白球つれづれ2022~第20回・ロッテの2試合連続退場の背景にある“コロナ方式”
「エキサイトリーグ・パ!」かつて、パリーグが人気振興策として打ち出したキャッチフレーズがある。
熱く盛り上がるプレーなら、もちろん大歓迎だが、それ以前にチームと審判がエキサイトしてしまっては、いただけない。
ロッテと審判とのトラブルが相次いでいる。
13日から京セラドームで行われた対オリックス3連戦。まず、14日の9回二死一・二塁でアデニー・エチェバリア選手の見逃し三振の判定を巡って、井口資仁監督が抗議、「侮辱的な発言」を理由に試合終了後に退場となる。
続けて翌15日にはブランドン・レアード選手が見逃し三振の判定直後に暴言を吐いたとして退場。同一球団の2試合連続退場はパ・リーグでは27年ぶりと言う異例の事態になった。この試合で序盤に4番打者を欠いたチームは代役に福田秀平選手を立てるが、その後の好機にことごとく凡退。打線に迫力を欠くロッテは最下位の日本ハムに1ゲーム差まで迫られる非常事態だ。
“騒動”の伏線は4月24日のオリックス戦にさかのぼる。
佐々木朗希投手が判定に不服そうな態度を示したとして、白井球審がマウンド方向に詰め寄る行為が物議を醸した。この行動を巡っては後日、NPBが審判長から「別の方法があった」と指摘があったことを明かし、その後には審判員によるオンラインによる全体ミーティングが行われて、行動規範の順守が確認されている。
これで一件落着、と見られたがロッテ側にはモヤモヤした空気が残っていたのだろう。佐々木の時もレアードの判定も白井審判が当事者と言ううがった見方も一部にはある。
だが、今回の連続退場はボール、ストライクの判定で、井口監督の抗議は本来禁じられている。レアードは暴言だから言い訳は出来ない。それでも選手も審判も人の子、感情的なしこりが残ったとしてもおかしくはない。
こうした“負の連鎖”に16日付スポーツニッポン紙では、元NPB審判員の経歴を持つ柳内遼平記者が、独自の見解を記している。元凶はコロナ禍にもあると言う見方である。
通常、トラブルのあったチームと審判は「雪解け」の方策として、試合前の打撃練習に審判が参加する方法があると言う。打撃ゲージに入って投球判定を行いながら選手、首脳陣らとコミュニケーションをとっていくのだが、人の接触を避けたいコロナ禍では感染防止のため、禁止に。同じく、感染拡大を防ぐ目的で審判団を同じメンバーで固定する「クルー制」を導入。こうした“コロナ方式”がチームによっては「また同じ審判か」という心理状態を生む可能性がある。こんな所にまでコロナが影響しているとは、恐ろしい。
メジャーではすでに下部組織において電子機器によるストライク、ボールの判定がテスト採用されている。今ではビデオ判定が定着して、瞬時に正しいジャッジかがわかる。失敗の許されない審判にも更なる受難の時代がやってきているのかも知れない。
今のロッテに必要なのは審判と戦う事ではない
それにしても、今季のロッテは波に乗れない。
開幕直後から昨年、先発ローテーションでも活躍した岩下大輝投手や一番打者の荻野貴司選手を故障で欠き、レオニス・マーティンやレアードの外国人勢の不振に、安田尚憲、藤原恭大ら若手選手の伸び悩みと誤算が続き、チームバランスを欠いていった。
チームの状況が悪い時ほど、ひとつの判定にもナーバスになりやすい。感情を抑制できないこともある。だが、今のロッテに必要なのは審判と戦う事ではない。
ひたむきに白球を追い、勝利を追求することだ。
近年の日本球界では塁上に立つ選手が、相手や審判に挨拶するシーンをよく目にする。エンゼルスの大谷翔平選手はMLBにも、この良い風習を広めている。こうした振舞いの根底にあるのは、互いをリスペクトする精神である。もう一度、原点を見つめ直す必要が今のロッテにはある。
シーズン前には優勝候補と言われた強豪が、佐々木朗希以外に売り物がない現状は寂しい。
井口監督がチームをどう立て直し、反転攻勢につなげるか。その手腕が問われている。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)