投手の大注目候補
2月1日、プロ野球の春季キャンプがスタート。
“球春到来”ということで野球のニュースも増えているなか、ここからはアマチュア野球の活動も活発になっていく。
今秋のドラフト会議に向けて、注目のドラフト候補を紹介していくこのコラム。
ここまでは“二刀流”日本体育大・矢沢宏太の名前は上がったものの、以降は早稲田大の蛭間拓哉や立教大の山田健太と野手が続いていた。
ということで、今回は投手の注目株をご紹介。リーグ戦の実績という点で他を圧倒する成績を残し、プロから熱い視線を浴びているのが、富士大の金村尚真だ。
▼ 金村尚真(富士大)
・投手
・176センチ/80キロ
・右投右打
・岡山学芸館高
<リーグ戦通算成績>
26試(154.2回) 17勝4敗 防御率0.87
被安打89 四死球19 奪三振163
被打率5.18 四死球率1.11 奪三振率9.48
<主な球種と球速帯>
ストレート:143~149キロ
カーブ:106~110キロ
スライダー:128~133キロ
カットボール:134~137キロ
チェンジアップ:詳細不明
<クイックモーションでの投球タイム>
1.28秒
大学進学後に急成長
金村は沖縄県の出身で、中学3年時にはU-15侍ジャパンにも選出された逸材。
岡山学芸館高では1年秋から主戦になり、2年の秋はエースとして岡山県大会で優勝も果たしている。
ただし、甲子園の出場経験はない。そんな金村が大きく飛躍したのは、富士大への進学後だ。
層の厚い投手陣の中で、1年春からいきなり8試合に登板して2勝をマーク。
初めてそのピッチングを見たのは、2年秋の青森中央学院大戦だったが、この試合でも最速146キロのストレートを武器に8回途中まで投げて自責点0。9奪三振という見事なピッチングを見せて、チームの勝利に大きく貢献している。
当時は身長175センチ・体重73キロと大学生としてはまだまだ小柄だったものの、シャープな腕の振りと安定した球筋は強く印象に残っている。
リーグ戦で完全試合を達成
金村の名前が一躍全国区となったのは、昨年春のリーグ戦だ。
4月17日に行われた開幕戦・ノースアジア大戦で、なんと連盟史上2人目となる完全試合を達成したのである。
この快投で勢いに乗った金村は、7勝0敗・防御率0.16という圧巻の成績を残し、2季連続でMVPと最優秀防御率、ベストナインの三冠に輝いている。
リーグ戦後に行われた大学選手権では2回戦で国学院大に敗れたものの、イニング数を上回る奪三振を記録するなど、自身初となる全国の舞台でも、その実力を如何なく発揮した。
金村の魅力は、何よりもその安定感にある。
フォームは早めに右肘を小さくたたむテイクバックが特徴的で、イメージとしては攝津正(元ソフトバンク)に重なるものがあるが、コントロールに関しても社会人時代の攝津と変わらないレベルであり、ストレートの勢いに関しては明らかに上回っているように見える。
昨年の大学選手権では最速149キロをマークしているが、ボールの出所が見づらいため、普通の投手が投げる150キロよりも、打者にとって厄介であることは間違いないだろう。
これまでのリーグ戦で、26試合・154回2/3を投げて与えた四死球はわずかに19。防御率に関しては1点を切る0.87という数字を残している。
北東北大学野球連盟は富士大以外にも青森大や八戸学院大といったプロを多く輩出しているチームが所属している。地方リーグの中でも、そのレベルは決して低くはない。
そんな中でこれだけの成績を残すということは、やはり並大抵のことではない。
全国トップクラスの打者を抑え込む
昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿でも、最初の紅白戦で先発を任されると、2回を2奪三振でパーフェクトに封じる圧巻のピッチングを披露。
三 振を奪った相手も、過去にコラムでドラフト1位候補として取り上げた山田健太(立教大/4年)と、昨年春に1年生ながら東都一部でいきなり4本塁打を放った佐々木泰(青山学院大/2年)であり、全国トップクラスの打者を完全に抑え込んでいる。
合宿最終日の取材では、ドラフトの目玉と見られている矢沢宏太(日本体育大)から、フォームや投球に対する考え方を教わったことが大きな刺激になったと語っていた。
注目選手と練習をともにする貴重な機会を活かそうという貪欲な姿勢を伺わせつつ、紅白戦で見せたピッチング内容は決して矢沢にも引けをとるものではなかった。
事実、この合宿で実施された紅白戦3試合を振り返ってみても、2イニングをパーフェクトに抑えた新4年生は金村と矢沢の2人だけ。大学日本代表の大久保哲也監督も、印象に残った投手として金村の名前を挙げたほどだ。
スタンドには多くのスカウトも詰めかけていたが、金村の評価が上がったことは間違いない。
昨年見せたようなピッチングを今年も続けることができれば、多和田真三郎(元西武)以来となる、“富士大からのドラフト1位”誕生も十分に期待できるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所