“飛ばす力”は全国区
新型コロナウィルスの影響で中止となった選抜高校野球。まさに“幻の大会”となってしまったが、チーム、選手にとってはこれからもシーズンは続いていく。ここでは、そんな幻の大会で見たかったドラフト有力選手を紹介していきたい。今回は今年の高校球界を代表する長距離打者だ。
▼ 西川僚祐(東海大相模)
【投 打】右投げ右打ち
<2019年秋季大会成績>
9試合:34打数18安打 4本塁打 17打点 7四死球 1盗塁
打率.529 / 出塁率.610 / 長打率.971 / OPS1.581
“ボールを飛ばす力”という意味では、全国でも指折りの存在と見られているのがこの西川だ。中学時代から佐倉シニアの4番として活躍し、チームの全国制覇にも大きく貢献。東海大相模に進学後、1年夏には早くも4番を任され、北神奈川大会では特大の一発を放っている。
1年の秋が終わった時点で通算本塁打数は30本を超え、清宮幸太郎(早稲田実 ⇒ 日本ハム)が持つ111本塁打超えの期待もかかったが、昨年は苦しむことが多かった。まず、春先に右肘を痛めた影響で調整が遅れ、春の関東大会ではチームが優勝を果たしたものの、西川自身は4試合で4安打、長打0と結果を残すことができなかった。
さらに弱点を露呈してしまったのが昨年夏の甲子園だ。初戦の近江戦には「3番・左翼手」で出場したが、近江のエース、林優樹の前に4打数ノーヒットに終わり、打順を7番に下げた中京学院大中京戦でも、そのバットから快音が聞かれることはなかった。
この頃までの西川はタイミングをとる動きが急で、バットの動きも大きいため、どうしてもボールを呼び込むことができなかった。林のようなレベルの高い技巧派投手にとっては最も抑えやすい選手だったと言えるだろう。夏の甲子園終了時点で、西川の評価は入学時と比べてかなり下落したという印象を覚えた。
狙うは先輩・大田泰示を超える“本塁打記録”
しかしながら、そのままずるずると引きずらないのが西川の非凡なところ。昨年秋は神奈川県大会6試合で3本塁打を放ってチームを優勝に導くと、センバツ出場のための大一番となった関東大会準々決勝の習志野戦では、チームを勢いづける先制ツーランを放って勝利に大きく貢献した。秋季大会の通算成績は打率、長打率、出塁率ともドラフト候補として申し分ないものである。
プレーの魅力は冒頭でも触れたように、その長打力だ。芯でとらえた時の打球は、ライナーでそのまま外野スタンドの上段や、時には場外まで達することもある。昨年少し失速したものの、高校通算本塁打は既に50本を超えている。東海大相模で歴代1位である大田泰示(日本ハム)の65本塁打を更新する可能性は高いだろう。
とはいえ、まだ脆さがあるのも事実。ホームランはレフト方向に打球が偏っており、外のボールには強く踏み込めないシーンも目立つ。腕力や体幹だけでなく、下半身をもう少し使えるようにならないと、先輩の大田のように、高いレベルでは苦しむことになりそうだ。
また、大田が脚力に加えて投手としても140キロ台後半のスピードを誇る肩の強さがあったのに比べて、西川は打つ以外のプレーはそこまで目立つものがない。それを考えると、高校から上位指名でプロ入りを目指すには、より一層バッティングの確実性をアップさせる必要があるだろう。
課題は少なくないが、それでも打球を遠くに飛ばせるということは何よりの魅力である。昨夏の甲子園で不発だった分も、最後のシーズンで大暴れしてくれることに期待したい。
記事提供:プロアマ野球研究所