今年はDeNAが2巡目ウエーバーの一番手
10月11日、運命のドラフト会議が開催された。指名される側にとってはプロへの扉が開く記念すべき日であり、チームにとっては貴重な戦力を獲得できる大切な機会である。
ドラフトでもっとも注目されるのは、重複した場合に抽選となることも含め、各球団がどんな選手を1位指名するかにあるわけだが、ウエーバーで行われる「2巡目指名」も非常に興味深いものがある。
現行のドラフト指名のルールでは、指名選手の重複があるのは1巡目指名の選手のみ。重複した場合はくじ引きでの抽選だ。そして、2巡目以降に指名される選手は同年の最下位チームからのウエーバー制となり、そこに抽選はない。以前までは同年の交流戦で勝ち越したリーグから指名できたが、2019年より1年おきに変更となった。
今年の場合は、順番的にセ・リーグ最下位のDeNAが2巡目指名の一番手となり、早稲田大学の徳山壮磨投手を指名した。
このウエーバー制の2巡目指名だが、考え方によってはドラフト1位クラスの逸材の交渉権を獲得することができるため、戦力アップにもつながる可能性が高いと推測できる。2巡目の一番手で、抽選がなく選手の交渉権を獲得できるのはやはり有利だ。
比嘉、黒木と、リリーフタイプの活躍が光るオリックス
以下は、ドラフト会議の制度が現行のものに変わった2008年から昨季までのドラフト会議で、2巡目指名を一番手で行ったチームと、そこで獲得した選手と、その成績になる。
※球団名は当時の表記のまま。成績は、2021年10月10日終了時点。
■2008年
2巡目一番手:横浜
指名選手:藤江 均(プロ通算7年・現役引退)
通算成績:166試合登板 12勝14敗1S 45H 防御率4.17
■2009年
2巡目一番手:オリックス
指名選手:比嘉幹貴(プロ通算12年・現役)
通算成績:348試合登板 19勝11敗2S 81H 防御率2.74
■2010年
2巡目一番手:横浜
指名選手:加賀美希昇(プロ通算5年・現役引退)
通算成績:24試合登板 5勝10敗 防御率4.32
■2011年
2巡目一番手:ロッテ
指名選手:中後悠平(プロ通算6年・現役引退)
通算成績:49試合登板 2勝2敗7H 防御率5.09
■2012年
2巡目一番手:DeNA
指名選手:三嶋一輝(プロ通算9年・現役)
通算成績:317試合登板 30勝30敗40S 45H 防御率4.37
■2013年
2巡目一番手:日本ハム
指名選手:浦野博司(プロ通算7年・現役引退)
通算成績:101試合登板 18勝13敗7S16H 防御率3.87
■2014年
2巡目一番手:ヤクルト
指名選手:風張蓮(プロ通算7年:10月5日に自由契約)
通算成績:93試合登板 2勝4敗5H 防御率5.91
■2015年
2巡目一番手:楽天
指名選手:吉持亮汰(プロ通算6年・現役)
通算成績:21試合 打率.161 0本塁打 7打点
■2016年
2巡目一番手:オリックス
指名選手:黒木優太(プロ通算5年・現役)
通算成績:94試合登板 7勝4敗2S 42H 防御率4.33
■2017年
2巡目一番手:ロッテ
指名選手:藤岡裕大(プロ通算4年・現役)
通算成績:453試合 打率.244 14本塁打 127打点
■2018年
2巡目一番手:楽天
指名選手:太田光(プロ通算3年・現役)
通算成績:221試合 打率.197 6本塁打 42打点
■2019年
2巡目一番手:ヤクルト
指名選手:吉田大喜(プロ通算2年・現役)
通算成績:29試合登板 3勝7敗 防御率5.22
■2020年
2巡目一番手:オリックス
指名選手:元謙太(プロ通算1年・現役)
通算成績:一軍出場なし
現行のルールで13回のドラフト会議が行われ、その間にウエーバーの2巡目指名が一番手で回ってきた球団は、横浜(DeNA含む)、オリックス、ロッテ、日本ハム、楽天、ヤクルトの6球団だった。
2巡目指名の一番手というメリットをフル活用できているのがオリックスか。ドラフト会議で指名した選手たちの顔ぶれを見ると、09年に2巡目指名を受けた比嘉幹貴は現在でもオリックスのブルペンを支えているし、16年に2巡目で指名した黒木優太は1年目から55試合に登板して、6勝25ホールドという成績を残している。19年にトミー・ジョン手術を受け、一時は育成契約となったが、昨オフに支配下に復帰。一軍での完全復活が待たれるところだ。
同じくブルペンを支えている投手としては、DeNAが2012年に指名した三嶋一輝の名も挙げられる。1年目に先発として6勝を挙げて以来くすぶっていたが、中継ぎに配置転換された2018年からはストレートと切れのあるスライダーを武器にセットアッパーとして君臨。昨季からは、不調の山崎康晃に変わりクローザーとして起用され、今季も22セーブを挙げている。
6球団がこれまでに指名した選手を見ると、野手は4人のみ。そのなかでは、ロッテが2017年に指名した藤岡裕大は、ルーキーイヤーから3年連続で100試合以上に出場するなど活躍中。楽天で正捕手争いを繰り広げている太田も今後を期待される選手のひとりと言えるだろう。
「ドラフト1位級」とまでは言えないかもしれないが、チームの主力となっている選手もいる。下位チームに与えられた特権・2巡目におけるウエーバーというメリットを、どれだけ最大に活かすことができるのか――。今後の流れも注目していきたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)