回無失点、9奪三振の好投を披露し、今季3勝目を手にした。
ちなみに、今シーズンのソフトバンク戦では24イニングを投げて1点も許していない。パ・リーグの防御率ランキングでは、ソフトバンクの千賀滉大投手を僅差で抜き、「1.38」でトップに立った。今年のオールスターの中間発表でも、首位の千賀に続く2位につけている。今後の投球内容次第では逆転する可能性も十分にあるだろう。
「やっぱ先発がやりたい」
しかし、「先発をやりたい」という気持ちが脳裏から離れることはなく、オフシーズンになると「来年は先発で」と明言する機会が増えていく。なぜ、そこままで先発にこだわるのか――。山本には「先発として世界で一番のピッチャーになりたい」という野球選手としての明確なビジョンが存在するからだ。
この思いは達成されるまで変わらないだろう。山本が目指すエース像は、「自分が良いピッチングをして、チーム全体に良い流れを作れる存在になる」こと。今季初登板となった4月3日のソフトバンク戦では、7回途中までノーヒットノーラン、勝ち星はつかなかったが、9回を1安打無失点に抑えるピッチングを披露した。
自ら先発再転向を志願し、「世界で一番」になるためのスタートラインに立たせてもらっただけに、下手なピッチングはできないという思いはあったはず。そんな緊張感の中で結果を残せたことには本人も一定の満足感を覚えていた。
「試合後に『感動した』とか『泣いた』とか、そういう連絡がけっこうきてて、ビックリしたんですけど、みなさんにそう思ってもらえるピッチングが出来たのは良かった」
あの日のピッチングは、「オリックスには由伸がいる!」とファンも誇れるようなものだった。さらに、そのピッチングを見た山岡泰輔や榊原翼といった若手投手も「刺激を受けた」と語り、いずれも好投を続けている。自身が描く“エース像”を実践した試合だったとも言えるだろう。
援護点の少なさにも…
5月16日の試合(ロッテ戦)では、守備の乱れが失点に繋がり、敗戦投手になった。ファンからは好投しながらの敗戦に同情の声も挙がったが、「そもそもホームランを打たれなければ良かったこと。あのフライは簡単そうに見えるけど、凄く難しい。野球ですし、いつも勝つことだけ考えて投げている。可哀想とか、そういうのはない(笑) 僕のピッチングを見ててください」と、フォーカスするのはあくまで“自分”。
ローテ再編に伴い17日には一軍登録を抹消されたが、一軍に帯同し、元気で明るい姿を見せていた。トレーニングは昨年同様、体全体を使いながらストレッチなど同じメニューを継続して、カード頭の先発に向けて「順調に」準備を進めてきた。
打線が振るわないことに加えて、対戦相手のピッチャーが好投手になることが多く、これまで最多の援護点が5月28日の「3点」というのは、さすがに厳しい。しかし、ローテが再編されたことにより、潮目は変わるかもしれない。もし変わらなかったとしても、「世界で一番」を目指す以上、常に最少失点で勝ちに行くスタンスは変わらない。
まずはオリックスのエースとして結果を残すこと、その先に、自身が目標に掲げる「東京五輪出場」という次のステップも見えてくる。世界を見据える“神童”の志は、高くなるばかりだ。
取材・文=どら増田