コラム 2021.11.17. 06:44

ノムさんに非情な解任通告も…CSが最後の采配となった監督の“意地の戦い”

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名将・野村克也監督にまつわる「珍」 (C) Kyodo News

まさか…CS直前に「解任通告」


 2004年から2006年まで行われたパ・リーグのプレーオフと2007年から始まったセ・パ両リーグのクライマックス・シリーズの名場面や珍場面を紹介していくこの企画。今回のテーマは「あの監督の最後の采配」だ。


 まずはヤクルト時代にリーグ優勝4回、日本一3度と黄金時代を築いた野村克也監督から。楽天監督4年目の2009年、チームは球団創設以来初の2位に飛躍したが、同年で契約が切れる74歳の野村監督に対し、球団は「日本シリーズに進出しても続投はない」と通告してきた。

 ソフトバンクとのファーストステージを前に、野村監督は全選手を集め、「みんなと一緒にもっと野球がやりたかった」と言って男泣きした。初めて目にする指揮官の涙にナインはビックリしたが、「日本一になっても(自分は)最後だから、心をひとつにして頑張ってほしい」の言葉に力強く頷いた。

 「勝って監督を胴上げしよう」の思いで一丸となった楽天は、投打がガッチリかみ合い、ソフトバンクに11-4、4-1と連勝。日本シリーズ進出をかけて、ファイナルステージで日本ハムと対決した。

 だが、創設5年目のチームは大舞台での経験が不足していた。第1戦、楽天は8-4とリードしながら、勝利目前の9回にターメル・スレッジに逆転満塁サヨナラ本塁打を浴びるという悪夢のような幕切れ……。野村監督は「打つ手はすべて打った。それで負けたんだから、相手のほうが上ということ」と“負けに不思議の負けなし”を素直に受け止めた。

 第2戦も岩隈久志が同点の7回に勝ち越され1-3と連敗。王手をかけられた第3戦は、田中将大が踏ん張り3-2で一矢報いたものの、第4戦は1点ビハインドの8回に自らリリーフ登板を買って出た岩隈がスレッジにとどめの3ランを浴び、ついに力尽きた。

 直後、この試合を最後にグラウンドを去る老将に対して“サプライズ”がもたらされる。両軍ナインによる異例の胴上げが始まったのだ。

 野村監督は「嫌だなと思った。照れくさいやろ」と言いつつも5度宙を舞い、「野球屋冥利に尽きる。胸にグッときた」と大感激。選手時代も含めて計43年間にわたるプロ野球生活に別れを告げた。


“サヨナラ引き分け”で敗退


 野村監督の次は、これまた同姓の広島・野村謙二郎監督だ。2010年に就任し15年連続Bクラスだったチームを2年連続CS進出に導いた野村監督は、2014年をシーズン3位で終えた直後、「結果にかかわらず、5年目の今季が集大成だと思ってやってきた」とポストシーズンを最後に辞任することを表明した。

 ファーストステージの相手は阪神。第1戦はエース・前田健太が6回まで福留孝介の一発のみの1失点に抑えたが、味方打線が4安打完封され0-1と惜敗した。

 第2戦も広島は7回一死満塁のチャンスを潰すなど決定打を欠き、0-0のまま延長戦に突入。そして12回、二死から田中広輔が左前安打で出塁したが、鈴木誠也が中飛に倒れ得点ならず。この時点で広島の勝ちがなくなったため、前年から採用された新ルールにより、その裏の阪神の攻撃は自動的になくなり、史上初の“サヨナラ引き分け”が成立。2試合でわずか1得点の阪神が日本シリーズ進出を決めた。

 ラスト采配が珍幕切れとなった野村監督は「点が取れなかったね」と21イニング連続無得点のまま敗退したことを反省し、選手たちに「自分は今年でユニホームを脱ぐけど、1本出ていたら勝っていたというのを打開してほしい」の言葉を贈った。

 5年かけて勝てるチームの土台をつくった指揮官の熱い思いは、2年後の2016年、25年ぶりのリーグ優勝という形で叶えられることになる。


初年度にCS進出も…不可解な退任劇


 初年度にチームをAクラス入りさせたにもかかわらず、CSが“最後の采配”となったのが、楽天・平石洋介監督だ。2019年、前年途中からの代行を経て、正式に就任した平石監督は、シーズン序盤に首位に立つなど旋風を起こしたが、最終的に3位でシーズンを終えた。とはいえ、前年最下位からの大躍進は十分評価できるものだった。

 そして迎えたファーストステージ、ソフトバンクとの第1戦。平石監督は「腹を括ってぶつかっていく準備をしてきた」と“下剋上”実現に闘志を燃やした。指揮官の気迫はナインにも伝わる。浅村栄斗の2発を含む4本塁打を千賀滉大に浴びせ、5-3と先勝した。

 だが、第2戦は得点した直後に失点する悪い流れを変えられず、4-6で競り負けた。さらに第3戦も4回に浅村の一発で先手を取ったにもかかわらず、内川聖一に同点タイムリーと決勝ソロを許し1-2の惜敗。ファーストステージで無念の敗退となった。

 この時点で1年契約の任期を満了した平石監督は、「中長期的に優勝を目指せるチームにしていかなければいけない」(石井一久GM)という理由から契約更新に至らず、退団した。

 ファンも「なぜ?」と首を捻った不可解な退任劇だったが、平石監督は「評価は人がすること。そういう世界。覚悟はしていた」と潔くチームを去った。

 ソフトバンクのコーチを経て、来季から西武の打撃コーチとして腕を振るう“松坂世代”唯一の監督経験者が、将来再び指揮官としてCSに出場する姿を見たいものだ。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)
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