“戦国東都”も注目選手多数
アマチュア球界にも多大な影響を及ぼしている、「新型コロナウイルス」の問題。今後についても不透明な部分は多いが、再び日常の光景を取り戻す日に向けて、選手たちによる不断の努力は続いている。
そんな彼らを応援する意味でも、今年のドラフトの中心となりうる大学生の候補選手をリーグごとに紹介していきたい。前回の東京六大学に続き、今回は東都大学野球の有力候補を紹介する。
上位指名の可能性が高い“中央大コンビ”
牧は松本第一高時代から、北信越では屈指の“打てるショート”として評判の選手。中央大進学後も1年春からレギュラーを獲得すると、2年秋から3季連続でベストナインに輝いている(※2年秋はショート、3年春・秋はセカンドで受賞)。
特に素晴らしかったのが、セカンドにコンバートされた2019年の躍動ぶり。春は打率・打点の二冠に輝くと、秋も打率3位に打点はトップという見事な成績を残し、MVPにも選ばれた。
大学通算本塁打は3本とホームランバッターではないものの、昨年は春夏33本のヒットを放ったなか、そのうちの半数以上を占める18本が長打。パンチ力も申し分ない。
バットの無駄な動きがなく、下半身を使ってバランス良く振り切れるスイングは迫力十分で、確実性と長打力を兼ね備えたバッティングは大学球界No.1。今年に入り、春先のオープン戦では元々守っていたショートでもプレーしているが、プロから見ると打てるセカンドとして育てたいところだ。
一方の五十幡は、アマチュア球界を代表するスピードスター。中学時代には陸上の全国大会に出場し、100メートルと200メートルでいずれもサニブラウン・ハキーム(現・100メートルの日本記録保持者)を破って二冠に輝いた、という話は有名である。
佐野日大高時代はなかなか体が大きくならず、中央大でも入学当初は9番を打つことが多かったが、徐々にパワーアップに成功。2年秋にはリーグ2位の高打率を残してベストナインに輝き、3年秋も打率3割をクリア。チームの優勝に大きく貢献し、二度目のベストナインも受賞した。初の全国大会となった昨年秋の明治神宮大会でも、初戦で敗れたものの2安打をマーク。大学球界No.1の強肩を誇った海野隆司(現ソフトバンク)からも見事に盗塁を決めている。
下級生の頃に比べ、見違えるように打撃が力強くなっており、走り打ちではなく広角に鋭く弾き返すことができるようになった。また、脚力だけでなく、外野から見せる強肩も大学トップレベル。リードオフマンタイプの外野手が不足しているチームにとっては、うってつけの人材と言えるだろう。
ほかにも各ポジションに逸材が
現時点ではこの2人が頭一つリード。しかし、他にも野手の候補は少なくない。
捕手では、ともに強肩強打が光る東洋大の山崎基輝と立正大の立松由宇が双璧か。
山崎は一学年上に佐藤都志也(現ロッテ)がいたため、指名打者での出場が多かったが、昨年春にはベストナインを受賞。秋には先発マスクも任されるようになった。
立松は昨年秋にリーグ2位の打率を残してブレイク。ベストナインは佐藤に譲ったものの、打てる捕手として強いインパクトを残している。
内野手では、ショートの守備名人である亜細亜大の矢野雅哉と国学院大の小川龍成が面白い。
矢野は育英高時代も下位を打つことが多かったが、その高い守備力が評価されて2年春からレギュラーに定着。体は大きくないが抜群の強肩で、苦しい体勢からも見事なスローイングを見せる。課題の打撃でも、昨年秋にはいきなり首位打者を獲得して周囲を驚かせた。パワーはまだまだだが、しぶとさが光る。
小川は前橋育英高時代から三拍子揃ったショートとして評判で、大学でも2年春にベストナインを獲得。攻守にスピード感溢れるプレーが光り、昨年は大学日本代表にも選出されている。ともにスピードを残したままパワーがついてくれば、十分にプロ入りの可能性もあるだろう。
外野手では、駒沢大の若林楽人が候補となる。
リーグ戦通算打率は1割台と確実性には課題が残るものの、運動能力の高さは一級品。センターから見せる返球や、迫力のあるベースランニング、とらえた時の打球の速さなどは東都でも屈指だ。フォームに致命的な欠点があるわけではないので、今年は打率アップにも期待したい。
投手の筆頭格は“センバツ優勝投手”
最後に、投手の有力選手をピックアップ。東都のエース、その代表格と言えるのが、東洋大の村上頌樹だ。
智弁学園高時代は3年春のセンバツで優勝投手となり、大学でも層の厚いチームにあって早くから先発の一角に定着。昨年春は6勝0敗、防御率0.77という圧巻のピッチングを見せてMVP・最優秀投手・ベストナインの三冠に輝いた。
スピードは140キロ台前半がアベレージと少し物足りないが、多彩な変化球を操る投球術は大学球界でもトップクラス。ストレートに凄みがない点をプロがどう評価するかは難しいところだが、先発タイプとして期待できる投手であることは間違いない。
村上に続く存在と言えるのが、亜細亜大の内間拓馬と平内龍太。
内間は昨年春にリーグ4位の防御率1.71をマークしてブレイク。大学日本代表にも選出された期待の右腕だ。調子の波があるのは課題だが、好調時のボールの勢いは申し分ない。
平内は神戸国際大附高時代から本格派と評判の大型右腕。大学では故障もあってなかなか思うような成績を残せていないが、スケールの大きさは魅力である。
その他にも、駒沢大の大型右腕・竹本祐瑛に、大学で大幅にスピードアップした国学院大の上出拓真といったところは要注目。
さらに、“戦国東都”は1部のチームに限らず、2部では躍動感あふれるフォームが魅力の日本大・小谷野楽夕、安定感が光る拓殖大の多田裕作。3部にも150キロを超えるスピードが魅力の東農大・近久輝といった有望株がいる。彼らも今年の活躍次第ではプロ入りのチャンスがありそうだ。
☆記事提供:プロアマ野球研究所